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パンツァーブリッツ・オンライン  作者: りんごりあん
52/159

1-B.27

 ジリジリと前進するカヴェナンター。その車台の前面は既に晒されているでしょうが、ヤークトティーガーはカヴェナンターの息の根を完全に止める為か、車体中心を狙うつもりのようです。アコの見たところでは、ヤークトティーガーの発砲間隔は一分に精々一、二発が関の山。大口径らしくその主砲の連射性能は低いのでしょう。

 操縦席に座るウドミの視界からは左からカヴェナンターを狙うヤークトティーガーの姿は見えませんが、リアシュがその眼になります。

 焦らす様に前へ出ていくカヴェナンターでしたが、ウドミは勢いよくレバーを倒しいきなり急加速します。一瞬照準に入り込んだ機関部目掛けてヤークトティーガーの砲が火を噴いたときには、すでにカヴェナンターはそこにいません。砲塔を持たない駆逐戦車を手玉に取る快速戦車の典型的な図でした。

 ですが、ウドミはすぐにレバーを引き倒し、急制動からの右後ろへ後退。その鼻先を、左後方から飛来した砲弾が掠めていきました。

 IS-2です。

「おおっ!すごい!」

「ウドミ!よく避けましたわ!」

 リアシュが頭を出し砲口の向きを確認したのを見て、カヴェナンターの行動を予測し狙いを変更したのでしょう。やはり、流石はSランクの強敵です。危うく退場となるところだったカヴェナンターでは、リアシュとアコの歓喜の声が上がります。

「ふふ、もう止まりませんわよ」

 二門の射撃を躱し、再び加速を始めるカヴェナンターはまさに絶好調。得意げなウドミの言葉の通り、もはやこの戦場に決着がつくまで停止することはないでしょう。

「ヤークトティーガーの右を抜け、森に入ります!IS-2を撃破しますわよ!」

 水に飛び込むカワセミのように森の中へ突っ込むカヴェナンターを、二輌は見送ることしかできません。ヤークトティーガーが巨躯を旋回させる中、IS-2は緊張感を纏って、森のどこかから飛び出してくるだろうカヴェナンターの姿を探します。自然と、自身の正面即ちヤークトティーガーの左に意識が集中します。

 しかし、次にカヴェナンターが飛び出してきたのは、なんと先ほど森に突っ込んだ場所とほとんど同じ、つまりヤークトティーガーの右からでした。

 ヤークトティーガーの主砲の前を堂々と通り過ぎ、右折してIS-2に向かっていくカヴェナンター。砲塔を急旋回させ、その進行を阻もうと射撃するIS-2でしたが、カヴェナンターは進路をジグザグに取り、その砲弾を躱します。

「アコ!」

「はいっ!」

 先ほどの言葉通り停車の必要はないと、アコはIS-2に照準を合わせます。蛇行しながらの射撃、いわゆるスラローム射撃でしたが、そこはステータスの恩恵のあるPBOのこと、難しがることもなく引き金を絞りました。

 爆炎と共に主砲を走り抜けた砲弾は、螺旋を描きながら直進し、IS-2のその砲塔前面の装甲に吸い込まれていきます。160ミリの防盾に弾かれたかに思われた砲弾は、その装甲に当たったことで跳ね返り、真下へと軌道を変更。そして、車台の上部装甲へ突き刺さりました。

「ショットトラップ!」

「いえ、撃破できてません」

 アコの言う通り、IS-2に赤い撃破タグが立つのは確認できません。それどころか、まだ砲塔が動いており、すぐに次弾を撃ってきそうです。

「IS-2は車台上面ですら100ミリ程度あります。やはり後部を狙うしかありませんわね」

 IS-2の放った二発目と共に、本体ともすれ違い、その背後を取って方向転換するカヴェナンター。IS-2の旋回は到底間に合いそうではありませんでしたが、その窮地を救ったのはヤークトティーガーでした。

 カヴェナンターの転進の瞬間の減速を好機と見たのでしょう、ヤークトティーガーが放った砲弾をカヴェナンターは旋回半径を大きく取ることで躱しましたが、その間にIS-2はこちらに向き直り、さらにヤークトティーガーの射線から逃れて後退していきます。

「くっ、余計なことを……」

 リアシュは苦々しい顔で、ヤークトティーガーとやっぱりまだ体を出している将校おじさんを睨みましたが、次にはちょっと悪い顔でこんなことを言いました。

「良いでしょう、戦闘中はハッチは閉めておいた方が良いことを教えて差しあげましょう」

 IS-2を警戒してカヴェナンターは左へ進路を取り、再びのジグザグ走行で二輌の重戦車のもとへ回り込みます。その車内ではリアシュが、左手でアコの肩につかまりながら右手一本で器用に、自動装填装置の弾帯ベルトを取り外していました。

「まずは、今込められている徹甲弾を撃ってしまいましょう。IS-2で構いませんわ」

「ああ、なるほど……了解です」

 リアシュのやろうとしていることを理解したアコは、言われた通りIS-2に、大して狙いもつけずに発砲しました。引き続きのスラローム射撃でしたが、当てること自体は当たり前と言わんばかりに前面装甲の中心を捉えます。ただ、当然の如く弾かれました。

「んしょ……では、どうぞ」

「はい」

 リアシュが細い両腕とそれに見合った低いSTRで抱えてきたのは、榴弾です。アコが受け取って装填し、砲手席に座り直します。狙うのはもちろん、ヤークトティーガー。それも、なるべく上の方……。スコープの中で将校おじさんが目を剥きますが、もう遅い。

 躊躇いなく引き金が引かれ、砲身から滑り出た砲弾は、狙いに寸分違わずヤークトティーガーの巨砲の付け根を覆う円錐型の防盾の上方側面に着弾。しかし、その弾は徹甲弾ではなく榴弾です。ヤークトティーガーの額に、花の冠が咲きました。

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