表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンツァーブリッツ・オンライン  作者: りんごりあん
13/159

1-A.12

 アコとリアシュが決意を新たにしたその時、二人の右手前の、四角形のでっぱりの天板が持ち上がり、銀髪の頭が現れました。

「リアシュ様、もうすぐデザートエリアを抜けます!」

「もうですの!?まだ十分ほどしか走っていませんわよ!」

「ええ、感動ですわ!」

 改めてそのスピードに震える二人の横で、アコは内心、今、操縦手ハッチから頭を出しているウドミの手が操縦レバーを握っているのかどうか気が気でありません。アコが、そのことをウドミに聞こうと口を開きかけたとき、リアシュの鋭い声が走りました。

「ウドミ、停止ですわ!」

 その声に、ウドミが条件反射のように反応して頭を引っ込め、二本のレバーを限界まで引っ張ります。頭を引っ込めたということは、どうやら手は届いていなかったようです。

 カヴェナンターの車体がつんのめるように急停止し、慣性に従ってハッチが勢いよく閉じます。そして、リアシュのヘルメットとアコの背中を直撃しました。

「あたっ!」

「ぐえっ!」

 リアシュがヘルメットを押さえて、アコが崩れ落ちるように、車内に入るのと同時に、カヴェナンターのすぐ手前の砂が爆発しました。

「アコさん、大丈夫でして!?」

「ええ、なんとか……」

 アコは半減した体力ゲージを横目に、これは現実だったら脊椎骨折くらいの重症なのではなかろうかと戦慄しました。というか実際に骨折判定が出ているらしく、体が動きません。幸い、リアシュの頭の方はヘルメットに守られて無事だったようです。アコよりもCON(耐久)の低いリアシュが、頭部にもろにアレを食らったら即死もあり得たかもしれません。

 骨折状態も治せる最上級の回復アイテムである治療キットを取り出して使用するアコを見て、リアシュもダメージのほどを理解したようです。

「ハッチのロックが甘かったみたいですわね……去年まではこんなこと一度もありませんでしたから、もしかしたら仕様が変更されたのかもしれませんわ。マークⅢ以降のクルセイダーのような観音開きのハッチなら簡単ですから、改装も検討しましょう」

 頬を引きつらせながら言うリアシュに苦笑しながら、アコは体力ゲージがじわじわと回復していくのを待ちました。まあ、これも実際に乗ってみたからこそわかった欠陥でしょう。運営め、無駄に細かいアップデートをしやがって。

 そこに、ウドミの緊迫した声が飛んできました。

「二人とも、動きますので気を付けて!」

 その言葉と同時にカヴェナンターが急発進し、直後、背後に何かが着弾した気配がありました。

「ああ、そうでしたわ!ウドミ、ありがとう。そのまま回避行動を続けて」

「はい!」

「この攻撃は、まさか……」

「ええ。これはマイン・スコーピオンですわ」

 リアシュが、恐る恐るといった様子でハッチから頭を出して、双眼鏡で周囲を窺います。恐れる相手が敵ではなく自分の戦車なのが悲しいところ。右手方向に、砂に埋もれながら反り返った尻尾をこちらに向ける、体長十メートルほどの巨大なサソリのような生物を見つけました。

 その尻尾の先から、砲弾のような針が新しく生えてくるところでした。

「やはりいましたわ。四時の方角、距離は300!……次弾がきますわ!」

 尻尾から放たれた針が、カヴェナンターの後方に着弾して砂を巻き上げます。視程の短いこのデザートエリアであれだけ快速で飛ばしていたことを踏まえれば因果応報ではありますが、随分近いです。

 PBOの敵モブには、戦車のほかに、このマイン・スコーピオンのようなモンスターも存在します。戦車に関しては厳密なPBOですが、こういったモンスターにおいてはかなりやりたい放題で、ボスと呼ばれるような敵はモンスターが務めることも多いです。

 マイン・スコーピオンも、このデザートエリア北方のボス。最高難易度フィールドのボスに恥じない強さを持っています。硬く分厚い甲殻は至近距離からの88ミリの砲撃すら阻み、その尻尾に生えた太い針を飛ばして攻撃してきます。

 それらに加えてこのボスを厄介にするのが、特殊能力です。マイン・スコーピオンは、その名の通り地雷を用いてきます。設定によれば、圧力がかかると爆発する卵を巣の周辺に産卵するとのこと。どういった原理なのかは不明です。卵なのに巣の外に産むのは何故なのでしょうか?そもそも卵が爆発してしまって良いのでしょうか?

 そんな厄介なボスですが、アコやリアシュにとってはもう何度も組みした相手。ウドミだってそれなりの回数エンカウントしています。

 硬すぎる装甲は、ゲーム的に裏を返せば弱点を突けば脆いということ。針攻撃も飛翔速度が遅く、攻撃力はそこまでではありません。さらに必殺の特殊能力たる地雷攻撃も、先ほどのように直上にいなくても起爆するという甘さがあります。

「ウドミ、いつも通り私が『地雷探知』で見ながら指示します。転進して叩きに行きますわ」

「了解!」

 何より、『スキル』を用いれば地雷を回避することが可能な点が攻略難易度を下げています。

 『地雷探知』をはじめとする『スキル』とは、プレイヤーに許された特殊能力です。スキルは、それらごとに一定のステータスが要求され、その数値を満たしているスキルのみ、スキルポイントを消費して取得することができます。そして、要求されるのはほとんどの場合がTEC(技術)の数字。さらにスキルの精度は多くがTEC依存であり、TEC特化のリアシュにはおあつらえ向きのシステムなのです。

 この間リアシュに見せてもらったスキル一覧の膨大な量を思い出して、アコは頼もしく思いました。そんなアコに、車長席のリアシュから声が振ってきます。

「アコさん、もう大丈夫?」

「はい、動けます!」

 アコは体を起こし、操縦席に腰を下ろしました。砲手としての初仕事に、胸が躍っていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ