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パンツァーブリッツ・オンライン  作者: りんごりあん
85/159

1-B.60

 YNGのARL-44がようやく頂上に現れた時、既にレッドとリアシュによる話し合いは一定の結論に達していました。

「A42Vは発砲音に反応しますが、発砲した対象が視認できない場合、まず音のした地点ないしは方向に向かって直線的に移動を始めます。これを利用する」

「地雷は全部で40個ですわ。これらを密集させ地雷原を作り、その上を通りかかったタイミングで脚を撃って地に落とします。地面に密着した状態で下部装甲を爆破するのです。地雷の敷設場所は、あの樹の手前から崖までの範囲にしましたわ」

 二人の要約するとこんな感じの説明を受け、ナギナギはふんふんと頷き、「じゃあ」と答えました。

「差し当たってやることは、地雷原の設置ね?やり方を教えて頂戴!」

 リアシュがレッドに視線を送り、それを受けてレッドが口を開きます。

「威力が未知なため、二枚を縦に重ね一組とし、20の地点に設置しました。一列につき六、七個を3メートル弱の間隔で三列という配置です」

「……あっ、もう終わってるのね」

 現在時刻は15時51分でした。


「それでA42Vを誘き出すって言ったけど、結局どっちがやることになったの?」

 ナギナギが悪びれもせずに、しかも囮役デコイを他人にやらせる気満々でそんなことをのたまいます。それに、いかにも健気に返事するのはリアシュです。

「その役目はCRSTにお任せくださいまし。最も足の速いこのカヴェナンターが誘導を務めるのは当然のことですもの」

「あら、そうなの?」

 レッドも頷くのを見て、ナギナギは「悪いわね」と白い歯を見せました。

 車内のアコとしては、正直本当に大丈夫なのかと疑わしいところです。しかし、リアシュ曰く際立って危険なわけではないとのこと。それはやってもやらなくても危険なことには変わらないという意味かと問うたところ、返答の代わりに微笑まれてしまいました。

 大方、揉め事を起こすよりもA42V討伐に専念したい、ということなのでしょう。もっとも、カヴェナンターとIS-2とARL44の中から囮役を選べと言われたら、カヴェナンターを選ぶ以外にないことには、アコも賛同します。

 リアシュは板状情報端末を持ち出して、その画面を指でなぞって見せます。まず、南東エリアにて低地の方に睨みを利かせる四角いアイコン、A42Vに指を置き、そして丘の頂上地点とを結ぶように直線を描きます。直線をそのまま伸ばし、少し行ったところで止めました。

「この辺りで発砲し、音を聞かせます。もちろん、その後も微調整を行いますわ」

 レッドが同じマップを見つめながら、グローブをはめた指を伸ばします。

稜線射撃ハルダウンのため、配置はこの半円形の台地の弧に沿ってするべきだ。必然的に、北側はCRSTということになりますが……」

 天から見ると半円を描く頂上の台地の、さらに北半分の四分円に三輌を配置して、南からやってくるA42Vを袋叩きにする算段です。

「なら、YNGが西側に回るわ。MAGIは間に入りなさい」

 A42Vの砲は基本的に北を向ていると思われますから、ナギナギが提案したのはなるべく自分が射線上に入らないようにするための配置でした。その意図を知らないわけではないでしょうが、よほど地雷による撃破を確実視しているのかあるいは自信があるのか、レッドから不満の声は上がりませんでした。

 両者の合意を見て取ったリアシュが、今度は顔を上げて丘の頂上にポツンと立つ一本杉と、その足元付近に広がっているはずの地雷の畑の方向に注意を促します。

「腹が水平に満遍なく接地するようにしたいです。タイミングくらいは、合わせてくださいましね」

 右側の脚は低い崖肌を踏むように誘導することで左右に高低差を作り、左側の支えがなくなった時に車体の底が地面に水平になるように調節する予定です。確実を期すならば、左側の脚は全て破壊したいところ。一番前の脚はCRSTの担当として、あとの三本はMAGIとYNGが分担することになります。それも含めての、最後の言葉でした。


 三輌が、既定の位置に散開します。CRSTから見ると、右手方向の200メートル以上先にMAGIのIS-2の緑色の車体がチラッと見え、さらに向こうにARL-44の、こちらは辛うじて砲塔が見えるのみ。

 最も位置が重要なカヴェナンターは、リアシュの指示に従って慎重に位置取りをします。もう10メートル南にという指示でレバーを動かしていたウドミが、リアシュに質問しました。

「あの、先ほどの話に上がらなかったことなのですが……」

「何かしら」

「……A42Vを倒した後のことです。そのまま三輌で戦闘となるのでしょうか?」

 そう言われたリアシュは、両手に持った板状情報端末のマップから目を離し、ハッチ越しに南西の空を見上げて答えました。

「YNGのナギナギは……勝つ自信があるようでした。MAGIも同じです。かなりの間合いがあり、なおかつ開けた広いフィールドですから、負けるつもりはないのでしょう」

 カヴェナンターの得意な間合いはショートレンジ。逆に、他の二輌は分厚い装甲と強力な主砲を活かせるミドルからロングで戦いたいだろうことは言うまでもありません。

「何か、約束事を決めておいても良かったのではないですか?A42Vを倒した途端、撃ってこられては成す術がありませんわ」

「正しいですわ。ですが、ハッキリ言って無意味でしょう。私なら、その約束を守ることはありませんもの」

 可愛い顔で言っている内容は碌なものではありませんが、可愛い顔なので内容も可愛く聞こえてきます。

 リアシュは天井に向いていたグレーの視線を、そんな碌でもないことを考えていたアコへと持っていき、微笑みつつ言いました。

「それに、ことが最も上手く運べば……そんなこと、する必要はないかもしれませんから」

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