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パンツァーブリッツ・オンライン  作者: りんごりあん
86/159

1-B.61

「それでは……アコ、お願いします」

 最終確認を終え、マップから目を上げたリアシュにそう言われ、アコは必要は無いのですが照準器を覗き込みました。空以外の何も写らないことを確認し、引き金に指をかけます。そして、爆発音と共に砲弾が空へと消えていきました。弾の数にも限りがありますからちょっと勿体なく感じますが、空包なんてものは持ち合わせがありません。

 大事なのは撃った弾より発砲音です。丘を越え、あのA42Vのもとに届いたのでしょうか。ウドミと共に、リアシュの手に持つ板状情報端末に注目します。四角いアイコンと、そのさらに南の森の中に等間隔に並ぶ三つの点がそれぞれ白く表示されています。彼らの背後には勢いを増す水際が迫りつつあり、まさに背水の陣のようでした。

「……動きましたわ」

 赤いバーが南東エリアを通過した後、そこに元々あったA42Vを表す四角いアイコンの位置は、目に見えて変化していました。明らかに、向きを変えて北上しています。

「思ったよりも速いですわ」

「動きは鈍重そうでしたが、なにぶんデカいですからね」

 そんな言葉を交わすアコとウドミを余所に、リアシュは三つの点のうち、最も東側の一つを見ていました。南の三チームの中で唯一、先ほどの更新時に僅かに移動していたからです。そうしてまた一分が経ち、赤いバーが南のエリアをさらっていきます。

「……これ、止まってませんか?」

 A42Vは位置を少しだけ変え、その砲を東側に向けていました。単位時間一分のマップからは今移動しているのかまで読み取ることはできませんが、カニ歩きでもしていない限り、少なくとも北へ移動はしていません。そして、その砲の向けられる先には一つの白い点。一分前、森の中で少し動いていたチームが、動き出したA42Vの東側を追い越すように走り始めたのです。

「A42Vがこちらの誘導に反応して背を向けたのを、好機と見て追撃してしまった……?」

「なんてことを!」

 余計なことをしてくれたものです。

「ど、どうしましょう?」

「いえ、焦る必要はありませんわ」

 しかし、動転するアコに投げかけられたのはリアシュの冷静な声でした。

「A42Vの前にここまで堂々と姿を見せた以上、このチームはすぐに退場するはず。不確定要素が消えた後、もう一度、少し位置を再調整して同じことをすればいいだけです」

 アコとウドミの顔に納得が浮かびます。極論、地雷原までA42Vを連れて来れば目的達成ですから、時期に関してはそれなりに柔軟性のある作戦です。

 ただし、リアシュの顔にかかった憂いのみ、未だ晴れていません。

「危惧すべきは、南の三チームが私たちと同じように結託している可能性ですわ。あちらにはあのTKのチーム、MMAIがいます。彼らはA42V打倒の方法については、こちらと同じ結論に達しているはず。つまり……」

「……脚を狙って倒す、ですか」

 それは、あの材木倉庫の丘で見た豆戦車の挙動から明らかでした。

「その通りですわ。そして、あちらは恐らく、とどめを刺す手段を持っていないのです」

「対戦車地雷のことですわね。ですが、どうしてそう言い切れますの?」

「南エリアにも、あの神社みたいな場所があったかも知れませんよ」

「あの三チームは位置情報が公開されてから一時間、大きくは動いていませんわ。あまり希望的な観測はできません……ともかく、A42Vは確実に撃破しなくては」

 確証が持てない以上、余計なリスクを取るべきではないということでしょう。

 レッドの受け売りですが、脚を潰したからと言って例の特殊攻撃が止まるとは限りません。アレを止めない限りまともなBCSができない以上、A42Vの撃破は確実なものである必要があります。

「何とかして視察できないかしら。少し、岩山の方に出てみてくださる?」

「やってみますわ」

 南を向いてA42Vを待ち構えていたカヴェナンターが一度後退し、あくまで稜線に隠れつつ車体を東に向け、前進を始めます。リアシュはハッチを開けて首を出しました。

 崖っぷちまで来ると、今度は崖に対して車体を平行にして、南方向へにじりにじりと少しずつ岩肌を降り始めます。水捌けは良さそうな地面ですが、丘の東側はずっと日陰だったためか、砂利っぽい土は水気を含んでいました。カヴェナンターは数メートルほど下り、一際巨大な岩の影で停車します。

「この辺りで大丈夫ですわ……ちょうど、ギリギリ見えます」

 リアシュが双眼鏡で窺う方向に、アコも照準器を向けてみます。数キロ先の眼下で、かなり熾烈なチェイスが繰り広げられていました。片方はもちろんA42V。八脚を元気にワシャワシャ動かしています、と思ったらどうも様子が違いました。

「ひぃふぅ……左側が一本ありません!」

 アコから見て左、つまりA42Vの進行方向に対して右側の脚が三本に減っていました。位置関係のせいでカヴェナンターからは進行方向に対して左の側面しか見えないためわかりにくいですが、ここから見た時の奥側の、一番後ろの脚が既に破壊されているようでした。とは言え、七脚になっても移動に大した支障はきたしていないようです。今の進行方向は、一応北東を向いています。

 そして、そんなA42Vが例の口径48ミリの機関()を乱射しながら追い回しているのが、件の戦車でした。見たところ中戦車くらいにカテゴライズされそうですが、そのあまりの背の高さにアコは瞠目しました。車体の全長や幅に対して、車高が異常に高いのです。扶桑型の艦橋を思わせるような、そんな高重心の戦車が蛇行しながら機関砲から逃げ回るので、向きを変えるたびに車体が傾きやしないかとヒヤヒヤさせます。

 そしてアコの索敵系スキルは、さらにその奥、森の中に、いつぞやの豆戦車と、その隣で砲だけつき出してA42Vの方を狙う妙に既視感のある中戦車の存在を教えていました。

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