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騎士令嬢は掴みたい  作者: まつまつのき
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第2部-9話「旅の序章」

遅くなりました。

ロサの話を聞いて、レウィス、ウェリタスは息を呑み、ルミノークスは口元を抑え唖然としていた。無理もない。プルヌスの正体も何も知らず、このような過去があったのだと誰もが思ってもみなかったのだから。私も話を聞いた当初は彼女等と同じ反応だった。闇の国から帰ってきて早々、このような話を聞かされるなど思ってもみなかっただろう。


―プルヌス達が仮称“神”と消え1ヵ月という月日が流れた。


あの日光の国へ満身創痍の騎士団の騎士共々帰国した私達に待っていたのは、宮廷魔法士の混乱と魔物の増加報告だった。どれほそ魔物が増加したかというと、あの大襲撃をゆうに超えるほどの魔物が各地で目撃されたのだという。数値で言うならば通常の5倍といったところらしい。各国からの情報は途絶え、国内の数人しか守護魔法士が常駐していない農村からの被害報告や周辺の準都市への避難誘導の指揮など指示を仰がれ、アルスお父様は国王陛下へ謁見するために緊急指令室として開放された謁見の間へと足早に去っていった。私達も手伝うべきであるが、まず現在の状況がどういうものなのか、そもそもプルヌスとロサの関係、世界についての話をロサへ問いたださなければならないと、詰め寄り得た返答はロサとプルぬsの関係の話とプルヌスの正体についてのみだった。現在の状況はロサが旅をしていた状況と同じようであるが断言できないと言われ、仮称“神”の女性―皆で神と呼びたくないので仮称“神”と呼ぶことにした―についての話については、首を横に振るばかりだった。


『自分が知っているのは、あれがこの世界の基盤を作り、この世界を嫌っているということだけ。でも、詳しい話を知っている人物に心当たりがある』


嘘などついていない真摯の表情で、更にこう続けた。


『わえ達は理解が及ばなかったけれど、君なら理解できるかもしれない』


私を見てそう言ったのだ。大精霊達に理解できないことが私に理解できるのか甚だ疑問であったのだが、ロサのどこか確信を得ている様な表情に頭から否定することができずにいる。

ロサから過去の話を聞いた後の日々は怒涛であった。

それもそうだ。

宮廷魔法士の中でも指折りの実力者であるプルヌスと錬金魔法の天才であり重鎮であったアルメニウム、遊撃隊として前線に出ることの多かったソルバリア、プルヌスの後継者とも言われたストゥディウムがいなくなってしまったのだ。特に宮廷魔法士の数は少なく、穴埋めをすることも容易にできない。現在落ち着いているのは、宮廷魔法士の指揮をインベルがしているということとロサの計らいで精霊教会の魔法部隊が手助けをしてくれているからだろう。

現在、精霊教会のお陰で何とか拮抗状態になっている。

騎士団の諜報部隊や斥候部隊による報告によると重傷者はいるものの命に別状はなく、国内において死亡者はいないとのことだった。他国については分からないが、先日全世界に散らばっている精霊教会の各部隊から連絡がきたようで奇跡的この光の国同様拮抗状態で死亡者はいないとのことだった。だが、いつこの状況が崩れてしまいのかが分からない。何か手を打たなければと思っているが何も思い浮かばないという不甲斐なさに胸が痛む。

現在のこの状況は恐らく続編の世界である。私は終ぞプレイすることは出来なかったが、ゲーム雑誌から軽く得た情報と合致する部分が多い。

続編の名前は『ヒストリア~~光の聖女と終焉の獣』であり、光の聖女フロースが光の精霊王と共に世界を救う物語。これは2作目の光の大精霊ルートをトゥルーエンドとしての続編であり、フロースと光の大精霊は恋人同士となり特別な契約をした後という設定だ。そして初代聖女が倒したとされている“原初の厄災”の獣が復活し、魔物が溢れ前作の仲間や新しい仲間と共に各国を救いながら進めていく。前作の恋愛主体のストーリーとは変わり、RPG要素を前面に押し出したその情報に色々な意味で話題になっていた。ほぼシリアスなストーリーと明記され、そのわずかな情報でも世界は数多の被害を被っているということが伺えた。

私が知り得ているのはここまでだ。なので、プルヌスがあのように“原初の厄災”であったこともあの様な仮称神がいるなども知らなかった。前のようにストーリーを先読みして行動を起こすということができない。

―ゲーム雑誌にあったような甚大な被害を私は防げるのだろうか。


「このような辛い話をさせてしまって申し訳ありませんわ」


ルミノークスの声ではっと我に返る。彼女は肩を落とし、視線も足元を見ている。ロサの顔色を見て、ロサにとってのプルヌスとも思い出は辛いものではなく楽しいことも多かったと分かったのだろう。だから、この状況に心を痛めているのはロサだと。


『いやいいんだ。黙っていたから、こうなってしまったし。謝るのはわえの方だよ』


ロサは眉を下げて笑う。その表情には僅かながら疲れが見える。その後ロサは私を見て『辛いのはわえだけではないからね』と私を気遣うような素振りを見せる。私は大丈夫だと、何も言わずに小さく首を振る。


「でも、2人が知り合い何て知らなかったわ・・・何度か顔を合わせていたのよね?」

『うん。プルヌスは大精霊と同等、もしくはそれ以上の権能、所謂高度魔法扱える。恐らくわえに感知できないほどの認識阻害の魔法をしていたんだと思う。はっきりとあのプルヌスだと認識で来たのは、1ヵ月前のあの日だったし』

「・・・そうなんすか。今のところ、原初の厄災としてこちら側に接触はしてきていないんすよね?」


レウィスがこちらに視線を向けてくるので、頷いた。


「そうだね。この前、フロースとアウィスと一緒に準都市を回って怪我人を治療してきたんだけれど、巡回中も何もなかったし。農村の避難誘導の補助をしているクラースも魔物が多いだけで変な敵もいないって言っていたよ」

「ノヴァ様とインベル様は?指令室ですの?」

「うん。ここずっとそうだね。彼の指揮は完璧だから国王陛下や私のお父様やクラースのお父様に交じって会議してる。インベルも宮廷魔法士の指揮官をしているしあの兄弟ホントすごい」

『でも彼等だって人間だ。倒れないようにしないと・・・フロースも今は休んでいるし、アウィスも結構きついんでしょ?アウローラも表情に疲れが見える。治癒魔法で治せるのは傷だけだよ』


ロサの心配はごもっともだ。報告の際に皆と顔を合わせるのだが、皆日に日に疲れが見えている。しかしながら、1人抜ければどこか食い破られる可能性が高くなってしまう。皆一様にそのような気持ちなのだろう。取り敢えず私はまだ頑張れると笑みを浮かべる。


「私は大丈夫だけれど、他の皆は結構きついかも・・・そうね何か、状況を打破できるものがあればいいんだけれど」


例えば広範囲に魔法を展開して魔物だけを消滅させるような魔法とか。大きな結界を作ってそこに人々を避難させることができるようになる魔法とか。だがそれは夢物語だとわかっている。空き時間に私も様々な魔法書を読んで探してははいるし、研究機関の方々、つまり研究のプロが探しても見つからないのだ。そのような物はないのだろう。

一時、村人全員を逃がすために宮廷魔法士数人がかりでその場にいる人間に対して強化魔法を使うという荒業をしたのだが、その後宮廷魔法士は生死を彷徨った。あの大侵攻で行たような大規模な防御魔法も人を集めればできなくはないが、一時しのぎでそれをずっととなると難しい。ちなみに都市を守っている防御魔法は数十人の宮廷魔法士が魔力を供給しそれを増幅させ防御魔法を展開している。だがその分防御は薄く大規模な侵攻が来ればもって1日といったところだろう。世界中全ての防御魔法を展開していない準都市や村に派遣できるような強力な魔法士も少ない。

なるべく少人数で、魔物の侵攻を抑えられるもしくは立てこもることのできる魔法などありはしない。


『・・・・』


ふと眉を寄せて考え込んでいるロサが目に入る。


「?ロサ?何か心当たりでも?」


私の声にロサは僅かに視線を彷徨わせて『あ、いや・・・』と呟く。何か言いたげな顔に詰め寄ろうとした瞬間、勢いよく扉が開かれ体が跳ねる。


「やっほー!せんせっいるー?」


底抜けに明るく溌溂とした声が部屋に響く。幼さの残る顔立ちに、目が覚める様な赤い炎のような髪。美しい深緑を思わせる宝石のような緑の瞳。あの時と同じ白と緑を基調とした帯の多い法衣を纏っている美しい少女・・・に見えるその人はロサを見るなり表情をあからさまに明るくし抱き付こうとする仕草をするが、その後後ろから何者かに蹴られてその場に顔面から倒れこむ。その足の正体は顔面から床に倒れこんでしまっているその人と全く同じ顔立ちをし、全く同じ法衣を身に纏っているフォリウであった。先の柔らかな表情をしていたその人とは打って変わって、いつも通り眉間に深く皺を寄せ苛立ちを露わにしながら口を開く。私は念のため、自らの耳を塞いだ。


「ちょっと兄さん!ノックはしなさい!」

「あららぁ。初めましての人が沢山ねぇ。こちらはトルンクスですよぉ。トルちゃんって呼んでね♪」


耳が痛くなるようなフォリウの怒声を無視して、床に突っ伏したまま顔を上げて笑みを浮かべるのは、フォリウの双子の兄であるトルンクス・アメテュストゥスだ。最初見た時は美しい少女だと思ったのだが、実際の性別は逆であった。柔和な表情とその四肢は女性的なのだが、本人曰く「見たいなら見せるけれど結構立派なのついているよ?」とのことだった。勿論、その誘いは丁重にお断りをした。ちなににその場にいた説明されたほぼ全員は驚き硬直してしまったのだが、クラースに至っては、アイツに関わるのはよそうと言わんばかりに私の肩を掴んで後ずさりした。そしてフォリウと彼の性格は全く逆なのだという。

ゴンっという鈍い音が聞こえ、トルンクスが小さく呻く。


「だーかーらー!話を聞けッと言っているだろうに!!」

「うー!いーたーいー!!」


駄々っ子のように喚き「せんせぇ!弟がいじめるー!」とわざとらしい声を上げてロサにしがみついた。呆れたような表情を浮かべたロサはため息をつきながら彼が満足するまで頭を撫でている。撫でられている彼はというと、満たされたような笑顔でロサに抱きついたままだ。その様子に呆気に取られていたアウローラ以外の3人であったが、一番最初に我に返ったルミノークスが額に手を当てながら困惑した表情を浮かべる。


「・・・えっと?わたくしの聞き間違いですわよね?」

「兄さん?フォリウ先生の・・・“兄”?」


レウィスの続けた言葉に、やはりそう思うよなと私は心の中で頷く。

本人は女性に間違われることを何とも思っていないらしく、私達が最初知った時も今もあっけらかんとした笑顔を受けべてロサから離れ、恭しく頭を下げる。勿論男性の礼の仕方だ。


「そうです兄ですよぉ。いつも妹がお世話になっておりますぅ」


声色もよく聞けば中性的で、顔を見ずに聞いたのならばどちらか分からないだろう。美しい礼儀作法にルミノークス達も慌てて様子で「これはこれはご丁寧に・・・」とまるで社交界のように頭を下げる。


「そして、妹共々せんせに造られた人形ですぅ」

「「「へ?」」」


一体トルンクスは何を言ったのだろうかと再び3人が硬直する。彼は重要な事をさらりと言ったりするので油断ならない。


「あー・・・それはこちらから説明する」


後ろでいらだった様子で壁に凭れ掛かっているフォリウがため息混じりに前に出る。トルンクスの前を通るときに彼の頭を苦シャリと撫でて、彼は嬉しそうに瞳を細めた。こう見ると、やはりフォリウは女性だが男性的、トルンクスは男性だが女性的な性格をしている。あえて、ロサはそうしたのだろうか。


「一言で言えばフォリウとトルンクスは人間ではないのだ。身体的構造は人間のそれとほとんど同じ、であるが、まず我等には心臓がない。心臓の代わりに・・・聞いたことがあるだろうか・・・精霊石というものを使用している」

「精霊石、というと小さな精霊が役目を終えて魔鉱石になった物・・・だったかしら?本で読んだことしかないけれど」

「そうだ。大精霊はその体が限界に近づくとその権能を引き継げる人間を探し出し、一種の契約、人間としての生を捨てる代わりに一つ願いを叶えることによって代替わりを行う。それは大精霊がこの世界にとっての柱であり、ひと時も“存在しない”という時間を作らないためであるのだ。だが小精霊は違う。彼等は大精霊の余った魔力から自然発生するものだ。意思はあるが、自然現象に近い。故に、自然に還る摂理となっているのだ。身体的限界を迎えた小精霊は自然に散るか、眠り、石となる。それが精霊石。高濃度の魔力が結晶化した魔鉱石や宝石化した魔晶石よりもその数が少なく、見つかることも稀だ。精霊石の研究は水の国が盛んで見つかり次第そこに送られることとなっているが、2つほど水の国の主と先生は知己でお願いして貰ったのだぞ。それを使ってできたのが我等だぞ」

「体は魔鉱石とか色々混ぜて錬金魔法で造られた人形で、爆発でも壊れないくらい丈夫なの。一応臓器もあるけれど、血管はなくて沢山の魔力を流す管が通っていて、魔力を帯びたものを経口摂取することによって活動できるんだよ。腕が切断されても、魔力が足りればくっつくんだよ」

「それを作ったのがロサ様なんすね」

「そうなの!トル君達のせんせ凄いでしょ!」


まるで自分の事のように胸を張るトルンクスにルミノークスがくすくすと笑う。

ゲーム内で出てこなかった設定だ。もしかしたら続編の方で語られていたのかもしれない。それにしても、だ。なぜここまで強い2人がいながらゲームの方ではルミノークスが犠牲になるしかなかったのだろうか。ゲームだからと言ってしまえばそうなのだが、何かが引っかかる。私が未来を改変した以外に決定的に今の状況がゲームの世界と違うような気がしてくる。もっと昔、過去から名に血が違うような感覚だ。しかし、歴史書を呼んでも私の記憶の中にある設定と全く同じで違う個所など見つけられなかった。もしかしたら見落としがあるのかもしれない。そしてその見落としの中に、ハッピーエンドの道筋があるのかもしれない。


「それで?なぁに悩んでいるの?」


純真無垢な子供の様に首を傾げているトルンクスは問いかけてくる。空いている椅子に座ったフォリウに抱き着きながら彼女の頭の上に顎を乗せている。フォリウは慣れっこなのだろう。全く動じず、静かに目を伏せている。寝ているのだろうか。

彼女等の姿が微笑ましいのだろう。頬を緩ませながら、だが僅かに困ったような表情でルミノークスが答えた。


「皆様が疲弊しない方法がないか考えているんですのよ」


「あー」とトルンクスは呟きながらフォリウの髪をいじっている。


「もってあと1週間ってとこだもんねー」

「「「一週間!?」」」


私とレウィス、ルミノークスが声をそろえる。その声の大きさにフォリウがびくりと体を揺らした。やはり寝ていたらしい。眠そうな目をこちらに向けながら、ややかすれた声で問いかけてくる。


「何も言っていないのか、ウェリタス・コラリウム。君の家の情報網ならわかっているはずだぞ?」


フォリウとトルンクスに注がれていた視線が一気にウェリタスに向けられる。バツが悪そうに視線を逸らす彼に私は詰め寄り、自分でも思ったよりも弱弱しく「ウェリタス、どういうこと?」と問いかけた。

彼は視線を揺らしてから乱暴に頭を掻き、大きくため息をついた。彼も話す時期を探っていたのだろうか。恨めし気にフォリウとトルンクスを見たが、2人はその視線に何も感じていないようにただこちらをじっと見ていた。暫しの沈黙の後、重い口をうぇりたすは開く。


「・・・あたしの家、コラリウム公爵家が様々なところに諜報員を送っているのは知っているわよね?こんな状況だから、5人いる姉が火、水、風、土、光、5つの国に各一人ずつ指揮を執っているの。姉さんたちの情報網はかなり早い。それでこそ、数分ごとに最新情報が入ってくるくらいにね。その情報は刻一刻と人が追い詰められていると分かるほどの状況が速いスピードで悪化している。さっきは言った情報だと、火の国の農村が一つ潰された。何とか怪我人だけで留まっているけれど、準都市も潰されるのも時間の問題。むしろよくここまでもっているのか不思議なくらいだわ」


ルミノークスが口元を抑えながら「そんな・・・」と呟く。ここまで切迫した状況だとは思わなかった。いや、考えないようにしていたのかもしれない。これでは世界が壊れてしまうのは時間の問題であるが、一つ一つ問題を解決していく時間もない。ゲームのシナリオが分からない以上は、私の知識も当てにならないだろう。

―一体どうすれば。


「だったら、マーテルとパテルに話を聞いてみたら?」


あっけらかんとトルンクスが言う。突然の提案に皆が驚いたのだが、フォリウだけは眉を寄せてすぐそばにあるトルンクスに振り返る。息がかかるほどに近いのだが、それでも構わずにフォリウは続けた。


「“様”は付けなければいかんぞ」

「えーだってトル達にとっては母も父もせんせだし」

「そのせんせを作ったのは誰だ?」

「あ、そっか。ならおばちゃんとおじちゃんだぁ」


明るく言うトルンクスに流石にロサは頭を抱えながら『怒られるよ』と呟く。あまりにも親し気に名を呼ぶのでもしかしたら別人なのかと思い、「あの、もしかしてそれって・・・」と私が問いかけるとトルンクスは元気よく頷いた。


「母なる大精霊マーテルと、父なる大精霊パテルのことだよ」


そんなあっさりと肯定するとは思えなかったので私達は顔を見合わせてしまう。私達にとってはこの世界を創造したという2柱の大精霊は遠い存在である。だが、精霊教会ではそんなことはないのだろうか。私の前にいた世界でも、教会の人々は神の存在を傍に感じていたようだけれどもそういうことなのだろうか。

様々な疑問が頭の中に現れては消えて行く。思考が定まることはなくぐるぐると回転していて混乱してしまう。そんな私達の様子など知らないで、ロサは彼と同じように『そうだね。知恵をお借りするか』などど簡単に言ってのけるのだ。ロサがこういうとなると、神託とかそんな間接的な物ではなく近所の物知りな人にちょっと話を聞く様な気軽さが垣間見える。思わず額を抑えながら、ロサ達に言う。


「え、え、そんなん簡単に?」

「ま、こんな状況だし目は覚めているだろうからいいんじゃないかな」


何ともまぁ気軽な事だ。レウィスが後ろで「そんな適当な・・・」と呟きながら呆れたように顔を横に振る。伸びてポニーテイルとなった髪がさらりと揺れた。


「どちらに行けばお会いできるんですの?」


ルミノークスが恐る恐る問いかけると、フォリウは笑みを浮かべる。


「勿論」

「「精霊教会」」


フォリウの声とトルンクスの声が重なる。声の高低が違うが、彼女等は同一の存在であることがよくわかる瞬間だった。

精霊教会は、前作、つまりは学園の事件を主体とした“ヒストリア~光と闇の聖女~”の内部でも言及されていた物だ。とはいえ、名前が出てどういう役割であるということと聖女認定の際にいたという記述だけで深堀はされておらず、現実にも精霊教会にまつわる本も数えきれるほどしかない。全国に精霊教会の支部はあるというのに。

あって当たり前の存在でありながら、中身は秘匿されている。それだけでこの世界にとってかなり重要なものだということが明らかだ。絶対的な安全な場所であるというのに、皆に緊張が走る。

手を差し伸べられているような視線を向けられて、息を呑んでから意を決したように私は頷く。


「・・・じゃあ行こう。精霊教会本部へ」


世界に安寧をもたらす旅は、こうして始まった。


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