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あやまり

作者: 楽部

 一段落。


 仕事の合間に外に出て、一服。深く吸い込み。


 ふぅー


 続いて、ぷかぁ、と吐き出す至福の一時。天高く、空をたゆたいながら昇りゆく煙を追い、見終えると、出先から戻ってきた後輩の女子と目が合った。


「こんなところで、何をしているんですか!」


 最初から詰問調である。整った顔立ちなのに、それぞれのパーツをつり上げて。しかし、後ろめたくもあり、言い返したりしない。


「いやぁ、ちょっと一休みで。すまん、すまん」

「すまんじゃないです。だめじゃないですか。ここ、禁煙区域なんですよ」


 昔はよかったのに、条例の改悪、否、改正されたかで禁止。世の中、見つからなければOKなのだが、見つかってしまっては従うよりない。火は消して、手仕舞いに。


「うっかりしてた。今後は気をつけるよ」

「うっかりじゃないです。それに今、休憩時間なんですか」


 実はその通りでもある。各自適宜に取ってでよいが、喫煙者はタバコ休憩が多い、長いと社内でも、社会でも問題視されている。非生産性の誹り。


「ごめんなさい」

「ごめんじゃないです。課長も気付いているんですから」


 自分ほどヘビーではないが、課長も喫煙者。喫煙スペースで鉢合わせては、落ち着かない、狭苦しい、暑苦しい。とても休めない。


「何か言い分でも」

「いや、その、とくに。申し訳ない」

「じゃないんです。改めてはくれないんですか!」


 いやぁ、突っかかってくる矛がなかなか収まらない。高ぶる感情を抑えるには、確か6秒くらい間を置くんだったか。否、それは自身に生じた場合。あっ、彼女の表情、崩れてくる。


「真面目に聞いてます?、…さんのこと、こんなに思って、言っているのに…」


 ああ、どこで対応を間違えたのだろう。ただ、この時はあやまる方にばかり向いていた。間違ってました、と頭を下げる、深々と。


「すいません」

「そうですよ」


 手を取られ、顔が自然と上がると、そこにはあった。晴れやかな秋の空。




「体に悪いんですから。もう、絶対だめですよ」

「はい、すいません」

「これからも、ずっと見ていきますからね」

「はい、すいません…」


 ごめんなさい、とは頭を下げられなかった。

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