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パンツァーブリッツ・オンライン  作者: りんごりあん
61/159

1-B.36

 石畳の上で、互いの位置を取り換えながら消防斧と飾り太刀の応酬が繰り広げられます。形の上では二対一の勝負ですが、アコは行司か何かのようにウロチョロしていることしかできないので実質ウドミとピンクのタイマン勝負。この場を離れリアシュと合流しようにも、安易にそんなことをすればピンクに三人全員の居場所を特定されてしまうことになり、それは少々まずいと思うのです。

 白い敷砂利を蹴り、ウドミの右半身に執拗に回り込んで攻撃するピンクに、ウドミはやりにくそうに防戦を強いられています。ピンクが看破した通り、ウドミの右肩は上がらず、思うように動かすことができていませんでした。それでも十分に凌げてはいるのですが、意地悪く右半身にばかり攻撃を集中させるピンクの攻撃に、危うい場面は増えてきています。

 やはり右腕を狙って振り下ろされた消防斧を、両手で構えた太刀で背後に流したウドミは、即座に柄から離した右手でピンクの肘を掴み、体の外向きに引っ張るように力を加えます。バランスを崩したかのように見えたピンクでしたが、地面を蹴って前転し、スムーズに立ち上がって見せました。

「さっきからナニソレ、合気のつもり?♡」

 距離を取ったのはおしゃべりする為だったようです。アコはあまり詳しくありませんが、合気、つまり合気道といえば相手の力を利用してなんかこう上手いことする武術だったはず。握手しただけで相手を倒すのを見たことがあります。漫画で。

 ウドミの場合STR(筋力)が強すぎて、相手の力を利用する必要があるのか疑わしいですが、中の人のことを知っていれば納得がいきます。とりあえず、今後何かあっても椿姫と肉弾戦するのはやめておいた方がよさそうです。

 ああ何度もぶつかり合っていれば相手の技術のことも多少はわかるのでしょうか。ウドミは太刀を装備しはしたものの、主に避けきれない攻撃を弾くのに使っており、その攻撃の主体は空いている片腕を駆使した体術。ピンクの推測は当たってはいるようです。そういうピンクの方は一体何という武術体系に基づいた戦い方をしているのかは、アコからはまるで見当もつきませんが。

「なら♡」

 質問にウンともスンとも答えずに、油断なくピンクを睨めつけるウドミに、ピンクはその消防斧を振りかぶると、なんと投擲しました。ウドミは瞠目しつつも、首へストレートの軌道を描く消防斧(トマホーク)を太刀で迎撃し打ち払います。軌道を変えた消防斧は、拝殿の方へ飛んで浜縁に突き刺さりました。

 そうして稼いだ時間で、ピンクはストレージを操作し何かを実体化します。ご丁寧にピンク色のエフェクトを纏いながら彼女の手の中に現れたのは、そのカラーリング以外はなんだかすっかり見慣れたチェーンソーでした。

「こっちの方がいいかな?♡」

 ピンクはスターターロープを無造作に引っ張りながら、挑発的な視線を寄越します。斧の次にチェーンソーが出てくるとは、木こりでも目指しているのでしょうか。そうでなければゾンビウイルスのパンデミックに備えているとしか思えません。

 アコはいよいよ、Sランクプレイヤー全員チェーンソー持ってる説をテレビ番組に検証して欲しくなってきました。もしかしたら、リアシュもあれで一つくらい隠し持っているかもしれません。

 何度目か、スターターロープが引っ張られ、爆発音がすると共にチェーンソーが小刻みに振動し始めます。ピンクがハンドルを引くと、チェーンが回転を始め、チェーンソーは凶器として完成しました。

 起動したチェーンソーを胸の前で構え、ホラーゲームの敵キャラか何かのようなモーションで駆け出すピンク。新たなファッションとして、ズタ袋でもプレゼントしてやりたいです。全身ピンクよりは趣味が良いでしょう。

 ツインテールを靡かせ急迫するピンクとその目新しい武器に間合いを測りかねつつ、ウドミは大上段に振りかぶられたチェーンソーを両手で構えた太刀で受け止め、金属と金属が壮絶な火花を散らしながらぶつかり合います。チェーンが切れて刃が飛散する大惨事になりかねませんので即刻やめるべきです。

 しかしピンクはやめるどころかむしろ全身の体重をかけるようにチェーンソーでウドミの太刀を押し込もうとします。ウドミは、柄に当てていた右手を物打ちに移動させ、抵抗の姿勢を取りました。しかし、右肩の負傷の影響は大きく、右腕で抑える太刀の切っ先がどんどん下がっていきます。

 ウドミは苦し紛れにその傾きを利用しチェーンソーを滑らせることで斬撃を右に受け流し、すれ違いざまにピンクの体を蹴り飛ばして互いの立ち位置を交換し、何とか窮地を脱しました。堪えた様子もなくチェーンソーを構え直すにピンクに対し、ウドミは肩で息をしており状況は明らかにピンチです。

 何か、何かあいつを排除する方法は無いのでしょうか。周囲を見回しついでに宝物殿の方をチラッと見ますが、リアシュからのメッセージの類は見受けられません。その時、後ずさったアコの足に、この境内を探索する用意としてカヴェナンターから持ってきたバックパックが当たりました。

 二つ持ってきたうちの、確かこっちはウドミの方です。アコのバックパックもすぐ隣に置いてあります。アコに電流走る――!

「ウドミさん!『アレ』を使います!」

 ピンクと向かい合ったままのウドミは一瞬戸惑った気配を見せましたが、ピンクの肩越しに、しゃがみ込んだアコの足元にあるバックパックを見て察したようです。

「……ええ!よくってよ!」

 そんな二人に、ピンクも振り返りアコの様子を見ようとしますが、よそ見はウドミが許しません。繰り出された太刀の刺突を首を捻って躱し、すかさず反撃行動を開始しました。

 そんな二人の戦闘に背を向け、石段の方へ駆けるアコの背中にはバックパックが担がれています。石段を数段下り、立ち止まって振り返ったアコは、四次元空間みたいなバックパックの中から全長1.6メートルに及ぶ金属の筒を取り出しました。

 ボーイズ対戦車ライフルです。

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