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婚約破棄を宣言した王太子は元婚約者と戻ろうとしたが、時すでに遅しでした

作者: 琴葉

王道とは遠く離れてしまいましたが、楽しんで頂けたら幸いです。


設定はフワッとなっております。





「オリビア・フランシス、君との婚約はこの場を持って婚約破棄する。私は彼女、シャーロット・ディアス嬢と新たに婚約する!」


学園の卒業祝いとして、学生最後のパーティー会場で大声で叫んで注目を浴びているのは卒業生であり、この国のマシュー・エバンス王太子だった。


殿下の腕にぴったりくっついてるのは小動物のようなふわふわした少女、シャーロット・ディアス嬢。

その周りにいるのは将来王太子を支える役目を持つ予定の子息達。


「婚約破棄ですね。父に報告しますので、御前失礼致します」

オリビアはカーテシーをすると、さっと会場を後にした。


「あっ!おいっ!待て!」

殿下が私を留まらせようと大声を出すが、この後の茶番に付き合うつもりはない。



私の名前はオリビア・フランシス。

この世界に転生した元日本人よ。

気付いた時には赤ん坊になっていて、私は転生したと分かったけれど、この世界の話は知らないのよね。

でもパーティーで婚約破棄とくれば、異世界転生の鉄板よね?

殿下の話を聞かなくても展開は分かるわ。

だから、さっと会場を後にしたのよ。



馬車に乗り邸宅へと向かう中、オリビアの表情は晴れやかだった。


「オリビア只今戻りました!エドワード!エドワード!」

オリビアは、邸宅の執事を呼ぶ。


「お嬢様お帰りなさいませ」

オリビアの大きな声にも驚かずに対応する執事のエドワード。

王太子妃の教育は、オリビアの気持ちが高ぶっている時には役にたたない事を熟知している。


「ただいま!お父様はいるかしら?」


「書斎におります」


「ありがとう!お父様の所へ行ってくるわ!あ!エドワード!私の部屋から例の書類を持って来てくれる?」


「かしこまりました」

オリビアに一礼をするとエドワードは玄関を後にする。

オリビアはスキップしそうな程軽やかな足取りで書斎に向かった。



コンコンコンッ



「お父様!お父様!」



ゴンゴンゴンッ



「そんなに叩かなくても聞こえてるから。入りなさい」

書斎から声が聞こえると、オリビアは勢いよく扉を開けた。


「お父様!ついにパーティー会場で婚約破棄されました!」

オリビアは嬉しそうに父に報告をした。


「そんなに嬉しいのか」

苦笑いの父とは反対に笑顔を見せるオリビア。


「はい!やっとですよ?あのバカ…いえ、お花畑…コホン…ッポンコツと縁を切る事が出来ます!」

オリビアは咳払いをして言い直そうとしたが、本音を隠すことに失敗した。

苦笑いの父は何も言わなかった。きっと同じ事を思っているのだろう。



コンコンコンッ



「あ!エドワードだわ!入って!」

部屋の主の許可なく言葉を出したオリビアだが、主である父は気にせず執事に部屋へ入るように言った。


「お嬢様お持ちしました」


「ありがとう、エドワード!はい!お父様!」

オリビアがエドワードから書類を受け取ると父へ渡す為に机の上に置いた。


「これは例の書類か?」


「はい!この書類でさくっと終わらせてください!」

この書類は学園内の殿下とパーティーで殿下の腕にぴったりくっついてた令嬢との記録が書いてある。

将来王太子を支える役目を持つ予定の子息達と何故か殿下の腕にぴったりくっついてた令嬢の分もある。

この書類には令嬢に見せられない内容がある。



え?私?ドキドキしながら読みましたよ?

この報告書を書いた方は文才があると思います。



「さくっと終わらせる前にエドワード、ルーカスを呼んで来てくれないか?」


「かしこまりました」

エドワードは一礼すると部屋を出て行った。


「どうしてルーカスを呼ぶのですか?」


「ああ、もしもの時の約束をしていたんだよ」

ルーカス・フランシスはオリビアの2つ下の義弟だ。

私がお嫁に行く予定だったから、親戚から当主になるために養子になった子息なのだ。


この国は爵位を継ぐ事が出来るのは子息のみだ。

基本は嫡男が継ぐが、嫡男に適性がないと次男以降が継ぐ事もある。

令嬢しかいない貴族は婿入りをさせるか親戚筋から次男以降の子息を養子に迎える事になる。



コンコンコンッ



「ルーカスです」


「入りなさい」

父が入室の許可をすると扉が開かれた。


「ルーカスに吉報だよ」


「吉報ですか……?まさか…!」


「そのまさかだよ。パーティー会場で婚約破棄してくれたから、さくっと手続きしてくるけど、ルーカスはどうする?」

ぱあっと笑顔になるルーカスは私の前で(ひざまず)くと私の手を取った。


「オリビア、僕はずっと前から君が好きだった。養子の話が来た時にオリビアの婚約が無くなったら申し込む事を条件にこの家に来たんだ。オリビア、僕と結婚してくれないかな?」


「え……?ええ!?待って!それじゃあ私が断ったらどうなるの!?」


「養子の話がなくなるだけだよ?」


「ええ!?義弟じゃなくなるの!?」

こてりと首を傾けて悲しげに言うルーカスに私は驚いた。


「そうだね。オリビアに婿入りの相手を探されるから僕の役割はなくなるね」


「ルーカスがいなくなるなんて嫌よ!」

可愛い義弟がいなくなるなんて考えられないわ!


「僕は義弟じゃなく、僕の義姉さんでもなく…オリビアの婚約者になりたいんだ…ダメかな」

反対に首を傾けて、上目遣いで見てくるルーカスは、しゅんとした子犬の様に見えた。



可愛い。



「……!そうだわ!結婚したらルーカスとずっとこの邸宅に居られるわね!可愛い義弟も良かったけど、義弟とはいつか離れて暮らさないといけないものね。私はルーカスと婚約するわ!」

私の言葉にぱあっと嬉しそうな笑顔を見せるとルーカスは立ち上がり私を力強く抱きしめた。


「ありがとう!嬉しいよ!」


「ああ、良かった良かった。エドワード、この手紙を陛下に早馬で出してくれるかな」

父は2人の話の間に婚約破棄の手続きを明日するために登城する手紙を書いていた様だ。


「かしこまりました」

エドワードは一礼すると部屋を出ていった。


「オリビア、明日に陛下とさくっと婚約破棄と慰謝料の手続きしてくるから、そのままルーカスと婚約の話を(まと)めてきても大丈夫かな?」


「はい!お願いします!」


「ではこの紙にオリビアのサインをしてくれるかな」

父は机の引き出しから取り出した紙を机に乗せた。

ルーカスが腕を緩めてくれたので、机の上の紙を見に行くとそれはルーカスと婚約するための書類だった。

それを見た私は目を丸くした。


「ルーカスの名前と伯父様のサインがもう書いてあるわ」


「養子の話をした時に作った書類だからね」

思わず横を見ると満面の笑みをしたルーカスが私を見ていた。



いつか婚約破棄するとでも思ってたのかしら?

んー…()()殿下を知っていれば、予想してるかも?



私は目の前に出された書類にサインをした。

お父様も満足げに頷いているから、良かったのかも。

()()殿下と縁が切れる事が嬉しいわ。



次の日の朝。

お父様は意気盛んに王城へ行った。

あの様子では、さくっと話をしてくれるでしょう。

玄関でお父様をお見送りした私は部屋に戻った。


今日から王太子妃教育がなくなったので時間がある。

()()には王太子妃教育はあるが、昨日のパーティーの事を思えば行かなくてもいいでしょう。



さて。

何をしようかしら?



コンコンコンッ



「僕だけど入っていい?」


「ルーカス?どうぞ」

メイドがカチャリと扉を開けるとルーカスが見えた。


「今日からはもう王城に行かないよね?」


「そうね」

朝からゆったり出来るのはいつぶりだろう。

こうやってルーカスとゆっくり話すのも久し振りな気がするわ。


「一緒にお茶をしない?」


「いいわね!お天気もいいから庭でどうかしら?」


「花が見頃だからいいね。エスコートしてもいいかな?」


「もちろんよ」

メイドが一礼して部屋を出て行ったから、東屋に準備してくれるわね。

ルーカスにエスコートされながら庭へ向かった。


エスコートされて気付いたけれど、ここへ養子に来た時より随分と背が伸びているわ。

背が高くなったと思っていたけれど、横に立つとよく分かるわね。

可愛いと思っていた少年はいつの間にか青年に近づいているのね。


「どうしたの?」

チラチラ見てたのを気付かれてしまったわ。


「こうやって隣に立つ事がなかったなと思っていたの」


「王太子妃教育があったからいつも食事の時くらいしか顔を合わせてなかったからね」


「せっかく可愛い義弟が出来て嬉しかったのに中々時間が取れなかったものね」


「そろそろ可愛いは卒業したいかなぁ」

苦笑いのルーカスを見ると確かに端正な顔立ちは、可愛らしさも残しつつ美青年になってきてるわね。

背も私より頭1つ分は高くなっているわ。


「ルーカスは可愛いと格好いいがあるからいいのよ」


「僕って格好いい所あるの?」

ルーカスは驚いた様に私を見下ろした。

普段から可愛いしか言ってなかったものね。


「まだまだ可愛いが多いけれど格好いい所もあるわよ?」


「どんな所?」

期待の籠った瞳で嬉しそうな顔をして聞いてくるけど、その時点で可愛いわよ。


「そうね。格好いい所は…」


「格好いい所は?」

瞳がキラキラしてるわね。


「ふふっ私が知っていればいいことよ」


「えー…教えて?」

不満そうな顔をしたかと思ったら、こてりと首を傾けて聞いてくる。



…可愛い。



「格好いい所が可愛いよりも多くなったらね?」

仕草がまだまだ可愛いルーカスを見ていたいから教えないわ。



「……っ!………!!……!?」



「玄関からかな?」

ルーカスは後ろを振り向いた。

私達は玄関から出てそう遠くない場所を歩いていた。誰かの大きな声がこちらにも聞こえてきた。


「何かあったのかしら?」


「……っ!……!!……オリビア!!」


「…殿下?」

大きな声の主はこちらに向かって来ていた。


「昨日の婚約破棄はなしにしよう!シャーロットが正妃になるからお前は側妃になるように!」


「殿下。側妃にはなれませんわ」


「何だと!?シャーロットがいると言うのに、まさか正妃になりたいと言うのか!?」


「違います。王族のみ正妃が3年たっても御子を授からなかった場合に側妃を(めと)れるのです」


「え!?」


「それから婚約破棄はなしにはなりませんよ?」


何故(なぜ)!?」

どうして驚くのでしょうか。


「昨日のうちに早馬を出して、陛下に婚約破棄を了承したお手紙を出してますし、お父様は手続きをするために王城に行かれました」


「そんな…!!」

殿下はガクリと項垂れた。



これはご自身の立場がどうなるのか知ったのかしら?



「いや、まだ大丈夫だ。オリビア!オリビアから婚約破棄の話はなかったと父上に言ってくれるか!」


「どうしてですか?」


「オリビアと結婚しないと王太子になれないんだ!」


「シャーロット様はどうするのですか?」


「シャーロットは正妃に、オリビアは側妃になればいいだろう!?」


「いいえ。私が正妃になれない時点で、殿下は王太子にはなれません」


「そんな…!!」

殿下は地面に膝と手をついて項垂れている。


「殿下?私が婚約者だからこそ王太子になれた事をもしかしてご存知なかったのですか?」


「…オリビアだからこそ?」


「そうです。私を正妃にする為の婚約だったのです。私が婚約破棄されれば、殿下は臣籍降下か除籍されて王族ではなくなりますが…殿下?」


「倒れてしまったね」

殿下は、私の話の途中で意識を失い倒れてしまった。


「大変っ私はエドワードに部屋を用意してもらう様に言ってくるから、ルーカスは殿下をお願いできるかしら?」


「殿下を運べるから大丈夫だよ」

ルーカスはそう言うと、殿下をお姫様抱っこした。


「殿下ずるいわ!」


「え?」

キョトンとするルーカスに私は声に出していた事に気付いた。


「い、行きましょう!」

心の声を誤魔化す様に私が早歩きをしだすとルーカスも付いて来た。



美丈夫な殿下を軽々しく抱き上げたルーカスは力持ちなのかしら?

お願いしたらお姫様抱っこしてくれるかしら?



オリビアはお姫様抱っこされている殿下を羨ましく思いながらエドワードの元へ向かった。


「エドワード!殿下がキャパオーバーして倒れてしまったわ!部屋を用意してくれるかしら?」


「かしこまりました。客室にご案内しますのでルーカス様そのままお願いできますか?」


「大丈夫だよ。オリビア、殿下を客室へ寝かせたら東屋へ行こう」


「いいのかしら?」


「殿下が目を覚まされたら声をかけますので、お茶を楽しんで来てください」

エドワードまで放置宣言している。


「東屋に準備されてるだろうから、お茶しよう?」

ルーカスにこてりと首を傾けて言われたらオリビアも頷くしかない。



ルーカスの仕草が可愛くて何でも聞いてしまいそうだわ。



エドワードが客室のドアを開けるとルーカスが部屋に入り、エドワードが掛け布団を広げるとルーカスは殿下をベッドへ寝かせた。


「殿下が目を覚ますのが先か義父さんが帰って来るのが先かで話が変わるね」



ルーカスに言われて、確かに婚約破棄後にすぐ婚約する訳だから、殿下のダメージも変わるわね。



「さっきは臣籍降下とは言ったけれど、きっと除籍されるわよね?」


「だろうね」

殿下の行く末を案じるが、お父様が帰られない事には事態が分かる訳もないので、考えるのを放棄した。

なりたくもない正妃から解放してくれたポンコツ殿下には感謝するけれど、その先は私には関係無い事だものね。

ルーカスもエドワードもお茶を楽しんでと言っているのだから、そうしましょう。



マシュー殿下が10歳になった頃、殿下は周りからポンコツ疑惑を持たれる様になった。

子供らしさの可愛さで済まなくなってきていたのだ。

この頃はまだ王子が1人しかおらず、代わりはいなかった。

殿下の噂と一緒にこの頃からオリビアは才色兼備の令嬢として噂されるようになっていた。

もちろん王族はこの話に飛びついた。

しかしオリビアの父侯爵は大反対した。

ポンコツ王子では幸せになれないからだ。


マシュー殿下の顔は整っていた。

子供の頃から顔がいいなら、大人になれば美青年になるだろう。

政治や経済に関してはそこに立たせてサインさせるだけでいい。

正妃にすべて実権を持たせる。

才色兼備の令嬢でなければ国が回らなくなると陛下は侯爵に頭を下げたそうだ。


何か問題があれば即婚約破棄と慰謝料の請求をすると侯爵が言うと陛下はそれでいいと言ったので、侯爵はオリビアに有利な制約を交わした。

話し合いは2年続き、マシュー殿下とオリビアが12歳になった頃に婚約が決まった。

すぐに婚約にならなかったのは、侯爵は少しでも婚約しない状況はないか、必死に抵抗した結果だ。


マシュー殿下が13歳になると、王子が誕生した。

周りはとにかく喜んだ。

侯爵は王子の誕生を聞くとマシュー殿下とオリビアの婚約を白紙にするように掛け合ったが、問題が起きた訳ではないからと婚約は継続になった。


オリビアとマシュー殿下が15歳になり学園に入学すると、侯爵は婚約白紙を一度諦め、親戚からルーカスを養子に迎えた。

オリビアの2つ下のルーカスはとても可愛かった。

その為、屋敷中で可愛がった。

紳士らしさを見せれば褒めて、可愛い仕草を見せれば黙って悶えた。

オリビアだけは可愛いと言っていたが、ルーカスは恥ずかしそうにするだけだった。



「思春期の男の子に可愛いをたくさん言ってたのはイヤだったかしら?」

今までを回想していてふと思う。


「複雑ではあったよ。やっぱり可愛いより格好いいって言われたかったし」

ルーカスは格好いいと言われた事ないしとしょんぼりしている。


「格好いいは心の中で思っていたかったのよね」


「どうして?」


「いつかは可愛いがなくなるかもしれないし、可愛いは正義だからよ」


「正義……」

ルーカスは何とも言えない表情をしたが、オリビアは気にしなかった。


「あ!お茶の準備が整っているわ」


「タイミングが良かったね」

東屋に到着すると、メイドがお茶を用意しだした。

暖かくなりだした今の季節は花が見頃だった。

東屋の周りも花で囲まれている。

庭師の(こだわ)りか、花は色別に綺麗に剪定されていた。

座る場所で色を楽しむ事が出来る。


「夢じゃないよね?」

席に着くとルーカスは不安そうにしていた。


「何がかしら?」


「オリビアと婚約する事だよ」


「ふふっ夢じゃないわよ。お父様がさくっと話を進めてくれるわ」

殿下との婚約するまでに2年もお父様は足掻いてくれたもの。

ルーカスはお父様に気に入られているからすぐよ。


「ただいま、オリビア、ルーカス」


「『おかえりなさい』!お父様!早かったですね!」

お父様を席に案内して、お茶を出してもらった。


「書類は陛下のサインだけだったからね」

すでに必要事項は書いてあったそうだ。


「渋られませんでしたか?」


「除籍する理由が出来てホッとされてたよ。殿下は西の宮殿で一生を過ごす事になるよ」


「嘘だ!!」

声がした方に3人が顔を向けると息を切らした殿下が立っていた。

エドワードから聞いたのか、慌ててやって来たようだ。


「本当です。殿下は王太子になれないと陛下に言われませんでしたか?」

お父様が殿下に聞くと、殿下はビクリと肩を揺らした。


「オ、オリビアが側妃になればいいだろう!?」


「オリビアは側妃になりません」

お父様がバッサリと否定した。


何故(なぜ)!?」

ここでも驚く殿下。先程の話は頭に入ってない様だ。


「オリビアはここにいるルーカスと婚約したからです」

お父様はさらりと答えた。


「お前は浮気をしていたのか!?」

キッとオリビアを睨み付けてきた殿下は、自分の事は棚上げの様子。


「婚約破棄されてから求婚されたので受けただけよ」


「お、お前はそんな尻軽だったのか!?」


「尻軽なのは殿下の恋人では?他の側近予定のご子息とも仲が良かったではないですか」


「シャーロットは違う!!」


「ああ。そのシャーロット嬢は殿下と側近予定の子息を(たぶら)かした罪で修道院へ向かいました」


「え!?」

お父様の話に驚く殿下。

昨日の今日だから、処罰されるのが早すぎたのだろう。

殿下はシャーロット嬢の現状を知らなかった様だ。


「側近予定だった子息達も跡継ぎから外されて辺境の騎士団へ入団しに向かいました」

騎士の家系の子息でも辺境は厳しいだろう。

子息達は処分されに行った様なものだ。

陛下は昨日のうちに対象者を処罰するように各当主へ手を打っていたようだ。


「どうして!?」


「殿下を(とが)める所か、一緒になってご令嬢にうつつを抜かしていたからです」

側近予定としての行動ではなかったからだ。


「彼らはシャーロットと仲の良い友だっただけなのにか!?」


()()()()()()ではなかったからです」

(ふく)みのある言い方をするお父様ですが、殿下は気付きもしなかった。


「ああ、殿下の迎えが来ました」

お父様の言葉に殿下は振り向くと、エドワードが殿下の騎士達を連れて来た所だった。


「オリビアとの話がまだ終わってない!」

こちらに向き直った殿下の顔色は悪くなっていた。


「陛下との話が終わっているのです。殿下はこれから西の宮殿へ行くのです。王太子は弟君がなりますからご安心ください」

弟の王子はまだ小さいが、教育は順調に進んでいると聞いている。

婚約破棄した王子はひっそりと宮殿で過ごす事になるだろう。

お父様に引導を渡された殿下は、騎士に連れられて行った。


「殿下の周りは誰もいなくなってしまったわね」


「仕方ないよ」


「殿下の生活は裕福な平民の生活水準まで下げるそうだ。余った予算は予備費と貧困層の予算へ回すそうだよ」


「殿下は何も理解出来ずに生きていくのですね」

殿下は先程のお父様とのやり取りだけでは理解してないだろう。

西の宮殿は除籍された王子や王女が住む場所として建てられた場所だ。

王子だった場合は従僕が、王女だった場合はメイドが世話をする。

問題が起こらない様に騎士も同性になる。

同性が専属ですべての事を仕えるため、他の騎士や従僕、メイドよりお給料がよくなる。

殿下はその事もきっと知らないだろう。

生活水準が下がった事に文句を言っていそうだ。



ルーカスは可愛い義弟から婚約者へ。

私はルーカスが学園を卒業したら結婚するわ。






最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


誤字報告ありがとうございます!修正しました。

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― 新着の感想 ―
[一言] バカにも程がありますね!(笑) そりゃ父王にも見放されますわ〜。
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