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パンツァーブリッツ・オンライン  作者: りんごりあん
105/159

1-B.80

「ぐ……ってて……」

 別に痛くはありませんが、そんなことを言いながら何とか身を起こします。アコは生きていました。体力は残り二割。見上げるとビルの三階くらいの高さはあるあの場所から、地面ごと滑り落ちたというのに二割残っているだけで僥倖というものです。咄嗟に五点接地が決まったのも命を救いました。スキル様々です。

 現在地は、左右に岩が切り立ったあの道です。以前、林道の古めかしい石碑から道を辿って行きついた、あの場所。

 とりあえず体を動かしてみたところ、骨折判定が出ている気配はありません。とは言え二割は二割。運動力に支障が出る域ですし、おまけに各所に出血判定が出ている為、ここからさらに一割くらいまで減るかもしれません。

 それよりも、特殊攻撃の弾着と同時に確かに聞こえた6回の追加の爆発は一体何だったのでしょうか。6、という数字がどうも引っ掛かります。アレのせいで台地が割れる程の爆発になったのでは。そういえば、地雷マイン鉱山マインと言うのは、埋めて使う爆発物という点で掘削用のダイナマイトと共通していることが由来だと聞いたことがあります。6個の地雷……?アコは考えるのをやめました。

 その時、小石がアコのブーツにぶつかりました。ブーツだけに、なんちって。そんな下らないことを考えながら小石が転がってきた石階段を振り向いたアコの脳内から、そんな下らないことは吹き飛びました。

 上の方、岩が剥き出しになった元石階段と言うべき場所が、さらに崩落を始めようとしています。

「嘘嘘嘘!」

 せっかく生き残ったというのに、死にたくありません。活を求め、周囲を見回します。こうして活が見つかった例がないのですが、今回ばかりは分かり易過ぎる異物がありました。あの、ピンク色は。

「バイク!」

 ピンク色のバイク目掛けてダッシュするアコの背後に、大きな岩の塊が突き刺さります。アコは構わず、バイクに飛びつくように跨りました。

 もちろん二輪車免許など持っていませんが、実は母方の実家の庭で乗せてもらったことがあり、走らせるくらいのことはできるのです。エンジンのかけ方もよく分かっていませんが、そこはBCSプレイヤー必携の乗り物系スキルが助けてくれます。

 青く表示される誘導に従って、言われるがままに何だかよく分からないコックを回し、謎のレバーを引きます。焦りを窘めつつ右足でキコキコやること十数回、白煙を吐いて車体が震え始めました。

「半クラ……クラッチどこ……?」

 自分の左足が今踏んでいるものが何なのかよく分からないままですが、ともかく車体が動き始めたのでまあよしとします。スタンドを上げ忘れていたことにギリギリで気づけました。

「前方ヨシ!後方ヨクナシ!うおおおおお!」

 威勢の割には大したことの無い速度です。これ以上スピードを出すと確実にコケるので仕方のない事なのですが、その頭上に特大の岩盤が迫っていることもあり、ビビったアコは少しだけ回転数を上げました。

 まさに間一髪、背後の地面を岩盤が蹂躙します。バイクに乗らなければもっと余裕を持って逃げられたような気もしますが、これから先のことを思えばこれで良かったはずです。

 振り返れば、見るも無残な石階段跡。跡と言うには、跡形も無さすぎます。当然、カヴェナンターが下りてくることも不可能ならばロッククライミングもできないでしょう。

 しかしアコは、生きてカヴェナンターに合流しなくてはなりません。冷静に考えれば、三人チームの一人が落ちて優勝などできるわけがないのです。左手だけのリアシュでは戦車砲を撃つにも難があります。アコは、CRSTの優勝に必要不可欠です。

 ともかく、アコの生存をあちらに伝えなくてはいけません。

「オーーーイ!」

 特に反応はありません。聞こえているかも怪しいところ。

「何か……煙か、音……」

 ハタと思い当たり、アコがバックパックから取り出したのはボーイズ対戦車ライフル。本当は天に向けて撃ちたいところですが、重量がそれを許さないので適当な方向を一発撃ちます。これで、聞こえたでしょうか。不安なのでもう一発撃ちました。

 その時、台の上で聞きなれた音が轟きました。カヴェナンターの戦車砲です。どうやら聞こえた模様。

 しばらくその場で待ってみましたが、リアシュまたはウドミが来る様子もないため、上も来られる状況ではないのだろうと判断しました。地割れが一つで済んだとも思えないので、参道は寸断されたと思うことにします。

 となると、合流するならやはり林道の先、村落エリアでしかありえません。マガジンを装着したままのボーイズをバックパックに収納すると、ちょっとした決意を胸に、アコはピンク色のバイクと共に進み始めました。

 大丈夫、リアシュは合理的な人です。こちらが合理的に動く限り、それを読んで良いようにしてくれるでしょう。不安と言えばライダーヘルメットがないことくらいなものです。

 ちなみにこのバイク、言うまでもなくMAGIのピンクがカヴェナンターを追跡するときに使い、急な石階段を前に置いていったもの。先にも述べたように、扱いとしてはアイテムの一つなので、戦車とは違って壊してもゲーム後元通りと言うわけには行きません。

 さらに、アコは与り知らぬことですが、このバイクは九七式側車付自動二輪車と言う名で実装されています。文字通り、本来は側車サイドカー付きの軍用オートバイで、IS-2に車載する関係で外されていますが、ボートのようなカッコいいサイドカーがついていました。もちろんのことピンク色でもありませんでした。リアルでは言うに及ばず、PBO内で購入するにも相当に値が張る代物です。

 経緯を辿れば陸王、ひいてはハーレーの血を引く暴れ馬に跨ったアコは、そうとも知らずに安全速度でひとまず林道を目指します。

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