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騎士令嬢は掴みたい  作者: まつまつのき
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第1部-56話「久しぶり」

ふと気が付くと、目の前には人の形をした光が浮いていた。一糸まとわぬ女性の形をしており、長い髪は地面に付くほどで血に広がっているのではなく光が大地に溶け込んでいた。

森の中、風が吹いているのにその光の塊は揺れることがない。

これは一体なんだろうと思った瞬間、それが何か理解する。

いや、私は元からこれを知っていて、これに会うためにこの時間のこの場所まで来たのだ。

全ての生みの母、そして、全てを見守る存在。

母なる大精霊マーテルだ。


『それで?本当にアナタはそれでもいいというの?』


子供の声のようであるが大人びた色を帯びたその声が光から発せられる。


「えぇ。今より最上の未来を掴み取るためなら」


自分の意志と反して私の口は動いて決意を示す。

光は頷くように動き、光の後ろにある真新しい教会のような建物を見上げる。


『ここが基点となり、貴方が巡り目を覚ますのはここになる。目印を置かなければあなたは道に迷ってしまう。だから目印を。貴女が持っているとても大事にしているその髪飾りと長きに渡り相棒としている光の剣をここに刺して』


私は腰に携えている光の剣と、ポケットにずっと仕舞っていた髪飾りを光の剣にぶら下げた。それは、私がクラースから貰ったものと瓜二つだった。違うのは、大精霊の石をはめる所がない所だけだ。


『契約は成った。では、私の手を掴みなさい』


迷わず手を伸ばして光の手を取る。


『すべてが終われば、貴女の体は私となる。それまでよろしくね?聖女の騎士様?』


私は全てが腑に落ちる。

誰よりも頑張ってきたのは君で、あの日私の手を掴んだのは、ずっと傍にいたのは。





水底から浮き上がる様な息苦しさと共に、意識が浮上する。だが息は切れておらず、ただ静かに涙が頬に伝うのが分かる。拭おうとしたとき、右腕が動かないことに気が付く。

そう言えば、腕を切られたなとやけに冷静な頭でそちらに視線を向けると、腕はそこにある。無くなっていなかった。ならなぜ動かないのかとアウローラは視線を腕の先へと動かしていくと右手は誰かに握られていた。ゆっくりと顔を動かしていくと、手を握っている人物は椅子に座りアウローラを見つめていた。


「クラー・・・ス・・・?」


すっかり乾いてしまっている口は掠れた声しか出ない。だが、そんな彼女の声でも彼は泣き出しそうな笑みを浮かべて手を握りしめてくれた。

そこで記憶が段々と蘇ってくる。

今ここにいる彼は自分が望んでいるから見えている幻覚ではないのだろうかと不安になり、アウローラは上半身を起こして左手で彼の顔に触れる。確かめるようにして、髪、目、口と手を滑らせていく。冷たくない、確かに生きている温もりを感じることができて、ぽろぽろと涙が落ちる。安堵と自分の所為で彼が傷ついてしまったという罪悪感から涙が止まらずにいると、彼はそっとアウローラを抱きしめた。


「大丈夫。俺は生きてるぜ」


彼の胸に頭を押し付けると、鼓動が聞こえてくる。

確かに、クラースは生きている。そう実感できて、涙が更に止まらずに声を押し殺して涙を流し続ける。そんな彼女を、宥めるようにして彼は彼女の背を軽く叩いていた。


『アウローラ!!起きたのか!!』


建物中に響き渡るほどの大声と共に扉が勢いよく開く。そこにいたのは、小さな姿ではないルシオラであった。すると、クラースとアウローラの姿を見て『あ』と小さく声を漏らして、次の瞬間彼の後ろからぬっと大きなハリセンのようなものが見えたと思ったらバチンっという大きな音共にそれがルシオラの頭に叩き落されて彼はバランスを崩して顔から転んでしまう。


『ノックしろっていったじゃないかァ!お前さんはどうしてこうも直情的何だい!?』


大きなハリセンのようなものはメンシスが吸っている煙草の煙で作った物らしく、パチパチと音を立てて消えていく。彼女は呆れ顔でルシオラを見下ろしてから踏みつけて部屋に入ってきた。


「アウローラ様!?起きられたのですか!?」


フロースの声が聞こえて次々と部屋に皆が入ってくる。誰もルシオラの事を気にしている様子もなく、気を使ったインベルとルミノークス、レウィス以外は全員踏んでいった。アウィスとロサに至っては、わざと踏んでいるようにも見えたが。最期に部屋を覗いたフェーリークは笑いながらルシオラに『大丈夫?』と声を掛けてあげている。


「怪我は大丈夫かい?」

「痛い所はないの?」

「気分悪いとかはないかしら?」

「腕は大丈夫ですか?」

「動いて大丈夫ですの?」

「俺達の事は分かるっすか?」

「魔力は戻ったか?」


矢継ぎ早に質問してくる皆にアウローラは目を見開いて呆けていたが、心配そうにこちらを見てくる皆の顔を見て一気に破顔する。クラースに抱きしめられながら声を題して笑い皆に対して手招きをすると、彼女等が近づいたところを見計らって大きく腕を広げる。一度に皆を抱きしめて腕が痛いが、それは嬉しい痛みだった。


「終わったのね?」


アウローラの問い掛けに、フロースが頷いた。


「はい。魔物は撤退しました」

「そう!皆、よく・・・よく・・・本当によかった!」


抱きしめられた皆は応えるようにしてアウローラを抱きしめ返す。それを大精霊達が後ろから微笑みながら見つめていた。暫くそうして、アウローラが離れるとクラースが彼女の髪をくしゃりと撫でる。


「でも、正直お前は危なかったんだぜ。赤い外套野郎に一騎打ちなんざしてよ」

「・・・ごめん。というか、クラース本当に体大丈夫なの?だって、あの時・・・」


あの時の光景が思い出されて胸が締め付けられるようにして痛む。思い出したくもないが、そういうわけにもいかない。

確かにクラースは倒れ、自分も右腕を失うほどの重傷を負った。だが、今クラースは元気であるし自分の腕も繋がっている。


「それについては、私とルミノークスからお話します」


フロースが胸に手を当てながらちらりとルミノークスの方へと視線を向けた。そこで、フロースとルミノークスからあの時の顛末や今までの事を聞いた。

ここは騎士団の医療施設でアウローラは丸2日寝ていたこと。魔物の襲撃の片付けと学園の総点検、残党探しで学校はあと数日休みになっており学園には誰も入れないこと。アウローラが誰かに操られたようにして赤い外套と戦っていたこと。その時すでにクラースは衰弱していたが傷は殆ど癒えていたこと。フロースが見た光景と、2人の聖女の力が解放されて赤い外套を捕まることができずに逃がしてしまったがかなりの重傷を負っているはずだということだ。


「赤い外套の行方は騎士団が追っているが、手掛かりなしさ」

「でも、赤い外套が派手に暴れてくれたおかげで、赤い外套の魔力パターンを宮廷魔法士が解析できたんだ。国内に入れば分かるように既に防御魔法に付与しておいたよ」

「流石ノヴァとインベルだね」


手放しにアウローラが褒めると彼等は照れくさそうにして笑う。

これで赤い外套が関わってくる事はないだろう。


「ところで、フロースとルミノークスの聖女の力ってどういう力なの?詳しいのは私知らないの」

「それに関してはこちらが説明しよう」

『そうだね。分かっている範囲になるけれど』


ロサがアウィスに近づいて彼の肩に手を置く。


「ロサと共にフロースとルミノークスが力を使う所を見たのだが、恐らくフロースの力は母なる大精霊マーテルに属する力、ルミノークスは父なる大精霊パテルに属する力だと推測できる」

『簡単に言うとマーテルの力は産み・育てる力で、パテルの力は還し・廻す力。だからフロースは魔力を人に与える力で大精霊の権能以上の治療したり強化したりできて、逆にルミノークスは魔力を無効化する力でマーテルとパテルの庇護下以外の生物を魔力に還したり魔法であればなんでもなかったことにできる。どちらも回数制限があるんだけれど』


ゲームでも確かにそれはあった。1回の戦闘で3回までとなっていたはずだ。

ロサは指で3を示す。


『回数は3回まで。それ以上は魔力が尽きて大変なことになる。発動条件もある野かなって思ったけれど、一度力を目覚めさせれば任意で使えるみたいだよ。コントロールの方法は、アウローラが寝ている間に教えたから大丈夫。力が暴発するってこともないし、その時用に装備品も作ったから安心して』


なんと手厚いことかとアウローラは「ありがとう」と礼を言うとロサは満足そうな笑顔を浮かべた。

ルミノークスとフロースの力は分かった。そこでゲーム内では表立って行動していなかった赤い外套が暗躍し、ルミノークスを闇の大精霊の体にして殺させた理由が見えて来た。

敵としては聖女二人が揃ってしまうと確かに分が悪い。回数制限があるとはいえ、ルミノークスは母なる大精霊マーテル達の庇護下にいない“厄災”から誕生した魔物にとっては直接的な死であり、全ての人間を直し強化する力を持った生の象徴たる彼女が一緒にいれば勝てるわけがないのだ。ならばどちらか二人だけでも殺さなければとなる。

赤い外套の目的は分かった。その目的を踏まえて、赤い外套はどんな人間を操ることを選ぶのか。

徐々に明らかになっていく犯人の正体。その影を捕まえるためにアウローラは考えをめぐらしていく。そこで、まずウェリタスに尋ねる。


「ウェリタス」

「何かしら?」

「魔物達の動向で気になったことはある?」


アウローラの質問にしばし考えた彼は「強いて言うなら」と呟く。


「魔物達、森に行かないようにしていたのよ」

「森って・・・あれか?ぎりぎり守護に入っている森か?」

「そう。守護があるからかなって思ったんだけれど、別に守護に入ったからって魔物が消滅するわけじゃないじゃない?魔物が侵入しないための守護だもの。しかも後方支援組が防御魔法を張っているとはいえあそこ薄くて数で押されればもっと難しい戦いになってたと思うわ。でもね、小型の魔物がそちらに行こうとするのをリーダー格っぽいの魔物が止めていたのよ。何かそれが不思議でね」


状況を思い出しているのか頬に手を当てながらウェリタスが言う。その言葉を聞いて、段々とアウローラの中に会った疑念が確信へと変わっていく。だけれど、まだ足りない。犯人候補は絞られてきたのだが、誰とは判断を付けるには情報が足りない。


「大精霊の皆は、お願いしたこと調べられた?」

『そりゃばっちりとだぜ』


ブイサインをこちらに向けてルシオラが笑う。


『言われた通りしっかりと闇の大精霊の痕跡を探してきたぜ』

『私が空になった学園の周囲、ルシオラが建物内、メンシスが俯瞰して調査したわ』

『その結果なんだけどねぇ。アンタさんの読み通り、闇の大精霊の痕跡が発見できたのさ』

「!ということは!」


彼等の言葉にアウィスが反応する。メンシスが頷き、煙草の煙を吐いた。


『あの子は学園にいる。集中しなければ分からないくらいに巧妙に地下に隠していてね。しかも、解除にかなり時間を要するくらいに何重に封印魔法を施していて、解除した途端魔法を使った本人が感づくっていう罠付きさ』

『でも、それは恐らくルミノークスの力で何とかできるわ』

「わ、わたくしですか?」


戸惑いの声を上げて自らを指さす彼女に、フェーリークが頷き返す。


『貴女の力は魔法の無効化も含まれているからできるはずよ。だから、今すぐにでも闇の大精霊を奪還できる。正直もう時間がほとんど残されていないと思うわ。どうする?アウローラ』


全員の視線がこちらに向いてくる。

早く奪還したいというアウィスの期待の眼差しが痛いが、アウローラは顎に手を当てて考え込む。

確かに赤い外套がこちらに接触してくる可能性が少なく、犯人が行動を決めあぐねている今行動を起こすべきである。犯人が誰かも予測は出来ている。だが、犯人の手の内が見えず、更には動機も分からない。動機が自らの命を顧みないものだとしたら、闇の大精霊奪還のための行動をこちらが起こしても危機的状況に陥る可能性が高い。

ピースが足りない。しかも、大事な部分のピースだ。これがなければどのような絵か分からないほどの大きなピース。頭の中を巡らせて考える。


―ここが基点となり、貴方が巡り目を覚ますのはここになる。


先程の夢の声が頭の中で響き、思い出した。

あの時の光景の場所。あれは見覚えがあったのだ。

何故だが、そこに最後のピースがあるという確信があった。


「皆。闇の大精霊を取り戻す前に、生きたいところがあるの。今すぐに」

「今かい?でも、動いて大丈夫なのかい?」

「それは大丈夫よ。ありがとう。ロサ、フェーリーク、メンシス、ルシオラ。4人には別の事を頼んでいいかな?」

『ん?オレ達は行っちゃダメなのか?』


予想が当たっているのならば、ゲーム内でストーリーに関わっていない彼等が同席するとどのような影響が起こるかが分からない。ここで皆を失ってしまうことがあれば、きっと立ち直ることは出来ないだろう。


「一緒に行った場合に君達にどんな影響があるかが分からないの。だから―」


おずおずと話すアウローラの頭を笑いながらルシオラが乱雑に撫でる。


『別に怒っているわけじゃねぇよ。お前がオレ達のことを案じていることは分かってらぁ!』

『そうよアウローラ。貴女が意地悪して仲間外れにする様な子じゃないことはわかってる』

『んで?アタシ等は何したらいんだい?』

『わえ等にまっかせなさい!』

「ありがとう。君達には、学園に異常がないかの監視とミールスに学園へ来てもらうように伝えてくれる?」


するとロサ達は口々に了解の言葉を言いながら、自らの属性の力を纏いながら消えて行った。


「じゃ。着替えるから少し皆待っていて」


ベッドから降りて検査着の様な簡素なワンピースを脱いで壁にかかっている制服へと着替えようとすると慌てた様子でルミノークスとフロースが男性陣を部屋の外に出した。

数分後着替え終わったアウローラが部屋の外に出ると、窓の外はまだ朝焼けが消え切っていない青い空が広がっていた。

壁に背を預けていたインベルが尋ねてくる。


「それで?一体どこに行くの?」

「・・・こっちよ」


アウローラは厳しい表情で歩いて行く。怒っている雰囲気ではない、どちらかというと緊張している様子に皆も静かにアウローラの背を追う。騎士団の医療施設だというのに、誰かが示し合わせているようにして誰ともすれ違うことはない。無言のままアウローラは歩き、とある場所に辿り着いたときノヴァが声を上げた。


「ちょ!ちょっと待て!ここって・・・」


ノヴァが声を上げるのも無理はない。アウローラが無言のまま歩いてきた場所、それは初代聖女の聖堂がある聖域であった。気軽に立ち入っていい場所ではない。


「ここで、あっているのか?」

「えぇ」


アウィスの不安げな声にアウローラは迷いなく返事をする。そして、足を踏み入れた。皆も恐る恐るといった風にしてアウローラの後に続いていく。

さくりという心地良い音が耳に聞こえてくる。短く切りそろえてある草は誰も手入れがしたことがないのだが、それでも誰もが歩きやすいような高さでずっとある。まるで、時間が止まっている様だ。見知った道のように歩くアウローラに対して、他全員はアウローラが何処に向かっているのか見当がつかず戸惑いながら歩いて行く。

いや、アウローラは道順を知っているのだ。体の奥底で知っている。


「ここよ」


アウローラがやっとで足を止めたのは、初代聖女の聖堂の近くにある泉を避けて更に林の奥へと進んだ先、初代聖女の聖堂よりも一見すると古ぼけている小さな聖堂であった。扉は外れかけており、よく見ると天井が朽ちかけている。


「何故、この区域で物が朽ちるのだ・・・?」

「どういうことですか?」


アウィスが腕を組み応える。


「この場所は母なる大精霊マーテルと父なる大精霊パテルの加護が強く二つの力が拮抗し合い、魔力がほとんど停滞している。有体に言って時間が止まっている状態に近いのだ。だからこの場所にある物は朽ちず、植物は成長をほとんどしないはずなのだ」

「だからここは聖域としてあまり立ち入ってはいけないとなっているんだね」

「でも、だったら何でこの聖堂はボロボロなんすか?」

「ここはその力が弱くなっているとかですの?」

「いいや。ここも他と同じような状態だ」

「その理由は今から分かるわ」


外れかけている扉をアウローラはゆっくりと開いていく。初代聖女の聖堂よりも遥かに狭く、こじんまりした中もやはり荒れていて、木で造られた長椅子は転がっている。落ちた天井からは朝陽が中に入り込み、苔も生えていた。正面にあるステンドグラスは何が描かれていたのか分からないほどにボロボロだ。

聖堂の中心に、それはある。


「ちょっと待って。何でアウローラちゃんの剣と髪飾りがあそこにあるの!?」


聖堂の中心には、アウローラが今も腰に携えている光の剣が突き刺さり、現に今髪に付けている髪飾りがぶら下げられていた。


「あぁ、やっぱり。やっぱりそうなのね」


戦いとかと無縁な世界からやってきてどうしてすぐに剣の腕が上達したのか、体が覚えていた魔法の使い方、時折胸の奥から湧き出る焦燥感と使命感。勿論前世のトラウマの影響もあっただろうが、それでも自分では説明できないほどの守りたいという意志。そして、ずっと感じていた誰かに見守られているという感覚への答えが目の前にあった。


「色々考えたんだけれど。どれが正しいのかな?」


ゆっくりと光の剣へとアウローラは近づいていく。


「こんにちは。初めまして。久しぶり・・・ねぇ。教えてくれないかな?」

『そうね。久しぶり、にしておきましょうか』


アウローラが光の剣に触れた瞬間、私は応える。

アウローラの体から私が離れ、彼女の目の前に形を形成していく。多分、今の私の姿はあの日全てをあの人に捧げた姿なのだろう。髪は短く切りそろえ、騎士の鎧に身を包んでいる私。


「アウ・・・ローラと、同じ顔?」


ぽかんと口を開けているクラースの顔が面白くて笑ってしまう。やはり、まだあの人と完全に同化していないからあの日の姿のままの様だ。とはいえ、今目の前にいる彼女よりは少し年上のはずであるが。若く見えるということなのか。それは少しだけ、嬉しい。ふわりと浮いていた足を地に付けて、久しぶりに自分の足で立つことに喜びを感じながら彼女に問うとあっさりとそう返答した。全く持って前世と変わらないほどに達観しているのねと言いたくなるが、それはきっと貴女は全く覚えていない。全て、くべてしまったから。


『やっとで、話ができる』


もう一度会えたら話をしたいことが沢山あった。でも、いざ前にすると言葉にすることができない。泣き出しそうになるのを必死で堪えて、笑顔を作る。


『やっとで、貴女に全てを伝えられる』

「君は―」


アウローラが自らが予想したことを言いそうになり、私は自らの唇に立てた人差し指を近づける。貴女が話さずとも、私が全てを伝える。私の罪、そして、貴女に全てを任せてしまったからこれが私の最期の罪滅ぼし。


『他の皆様は初めまして。私は全てを失い、全てを望み、全てを捨ててしまい、大いなる存在に助けを求めて自らを贄とし全てを踏みにじった愚かな騎士。名は―』


一息ついて私の友人と同じ顔の皆を見る。


『アウローラ・プラティヌムと申します』


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