冒険の意味ってわかる?
「宇宙は猫である…」
知らない草を淹れたハーブ茶を飲みながら、アナスタシアがここにいる経緯を聞くのが流石にハードル高い。
「この世界の魔法システム書き直したい…」
やっとこの世界のことにふれ始まった。けど価値のある情報はなかなか出てこない。300年でも話し続けそうだ。
「元素をポジティブ、ナチュラル、ネガティブと三つの状態と表すと…」
小説によくある魔法よりも、パソコンの論理回路に近い。しかも地球で振り落とされた3進コンピュータだ。ってか、魔女の理論的な話を聞くならなんとか魔法学園に行くんだけど。
「カタツムリが可哀そうじゃない?」
カタツムリの殻に金箔をつける意味がわからない。まあ、異世界だし、地球と変わらない物理的法則のはずがあまりないのだろうか…
その後はカチューシャとか、僕が知ったロシアに関わった話題を盛り上がってみた。時代と国を越して、人類共通な思いが繋がっていく。
カタツムリの殻でトランジスタを作ろうとしている魔女に、敬服でしか言えない。けど、トランジスタを作れるのに、紙とペンを作れない?
「これで宝探しをしている」
背の低いロバの上に乗っている、森を渡る魔女がカタツムリの殻でできているダウジングマシンを持ちながら前に進んている。僕がその後ろについている。もしも背景が砂漠に変わったらナスレッディン・ホジャの実写版と同じになるかも。
リスを恐がらせた。ウサギを目撃した。モンスターを想像したら、ただの藤のつるだった。
「ここに来たこと、ある?」
2人で洞窟に入った。来たことあるというか、ドラゴン娘に転移されたスポーンポイントだ。
アナスタシアがロバから降りて、ドラゴンの宝山にダウジングマシンを向ける。けど、彼女の表情が変わらない。多分、この世界の人間らに価値のない、ただキラキラなものばっかりだから。
「どうした?酸欠?」
「ううん、この宝山を見て、プラウダによくある社会主義労働英雄の生活もこんなじゃないかと、嘆いただけ」
「もう異世界に何百年も住んでいただろう?何でいつもソビエトだけ懐かしんでいる?」
「わからない。けど、これもそれも、私の頭の回転も、君と出会ってから変わってくる。君はまるでバーバ・ヤーガだ」
ピンと来ない。
「レディー・ガガなら知っているけど」
「ババ・ヤーガの典型的なイメージは、醜い老婆である…」
説明してもらった。ってか、彼女が魔女じゃない?
とにかく、今日の冒険も、いい収穫がなく、ただたくさん歩いただけ。歩数計アプリがあったら、絶対に週間ランキング上位だろう。
水たまりを踏んで滑った。まるでシルバー経済のパッケージツアーに参加しているみたい僕がいじましい。