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パンツァーブリッツ・オンライン  作者: りんごりあん
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1-B.32

 仄暗い宝物殿の、棚やら仏像やらを抜けた先には、周囲から明らかに浮いた光景が広がっていました。全体的に木製の世界にステンレスの箱型ケースがある時点で目を引くことに間違いはないのですが、蓋を開けてみたその中に所狭しと並べられたモノが完全に世界観を間違えています。

「物騒な……」

 分厚い円盤の中心が盛り上がった、鍋の蓋を分厚くしたような形状の鉄の塊。直径30cmほどあり、巨大な缶詰の類に見えないこともありません。空を飛んでいたら間違いなくUFOとして通報されるでしょうが、実際には地面に埋めて使われます。

 一見してその正体を察することのできる女子高生はそう多くないと思われますが、アコはPBOプレイヤーであり、多くないものの確かに存在するその一人でした。

 そう、これは地雷。地雷は地雷でも、きっと対戦車地雷でしょう。そうでない地雷が役に立つゲームでもありません。何という対戦車地雷なのかまでは分かりませんが、あとでリアシュに聞くとしましょう。

 ちなみにこの対戦車地雷というアイテム、PBOでは購入する以外に、あのマイン・スコーピオンを撃破することでドロップするアイテムでもあります。アコはあまりお世話になったことはありませんが、移動するボスを攻略するときに、事前にこれでもかと敷き詰めてそこに誘き出して倒す、なんてこともできるそうです。

 そんな爆発物がきっちりと並べられた恐ろしいステンレスケースから、アコは一つ抜き取って持ってみました。5キロ以上あるでしょうか。いくつもまとめて持つというわけにはいかない重さです。もっとも、重ねて持つなんて恐ろしい事、アコにはできませんが。

 一般的な対戦車地雷は大体100キロ程度の荷重で爆発すると聞いたことがあります。ただ、何があるか分かったものではありませんし、アコはこれをどう持ち出すべきか判断に迷いました。そのまま持って歩いて大丈夫なんでしょうか。バックパックに入れたら爆発しなくなるものなのでしょうか。わかりません。

 こういう時はリーダーに指示を仰ぐに限る、とアコは一旦宝物殿を出ることにしました。


 外の光に目を細めながら宝物殿を出たアコは何となしに空を仰ぎました。いつの間にか、かかっていた雲はどこかに流れ、空はまさに快晴という言葉が似合う晴れっぷりです。いずれ濁流にのまれる予定の孤島にいることを忘れてしまいそう。もうそろそろ、低地の森は水浸しになっているのでしょうか。

 さてリアシュに報告に行こうと、アコは空から視線を切り拝殿に目を向けました。確か、まず拝殿に正面から入っていくのを見ました。土足で浜縁で上がり込むのはなんとなくはばかられましたが、脱ぐ気にもなりません。申し訳なさげに心なしつま先立ちでいたのも最初だけで、すぐに忘れました。

 割れた板戸から拝殿の中を見回しますが、やはりリアシュの姿は見当たりません。彼女のSIZ(体格)のことを考えると、無いとは思いますが見落とす可能性も無くも無いわけですが、流石にいないと判断してアコは本殿に向かいます。読んで字のごとくまさに濡れ縁であるわけですから、特に傷んでいるのでしょう、ところどころ腐り落ちた浜縁を軋ませながら、万が一にも足元が抜けたりしないよう注意して、拝殿を左に回ります。

 拝殿の裏に、本殿はありました。正面からも見えた巨木は、さらにその奥に見えます。本殿の向こうから存在を主張するその太い幹には、一周するように白いしめ縄がかけられていました。

 そこにちょうど、リアシュが本殿から出てきました。

「リアシュ様」

「あら、アコ。何か見つかりましたか?こちらは判断に困るものを見つけましたわよ」

「こっちもです。宝物殿に、対戦車地雷が……」

 アコがそこで言葉を切ったのは、拝殿の向こうからウドミの悲鳴が聞こえたからでした。若干わざとらしいまでの、綺麗な悲鳴でした。アコとリアシュは顔を見合わせます。

「ウドミさんですよね。何かあったんでしょうか」

 あまりに芝居がかっていたため、アコは差し迫るものを感じませんでした。困惑気味にリアシュを仰ぐアコに、リアシュは目を鋭く伏せて答えます。

「恐らく、敵襲を伝えるあの子なりのメッセージですわ」

 敵襲。とすると、アコたちのように石の階段を登ってきたか、あるいは東の大鳥居から入ってきたかのどちらかでしょう。CRSTが入った脇道が合流した、正規の参道の先にあった巨大な鳥居の方です。

 カヴェナンターが通ってきた道の険しさを考えると、後者の可能性が高そうです。ウドミがそちらから敵戦車が来るのに気づいて声を上げたとすれば、ここからでも走れば余裕でカヴェナンターに乗り込んで迎え撃つだけの時間があるでしょう。

 クラウチングスタートの構えに入るアコに、リアシュが冷静な言葉を投げました。

「アコ、お待ちなさい。ウドミはあれでプライドが高い子です。私、彼女の悲鳴なんて初めて聞きましたわ」

「え?まあ、確かに……いつも落ち着いている人ですけど」

「恐らくウドミは今、敵に位置や存在を確信されており、そしてその敵との距離は少なくとも叫べば声が聞かれる程度の近距離であると考えられます」

 アコは、リアシュがそうするのに倣って、足音を忍ばせながら歩き出します。浜縁を下りた二人は、拝殿を右回りに移動していました。

「私たちの名前を呼ぶ、などではなく悲鳴で危機を伝えてきたということは、その情報が敵に知られ得る上に、知られることで私たちが不利になると判断したということでしょう。例えば人数や、ひょっとしたら名前と言った情報です」

「もしかして、白兵戦でもやってると?生身で乗り込んできたやつがいたってことですか」

「その可能性が高いですわ」

 すると、石の階段説の方が有力になってきます。大方、カヴェナンターと同じように岩の道を通り、ようやくたどり着いた先にあったあの急な石階段を見て、斥候としてメンバーを上らせた、と言ったところでしょうか。

 拝殿の壁沿いにその角まで来たアコとリアシュは、頭だけを出して拝殿正面の様子を窺いました。アコとウドミがカヴェナンターから持ってきたバックパックが置かれています。アコが最後に見た時から、特に変わった様子は見受けられませんでした。

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