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パンツァーブリッツ・オンライン  作者: りんごりあん
56/159

1-B.31

 アコが豪奢な拝殿に見入っている間に、リアシュがチョコンと頭を下げています。意外と、こういうのを重んじるタイプなのでしょうか。そしてこちらは意外でもありませんが、ウドミも同じように頭を下げるのを見てアコも慌てて会釈程度のお辞儀をしました。

「願い事でもしていきます?」

 冗談めかして言ったアコに、他の二人も良いですわね、と同調し、そのような運びとなりました。青銅の大きな賽銭箱が目の前にありますが、しかし肝心の銭がありません。PBOでのお金は金貨ですが、その実、金貨という形で見られるのはドロップ直後くらいだけで、あとは数字として見ることしかできないのです。

「まあ、こういうのは気持ちですわよ」

 良い笑顔で適当なことを言うリアシュに、苦笑しながらも三人で並んで二礼二拍一礼します。もちろんアコは、BCS優勝を願いました。数秒間、多分三人とも同じことを願います。

 そして十数秒後、顔を上げたアコとウドミに、リアシュはケロッとした笑顔で「さて、」などと前置きして言いました。

「それでは、探索いたしましょうか」


 罰当たりとは思いつつも、聖域を暴く準備が着々と進んでいきます。どうせ立ち去るときには動かすのだから同じだとは思いつつも、流石に履帯で境内を踏み荒らすのは気が引けたので、カヴェナンターは移動させず、BCS開始時に持ち込んだバックパックをアコとウドミの二つ分、持ってきました。物理的に入らないだろうというサイズの物も重量が許容値を超過しない限り入れることができるといういかにもゲーム的な代物です。有用なアイテムがあれば、根こそぎ持っていこうという腹でした。

 しかし思えば、この古めかしい由緒ありそうな神社も実は運営によって今月か先月に作られたばかりのデータに過ぎません。そう考えると、一体誰がアコたちに罰を当てるというのでしょうか。そんなことを考えながら完全に略奪者モードに開き直ったアコと、最初からフラグポイント程度にしか思っていないリアシュと、一人気後れしているウドミが額をつき合わせ、どこから探索するか相談を始めます。

「拝殿の奥には本殿があるはずですわ。やはり何かあるならそこではないかしら」

 軒の傾いた拝殿に、その奥の本殿を透視するかのような視線を送るリアシュに、アコが賛同します。

「ありそうですね。御神体の中に……とか、かなりありそうです」

 一方で、ウドミがおずおずと指し示すのは拝殿に向かって左にある蔵のような建物。

「宝物殿、も調べてみた方が良いかもしれません」

「あー、ありそう、すごくありそうです!」

 まあ要するに、片っ端から隈なく探そうということになりました。端から端まで精々50メートルくらいの空間ですから、苦でもありません。

「それでは分担して探しましょう。私は本殿を見ます。宝物殿はアコ。ウドミは一応、カヴェナンターの見張りをお願いしますわ」

「「了解です」」

 テキパキと役を割り振るリアシュの指示に、アコとウドミもキビキビと従います。

 アコの予想では宝物殿がやはり大本命。リアシュもそう考えているようでしたが、そちらはアコに任せるとして大穴狙いの本殿を見に行くようです。

 ウドミが石垣を下り、カヴェナンターに向かうのを見送り、拝殿に上がり込むリアシュと視線を交わして、アコも宝物殿の扉の前に立ちました。観察したところ、金属製の重厚な扉が、扉本体よりは新しそうな南京錠とさび付いたチェーンで施錠されています。

 一般的なゲームならば鍵を探す場面ですが、ことPBOにおいては、その必要はありません。なぜならば、このゲームにはマスターキーと呼ばれるアイテムがいくつか存在するからです。それらの内、こういうタイプの錠に有効な鍵を、アコはちょうど持ち合わせていました。

 スッと自前のストレージから実体化させたのは、シックな黒いグリップの金切り鋸。これがアコのマスターキーです。刃渡りは20センチほどで、弦もないのであまり無茶なものは切れませんが、コンパクトでアイテム枠を圧迫せず、重宝しているアイテムです。が、このBCSが始まって、チェーンソーに買い替えようかと思い始めています。アコは、南京錠と繋がったチェーンのリングの一つを手に取って、鋸の刃を押し当てました。

 ハンマーの類でも壊せそうなボロボロのそれではありますが、専用のアイテムが一つあると、各段に作業が楽になるのがPBOの良いところ。STR(筋力)及びTEC(技術)の助けを借りて、アコはものの数分で扉を戒める錠を取り除きました。

 蝶番が壊れているのか、変なコツを使わないとスムーズに開かない青銅色の扉を引き、開け放ったまま中に侵入します。外から見てもそこまで大きな建物ではありませんが、中は物がひしめき合い、より手狭に感じられました。天井が高い分閉塞感はありません。

 木製の棚には、由緒のありそうな太刀や兜の他に、派手な装飾の施されたかんななどもあります。この地域の風習や歴史が垣間見える内容ではありますが、それらは全て埃をかぶっており、薄暗さもあってアコは不気味さ以外感じませんでした。

 床の軋む音に肩を跳ねさせたり、神社なのになぜか置いてあった仏像と鉢合わせ腰を抜かしたりと、肝試しとしては中々楽しい思いをしつつようやくたどり着いた宝物殿の最奥で、アコはお目当てのものと思しき代物を発見しました。

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