それは異世界人にとって小さな一歩だ
女は男の前途を邪魔する大きな障害。こういう考え方は100年前のものだ。特に僕の立場からいう言葉ではない。
もなかちゃんがこの異世界から離れたら、僕は後家暮らしをする人のようにぼうっとして時間の流れでさえもわからなくなる。
なぜか目が味玉のワニ戦士をよく想像したり、独学で正しいかどうかに自信がないにもかかわらず異世界の文字で自分の名前の発音を試して書こうとしている。
時には自分を勇者として想像することもある。しかし、脳の働きが鈍いのせいか、一瞬で勇者の伝説を残す千年以後のハッピーエンドに向かってしまう。僕がどのように描写されるのか、僕の勇者人生物語が他のキャラクターとどのようにまとめられるのかなど、物語がどのようになるのかについては考えていた。
自分が自身の物語を読むのを想像することは本当に不思議だが、一応設定上は他人が書いたものになるではあるまいし、もしも完全な自己満足を求めて自分をインタビューしたのであれば、自伝を選ぶべきだろう。
僕を育った日本のどこにもある街はストレンジャー・ソサエティであり、団地のドアを階段で隔てた隣人でさえ、100年間言葉を交わすことがないかもしれない。
「ただいまー」
数日後、大量のヤ〇ルトを持ち歩く人間姿のドラゴンが再び現れた。僕は日本との交点はまさかのヤ〇ルトだった。
「たまにコーラを持ってきても?」
僕はくうやうやしく聞いてみた。
「ついでに焼酎も持ってきてあげるほうがいい?」
「それもいいね。こうすれば僕もここに居酒屋を開けるかも」
「夢を見るのはやめて、とりあえず飲むか売るか二択だわ」
そうして、僕は異世界で中卒の女にマルチ商法の手伝いと操られた。
これから数日に、村の中の人がきっと僕の顔を飽きたのだろう。変なピンを売りに押してくる男がまた来た?しかも言葉があまり通じない。悪魔の仕掛けでも思われなかったら、ありがたいところだ。
なんとか1軒のおばあちゃんが1セットのヤ〇ルトを僕のふところから取って、返しにキラキラの石をくれた。いや、異世界の通貨をくれよ。旧石器時代じゃないから。でも、セールスマンとしての行為が向こうに通じたのは、僕の異世界生活に大きな一歩だ。
「ウラー! 」
日本離れのおかけで、日本語で代用できる言葉が思い出せなくなってきた。
「お祝いでヤ〇ルトを飲もう!」
彼女からの提案がヤ〇ルトなしでいられないのようだ。
「豚骨ラーメンのスープもいいドリンクだよね」
インスタント豚骨ラーメンの包装しか想像でくなくなった。僕はもうだめだ。
「冗談だわ。ほら、青汁」
緑の味に沈み込んだ僕は、将来、彼女の笑顔を見る回数が増えたのを気付かずことに後悔するのだろう。