アンチと再教育とアンチ
「僭越ながら…」
「全滅ながら…」
「全然違う!性質でさえ変わっているわ。それに全滅?フラグを立つことをやめて」
「ごめんなさい。先輩」
「もう一度言うわ、これで最後だ。これで覚えられないのなら、ぶしつけも飛ばすわ」
「フッシー☆…ごめんなさい」
今、あの二人だけを見たら、自分が異世界にいることでさえ忘れてしまう。まれでどこでもある会社の新人研修会のようだ。違和感があるのは、ここはとある村の宿にある部屋こどだ。村というよりも、遊牧民の定住地に近い。もしかしたら、村人からしたら、僕たちはばか騒ぎをする冒険者たちにすぎない?だけど、僕の異世界での最初の村で数週間住んだ経験から見たら、多分冒険者はめったにいない。いえ、羊を体型の大きい動物から守る遊牧民のほうが冒険者に近いかも?たまに喧嘩を売ってくる酒臭いがする漢が現れるが、宿の支配人に払われた。お金さえ払えば何でもありか。
「前向きに検討いたします」という退却するように見せかける孫子の兵法っぽいことばはまだしも、「お足元が悪い中」とか「ごとおび」とかは異世界で本当に必要そもそもこの世界の暦法ではどうなるかわからないんだ。そういえば、五十日と書いても由来がわからない。スマホが充電もできないし、無論インターネットに繋がらない。
せっかく多くの女の子に囲まれたから、今はもなかちゃんの力を借りて日本に戻りたくない。
あの「ドラゴン先輩」ってうざいなぁ。でも、他人事をいちいち批判したら、確実に嫌われる。とくに今このチームの財布を握っているドラゴンっこに。これくらいが分かっているよ。
「これはあなたたちの国の文化?」
「社畜になった経験を封印したからノーコメント」
魔女はあの2人を観劇する目で見ながら、鍋で何かを煮ている。よく見たら、森の中でどこでも取れる木の枝だ。
「何これ?」
「ルートビア」
少し複雑な顔をして、魔女の鍋を見つめる。
「ちょっと違うかも」
「どこか?ルートはもうここにある、残りはビアだ」
「ビアはともかく、これ、ルートではない。スティックだろう?」
「これはルート、スティックはドラムを叩く棒だ」
「別にいいじゃない?」
ドラゴンがこっちの話に口を挟む。
「もなかちゃん、自分がやっているときと人を評判するときと違わない?」
「これはこれ、それはそれ」
「ならば、例えば新人が商品の400と1000を間違えて売ったら、上司に怒られるのか?」
「泉野さん、まだ私の仕事の性質を理解しなかったわね。上司に怒られないけど、値段が全然違うから、営業としては失格だわね。こんなことをしてしまったら、他の人に言いたくない、何だかかわいそうと思われたり、背後で笑われたりからだわ」
「先輩!」
ドラゴンがミミックを放置して、僕たちに近づく。
「私は…スティックに一票」
「一票もカウントしない!受け入れない!もうグラーグがあればあなたたちを投獄したい」




