ぷんぷんといいにおいな話
仮想通貨の最大の問題は、人を怪物に変えてしまうことだ。儲かるのが本当に速すぎて、十数万円の給料を手にしても感じなくなり、まともに働く気もなくなり、ましてや昇進や昇給のことすら考えられなくなる。こんな状態に陥るのも、自業自得かも。
直ぐにもドアが元に戻されたが、僕は今、女の子の「家」、正確に言うと、洞窟にいる。金銀財宝に囲まれたかたすみに、少女がジャスミンの匂いがする香水を体にかけている。
「ここぞ異世界なのか?…仕事大丈夫?」
「営業所の所長にも言ったから、早帰りでもいいって…ところで、どうやって私は異世界出身だと気づいたの?」
僕の世界にはドラゴンが存在しないという「常識」を伝わらなかった。
その宝石や金貨にまったく興味を示さない少女を見て、僕に大胆的なアイデアがあった。
「エアコン、パソコンに除湿機とかの電化製品をここに置きたくない?」
「そんなのもちろん欲しいわ」
「お姉ちゃんに接して知ったことを教える。なんとドラゴンの体液が燃えるらしい。発電機でも置いたらいいかも…でも、よくやけどしないなあ」
「…なんと破廉恥な…」
「鱗のすきまの話だけど?」
「私はもともと、普通に人間のような暮らしを送ってきて、血のつながりのない両親で育てられた」
「義務教育が終わって、両親の家計の手伝いをして、高校進学をやめた。けどある日、謎のハガキから、好奇心旺盛のせいで謎の儀式をして、ドラゴンの遺物を相続してから、ドラゴンへ変身できるようになって、わけわからんままこの洞窟のあるじでもなった」
「この世界の金貨銅貨なんか、信じるようとしないわ…でもこの世界のものを現金化して、円札で両親を支援する方法もない」
「あのねぇ、もし、世界を超える通貨があったら、使う?」
「使う」
即答だ。