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パンツァーブリッツ・オンライン  作者: りんごりあん
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1-A.5

 倉庫を出たアコの戦車を待ち構えていたのは、金ピカの塗装と見まがうような明るいベージュの砂漠迷彩を施された、重戦車でした。そのキューポラから金髪の幼女がその愛くるしい頭を覗かせています。

 リアシュはあの可愛らしい衣装ではなく、サイズはまるで違いますが柄だけで言えばウドミとお揃いの迷彩服と、その上からフード付きのポンチョを着ていました。ヘルメットも被っており、戦闘態勢は整っているようです。

「いかがかしら、わたくしのケーニッヒス・ティーガーは?」

 狭い砲塔から這い出したアコに、リアシュが声をかけました。

「完全再現ですわよ!」

 その言葉通り、彼女の乗る戦車はまさにケーニッヒス・ティーガー、つまりティーガーⅡでした。かつてはその重装甲と88ミリの巨砲で戦場を席巻した怪物です。ただしPBOにおいては、機械的トラブルの多さから敬遠されがちな戦車でもあります。

 また、PBOでは史実の戦車を「完全再現」することに一定のハードルが設けられています。通貨による取引のみで手に入る部品だけでは完全再現は達成できず、それとは別に敵戦車としてフィールドに出現するその戦車を撃破することで確率でドロップする部品が必要となるのです。そして、そのハードルは強力だった戦車ほど高まります。ティーガーⅡともなればなかなかできることではないでしょう。

「素敵ですね。史実の戦車を忠実に再現して使ってる人って、拘りがあって憧れちゃいます」

「ありがとうございますわ。まあ、中身は史実とは程遠いけれど……」

 アコの称賛に、リアシュは少し遠い目をしました。いかにティーガーⅡと言えど、そのままでは強化された敵戦車や改造が重ねられた他プレイヤーの戦車に太刀打ちできません。

 アコは、彼女が自分と似たような苦労をしているのだろうということを察しました。

「アコさんの戦車はなんだか不思議な形をしていますわね」

 ティーガーⅡの操縦席からウドミの声が聞こえてきました。アコは照れました。それから、三人はしばらく互いの戦車の話で盛り上がりました。


 ひとまず、一度全員戦車から降りてこの後のことを話し合います。もちろん邪魔にならないように、ハンガーの隅にまで戦車を移動して。

「相性を見るためにも、一狩り行きたいところですが……どこにします?」

「デザートエリアで良いのでは?」

「そうですわね。どのみちフォグバーグからですと、どこへ行くにもあそこを通ることになりますし、近場で済ませるとしましょうか」

 出撃するに当たって、まずしなくてはいけないのは互いの能力の確認です。アコは自分のステータスをウィンドウに表示させ、他の二人に見せました。

「随分やりこんでいますのね……私にレベルで追いつきそうではありませんか」

「私よりもずっと高いですわ」

「あはは……」

 アコは言葉を濁しました。

 PBOにはレベルが存在し、敵モブを狩ることでレベルアップできます。つまり、レベルが高いほどやり込んでいると言えるのです。勤勉な学生としては、あまり好ましい事ではないかもしれません。

 また、PBOにはステータスというシステムもあります。レベルアップをする度に貰えるポイントを「STR(筋力)」「DEX(敏捷)」「CON(耐久)」「TCC(照準)」「TEC(技術)」に振り分けていくことで各アビリティの数値を成長させていくというもの。当然、レベル1とレベル99では、できることがまるで違います。

「砲手はアコさんに任せて正解みたいですわね」

 アコのステータスは、ソロのセオリーに従って満遍なく振りつつも特にTCCに偏るように振り分けられています。結果としては、三人の中では最もTCCの値が高いようでした。

 アコに続いて、リアシュとウドミも自分のステータスを表示します。

「ウドミさんのSTRとCON、すごいですね……」

 そのずば抜けたSIZの恩恵でしょう、ウドミはアコよりもかなりレベルが下にもかかわらず、STRとCONでは圧倒していました。いわゆるHP(体力)に相当するCONに至っては、ダブルスコアがつきそうです。

「まったく羨ましいですわ」

 SIZと言えば、こちらにも偏った人がいました。リアシュのステータスはレベルが高いにも関わらず、STR、DEX、CONは軒並み凡庸かそれ以下です。代わりに、TCCと、そしてTECが異常なほど突き抜けていました。

「私のTECですか?それはまあ、私の戦車は……ほら……」

 アコがTECの値に注目しているのに気付いたリアシュが、チラッとティーガーⅡを見やり答えました。

 TECは戦車の改造や整備、そして修理に関わるアビリティです。なるほど、そのTECは彼女の愛の値でした。アコは深く納得しました。

「それでは今日のところは、とりあえずこの二両で狩りに出てみましょうか」

「ええ、ブロウル(B)チャレンジ(C)シリーズ(S)にチームで参加するのなら三人で乗る戦車も決めなくてはいけませんもの」

「あ、私の戦車では三人以上となると厳しいかも……」

 アコの戦車はもともと歩兵戦車としては小柄なバレンタイン戦車に、さらに小さめの砲塔をつけることで重量の問題をなんとか解決しています。それこそオープントップにでもしないと、リアシュはともかくとしてウドミは乗り込めないでしょう。

 そもそも紙装甲のバレンタインは、NPC相手なら立ち回ることができてもPVPにおいては撃破されるリスクが高すぎるのです。それは、BCSにソロで参加していてアコが感じている限界でもありました。

「このティーガーⅡで出るか、あるいは新しく買うか……」

 アコはそれとなく、それぞれの所持金を確認しました。

「あるいは……」

 ウドミが、チラリとリアシュを窺いました。

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