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パンツァーブリッツ・オンライン  作者: りんごりあん
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1-A.17

 砂漠をダッシュで往復するアコの目に、遠くで手を振るリアシュと、彼女が手を伸ばしても肩くらいまでしか届いていないウドミのマッチョな体が見えてきました。何やら、嬉しそうにしています。よく見ると、ウドミの手に、人の身長くらいの長さのある棒のようなものが見えました。

 近寄って見ると、どうやらそれは鉄でできた筒で、いわゆる銃と言う奴でした。アコは、息を切らせながら質問します。

「それって……?」

「対戦車ライフルですわ。噂には聞いていましたが、お目にかかるのは初めてですわね」

「ええ、このゲームで鉄砲なんて見たことがありませんでしたわ」

 ウドミの言葉にアコは、ティーガーⅡの前面装甲からチョコンと銃口を覗かせる重機関銃を思い出しながら、それは嘘だろうと思いました。

 PBOには、基本的に銃は存在しません。拳銃はおろか、狙撃銃含む小銃も。何故ならば戦車対戦ゲームだから。しかし例外として、戦車と名に付くライフルが、その存在を許されています。すなわち対戦車ライフル。ちなみに、車載の重機関銃は砲扱いです。

「これは確か……ボーイズ対戦車ライフルですわ。イギリスの戦車からはイギリスの対戦車ライフルが出る、ということかしら」

 リアシュは、ウドミが両手で持つその銃を触りながら言いました。

「こんなので戦車の装甲を抜けるんですか?」

「どうかしら……弾もマガジンもありませんから確かめようがありませんけれど、垂直で20ミリくらいだったと記憶していますわ」

「う~~~~~ん」

 残念な数字に、アコは思わず唸ってしまいます。

「まあ、対戦車能力ではハッキリ言って型落ちの時代遅れな兵器ですわ。豆戦車か八九式くらいなら抜けるでしょうけれど……あるいは対人戦(PVP)なら狙撃銃として使える……かしら?」

 リアシュは、口では散々言いつつも興味を持っている様子で、その1メートル半強のライフルをしきりに眺めていました。

「ウドミ、私構えてみたいですわ」

「もちろん構いませんが……結構重いですわよ?」

「これは伏せ撃ちするものなの。地面に置いてください」

 ウドミは、その15キロの鉄の棒を地面にそっと置きました。T字の単脚と後方のストックの、一辺と一点で自立します。

 リアシュは砂原に躊躇もなく腹をつけ寝転ぶと、床尾のゴムパッドに肩を押し付けて手を伸ばしました。そして、愕然としました。

「……っ!っ!」

 右手の指が、引き金に届きませんでした。


「いやはやまさか、SIZの小ささがこんな弊害を生むとは……思いもよりませんでしたわ」

「まあまあ、撃ち方次第では何とでもなりますわよ!」

「そうですよ、例えば……例えば…………あー……ね!」

「別に、そこまで気にしていませんわ」

 未だに若干憮然としているリアシュを、二人で宥めます。現在地は霧の街フォグバーグのハンガー。予想外の事態に時間と砲弾を消費してしまったカヴェナンターは、一旦帰投することにしたのでした。

 今は、とりあえず補給のために格納庫が空くのを待っているところ。ちょうど、近くのゲートの赤いランプが緑に変わりました。代表してリアシュが、ゲートの前に立ってウィンドウ操作を始めます。

「この分だと反動を抑え込むのにSTRが要求されたりもしそうですわね。命中させるには当然TCCも必要でしょうし……となるとこのメンバーでまともに撃てるのはアコさんくらいかも……」

 やっぱり結構気にしているじゃないですか、などと思われていることを知ってか知らずか、ブツブツ言いながら格納庫を呼び出す操作をするリアシュの言葉の通り、実際のところ、対戦車ライフルでの射撃にはSTRとTCCも求められる仕様になっていました。どうやらボーイズはお蔵入りになりそうです。

 ということは、本日は何の成果も得られていないということになります。強いて挙げるならばカヴェナンターの初の実戦運用で、いくつか問題点がわかったくらい。順調とは言えない滑り出しではありますが、初日ですしね。それに、まだ上がるには少し早いです。

「どうしますか?今からアーバンエリアまで行ったら少し遅くなってしまう気もしますが……」

 アコの家には門限などありませんし、心配する親も今日は家にいません。そもそも今、物理的には家の中のベッドの上です。ですので、これは二人への問いかけでした。

「そうですわね。まあ、今日のところはカヴェナンターの改良案の検討でもいたしませんか?せっかくの初運用の感覚が残っているうちに」

「良いと思いますわ。操縦していて気になったこともありました」

 そうこう言っている間に、ゲートが上がっていきます。半ばほど開いて、部屋の全体が見えてきて、アコは驚きの声を上げました。

 予想していたのは、Ⅲ号戦車が置いてあるウドミのハンガーか、次点でティーガーⅡが置いてあるリアシュのハンガー。大穴でアコのハンガー。しかし、それに反してそこは真新しい格納庫でした。棚にはいくつか小物があり、隅にはウドミの格納庫で見た布でくるまれた長い筒のようなものが見えました。

「どうせですから、カヴェナンター用に新しい格納庫を取りましたの。三人の共用スペースにでもしましょう?」

 二つ以上の格納庫を持つには、毎月それなりの金額が掛かるはず。さすがはリアシュです。しかしアコは、どこか見覚えのあるⅢ号戦車をまた見られないのを少し残念にも思っていました。

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