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騎士令嬢は掴みたい  作者: まつまつのき
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第1部-37話「身支度」

陽が傾き始め、空が橙色に染まりつつある時刻。

プラティヌム伯爵邸の使用人たちは忙しそうにパタパタと屋敷の中を駆けまわっていた。

と、いうのも本日は王城にて聖騎士の儀式を記念するパーティーが執り行われるのだ。プラティヌム伯爵家全員とアウィスもパーティーに呼ばれており、前日まで屋敷には出入りする人が多かった。

アウローラは先日身内と友人のみのささやかな誕生日会を執り行われ、15歳となった。友人達の中では1年間で1番遅い誕生日であるので、皆と同じ年に成れたことを彼女はとても喜んでいた。皆から誕生日プレゼントを受け取ったのだが、クラースだけは「間に合わなかった」と深々と頭を下げて来て、代わりにとアウローラが気に入っている花束を贈ってくれた。それで十分なのだが、彼は不服そうであった。

あのアウローラが弱みを見せたあの日以降、友人達との仲は深まった。そして、落ち着いたアウローラは学園入学前にはこれから起こりうるだろう事柄を離すことを約束した。前世の事は、話せないと頭を下げた。

皆は大丈夫だと言ってくれたんだが、今もなおアウローラの心の中には申し訳なさがしこりのように残っている。別に話さなくてもこれから起こりうることには影響しないと思われるのだが、なぜか、アウローラとしては少しでも話しておかなければいけないような気がしてならない。


「・・・お嬢様。きつくありませんか?」

「え?あぁ、うん。大丈夫」


コルセットを締めているミールスが尋ねて来て、アウローラは我に返った。

ミールスにドレスを着つけてもらっているのだが、お茶会にもあまり参加しなかったために今だにコルセットは慣れることがない。とわいえ、前世よりも太りにくい体質であるアウローラの体が華奢のためそこまできついという気はしない。

ひもを締めたミールスは、ベッドの上に丁寧に広げられているドレスを持ち上げ、頷く。


「それにしても、ウェリタス様は本当に素晴らしい才能を持っているんですね。これほど美しいドレスを私は見たことがないです」


確かにとアウローラはそのドレスを見る。

全体はマリンブルーで裾に掛けてマリンブルーへとグラデーションがかかり、貝のように幾重にレースが重なっているマーメイドドレス。さらに、ドレスには星空を彷彿とさせるシャイニー素材が使われている。肩は露わになっているが、首元のレースのリボンに胸元が隠れる白レースが施されており、そこまで肌が露出しているようには思えない。上に着ている騎士服風の丈が短いジャケットは肩を出すように着て、胸の脇にある金色のボタンによって取り外し可能。

ウェリタスがこの式典の一か月前に全員分の式典服を作ってもらえないかと言われた時は全員が驚いた。というのも、彼は前々から自分が将来デザイナーをしたいということを父親に話したようで、ならば何着かデザインを描いてみろと言われたらしい。なので、せっかくなら皆のドレス等を描きたいということらしかった。

全員は快諾して、彼がデザインを持ってくるのに1週間。それを全員が見て気に入ったので、それを提出。父親もその熱意に観念して、公爵家お抱えのデザイナーに話を付け総動員で造り出した。本当は間に合わないのではないだろうかと全員が心配していたのだが、彼は爽やかな笑顔で式典の1週間前には完成していた。

ミールスに着せてもらい、全身を鏡でチェックする。


「見事に似合っている」


アウローラはフロース程ではないが可愛い顔立ちをしている。しかしながら、今回のドレスはとても大人っぽい。なので、デザインは気に入ったものの、ウェリタスには悪いが似合うかどうかは分からなかった。だが、彼の眼は確かなようだ。

鏡の前でくるくると全身をくまなく見ていると、隣でミールスがクスリと笑う。


「えぇ、とても似合ってます。さて!次は髪とお化粧です!ほら、ちゃんと座ってください」

「はいはい」


ミールスに促されてアウローラはドレッサーの椅子に座る。そして彼女は「失礼します」といって、真剣な面むちでアウローラの顔に化粧を施していく。


「アウローラお嬢様は美人ですからね。お化粧は薄く・・・」

「褒めても何も出ないから」

「いえ、本当に貴女は綺麗ですよ。さ、静かに」


囁く様なミールスの声に口を閉じる。

肌の上を肌触りのいいブラシが撫でるのがくすぐったい。

ふと、遠い昔のことを思い出した。

中学生の頃の話だ。母は子供の目線からしても綺麗で、何より優しかった。中学生に上がったばかりの頃、周囲が化粧品の話をしていた。当時友人達よりそういう話題に疎かったため、試しにやってみたらと友人達からサンプルを貰って来たことがあった。親に見られるのが恥ずかしく、親がいない間に使ってみたのだが、どれをどうすればいいのか分からずにいたら母が帰って来たのだ。何をどうすればいいのか分からないで試行錯誤したその顔を母は笑うことなく、次の休みに一緒に化粧品売り場に行き、丁寧に教えてもらったのだ。

今思えば、友人に聞くなり調べるなりにすればよかったのだが。

母にやってもらった記憶が蘇り、胸が苦しくなってしまう。


「・・・できましたよ」


ミールスの静かな声で目を開く。

先程よりも血色がよく見えるような感じがし、ナチュラルメイクであるが、気品がある。


「では髪ですねー」


何処か楽しそうにミールスが言う。

思わずアウローラはくすくすと笑いながら「楽しそうね」というと、彼女は笑顔で答える。


「楽しいですよ?私の手でお嬢様が綺麗になっていくのですから」


彼女の言葉に面喰ってしまい、思わず吹き出してしまう。


「なら、もっと綺麗にしてくださいな」

「えぇ。勿論ですとも」


お互い笑い合い、ミールスは櫛を持ってアウローラの髪を梳かしていく。

ミールスも美人であるので、今度自分も彼女をドレスアップさせてみたいものだと、アウローラは思った。ミールスは、幼いころから一緒にいるが、美人で大人の女性特有の落ち着きがある。


「ん?」


と、アウローラはミールスとの昔の記憶を思い出して、思わず声が出てしまう。


「どうされました?」


彼女に問いかけられて、アウローラは「なんでもないよ」と笑顔で返答する。すると、ミールスはそのまま静かにヘアアレンジへと戻っていった。


―そう言えば・・・ミールスっていつからミールスだっけ?


幼いころから一緒であるが、その頃からミールスは個の背格好だったような気がしてならない。しかし、それは幼いころの記憶であるので、記憶の補正というものがあるかもしれない。幼少期に見たものは、自分の背が小さいので周囲の人や物をとても大きなものという認識をして記憶に残ってしまうという話を聞いたことがある。いや、それ以外に思いつかない。

そういえば、とちらりと鏡越しにミールスを見る。彼女は黙々とアウローラの髪を編み込んでいた。


―ミールスの年齢っていくつなんだろ。


「できました!完璧です」


右手で汗を拭うような仕草をして彼女が言う。

アウローラは横を向いてみると、長い髪は三つ編みのように編み込まれ、右に流してシルバーの髪飾りで留められていた。

まるで結婚式の様だと思うのだが、あちらの世界ではパーティーは結婚式でしか参加したことがないので、祝賀会などのパーティーではこれが普通なのかもしれない。

ただ、ミールスの技術には脱帽する。どこからこのような知識を得たのだろうか。


「うん。流石ミールス」

「はい。では、そろそろお時間ですね。っと・・・」


ドアを叩く音が聞こえて、髪を見ているアウローラの代わりにミールスが「はい」と返事をする。すると、他の使用人が扉を開けて恭しく頭を下げた。


「アウローラお嬢様の馬車のご用意ができました。玄関先にて、アウィス様とクラース様がお待ちになっております」

「了解いたしました。あと少々お待ちいただくようお二人にお伝えしてください」

「お伝えいたします。失礼いたします」


彼はそう言って再び恭しく頭を下げて部屋を出た。

事務的な応対をしたミールスはアウローラに手を差し出し、その手を彼女は取る。そして、いつもよりヒールの高い靴に力を入れて椅子から立ち上がった。


「・・・そろそろですね」

「えぇ」


ミールスはアウローラの手をぎゅっと握る。

まるで今生の別れの様だと苦笑いするが、正直ミールスも気が気でないのだろう。

本日、前夜祭があり明日、アウローラの聖騎士任命の儀及び聖女のお披露目の儀が行われる。その準備のため、アウローラは今日から明後日まで城内に泊まる。本来なら、一人従者を呼べるはずだったのだが、今回の聖女二人については色々と危ない目に遭って来た為に、身元が判明し尚且つ十年単位で勤めたベテランの使用人以外は立ち入りを禁止されているのだという。それなら、ミールスも大丈夫だろうと思ったのだが、彼女は申し訳なさそうに「すみません」と謝って、城内に入れないとだけ言ってきたのだ。

抗議を使用としたのだが、恐らくアウローラが言えばノヴァとインベルは特例でも許可してくれる可能性がある。それは、世間の目的にまずいのでないのかと思い、ただ「わかった」とミールスに言うしかなかった。

そんな彼女は、儀式を見ることも叶わない。ただ、プラティヌム伯爵邸で待つことしかできない。

ミールの過去に何があったのかは知らない。だけれども、今まで傍にいてくれたことは事実だ。彼女が話したくないのなら、それでいい。

そこでふと、この前皆に言われたことを思い出して、少しだけ皆の気持ちが分かった気がした。

アウローラは、空いている手でミールスの頭を撫でた。ミールスは背が高いので、少し背伸びをしながら。


「ちゃんと帰ってくるよ」

「・・・はい・・・儀式に何も起こらないように、この場から祈っています」


時折、彼女は自分よりも年下なのではないのだろうかと思えるときがある。それは決してあり得ないことなのだが。安心させるように笑いかけると、彼女はどこか悲し気に微笑んだ。

さて、とアウローラはミールスと共に自室を後にする。

着慣れないドレスに歩きにくいのかと思いきや、流石というべきか、アウローラの歩き方も計算していたようで歩きやすい。玄関正面の階段へ行くと、玄関でアウィスとクラースが談笑しているのが見えた。


「アウィス、クラース」


ミールスに手を預けながら階段を降りながら、2人の名前を呼ぶ。2人はこちらへと振り返り、目を見開いて硬直してしまう。アウローラのいる場所からは良く見えなかったが、2人の顔は微かに紅くなっていた。

さて、2人の格好なのだが、アウィスはライトグレーのロングジャケットをきっちりと着こなし腰には黒く太いベルト、首元に見える白いシャツにはしっかりとレモンイエローのネクタイがしめられている。足元はライトグレーのスラックスに黒い川のドレスシューズ。彼がこの屋敷に来た当時よりも背丈が成長しているので、すっかりしっかりとした服装も似合うような背格好になっているようだ。

さて、クラースなのだが、アウローラも彼の姿を見て固まってしまう。

彼はパステルカラーのカッターシャツにレモンイエローのネクタイ。黒いベストの上には白い騎士服を思わせる大きな襟もとに所々金の刺繍が施されたロングコートを羽織り、肩の留め具でしっかりと固定されている。黒いスラックスに足元は茶色と黒のツートンカラーのサドルシューズ。腰には茶色い太いベルト。

その姿は、ゲーム内でヒロインと一緒にパーティーへ参加するサブイベントの時と同じ衣装なのだ。ネクタイの色やロングコートの袖に付けられているカフスの色が違うのだが、それ以外は全く一緒なのだ。ゲーム内では、ネクタイの色はフロースの瞳の色と同じ水色、カフスの色は白銀。今は、ネクタイがレモンイエロー、カフスがブルーグレーだ。

スチルと同じ姿で登場したために、少し感動してしまう。

2人に近づいたアウローラがじっとクラースを見ていると、彼は照れたように苦笑いを浮かべながら「何だよ」と少し不満げに言う。アウローラは我に返って首を左右に振って、にかっと笑う。


「かっこいいね。アウィスも、良く似合ってる。ウェリタスに見せて、お礼を言わないとね」


アウローラがそういうと、なぜか二人は少しだけ複雑そうな表情を浮かべて、頷いた。

何か不満があるのだろうかと首を傾げてから「あ」と小さく声を上げて、2人から少し距離を置いてくるりとその場で回る。


「これもすごいでしょ!」


子供の様に笑う彼女に2人は顔を見合わせて、頷き合っていう。


「良く似合っているぜ」

「あぁ、綺麗だ」


思ったよりも直球で言われて、アウローラの動きが止まる。そして、はにかみながら「ありがとう」と小さな声でお礼を言った。


「そろそろお時間です」


ミールスに言われて、アウローラは頷く。すると、クラースが咳払いをして手を差し出してきた。

婚約者っぽい、とアウローラは思いながら彼の手を取って馬車に乗り込む。


「そういえば、プラティヌム伯爵達はどうしたんだ?」


馬車に乗り込んでクラースの隣に座ってからアウローラは答えた。


「お父様とお母様は早めに行ったの。カエルム兄様とお爺様は城内の警備を手伝うから、前日から宿泊しているの。レウィスもカエルム兄様とお爺様に認められたから警備に入るって昨日言っていたよ」

「すげぇな」

「レウィス強くなったわよ。入学前に一度手合わせしてもらった方がいいかもね」

「・・・考えとくよ・・・それにしても」


クラースが馬車の小窓を覗き込む。


「アウィスの奴どうしたんだ?」


クラースに倣って小窓を覗くと、何やらミールスとアウィスが話をしていた。声は聞こえないが、何やら重要な話なのかアウィスは顎に手を当てて考えながら話をしている。すると、2人に気付いたアウィスがこちらを指さして、ミールスは頷いた。そして、アウィスが馬車に乗ろうとすると、ミールスが駆け寄って彼に言う。


「では、よろしくお願い致します」

「もちろんだ」


ミールスは深々と頭を下げて一歩下がる。そして、アウィスが席に着くのを見届けると馬車の扉を閉めて、御者に頷きかけた。すると馬の嘶きと共に馬車が動き出していく。


「ミールスに何を頼まれたの?」


恐らく答えてくれないと思うが、アウィスとミールスが2人で話しているところを初めてみたアウローラは問いかけずにいられなかった。すると、彼は少し考えてから小さく頷いた。


「簡単な話だ。あの聖女二人に関する事件が結構あっただろう?だから何もないように警戒をしておいてくれという話だ」

「・・・」

「なんだ?」

「え?あぁ、いや、その」


まさか答えてくれると思っていなかったアウローラは苦笑いを浮かべる。


「教えてくれないと思っていたから」


アウローラの言葉にアウィスはため息をついて、窓に顔を向けた。


「隠したところで、別にこちらに利益があるわけではないしな」


素っ気ない言い方であるが、少しでも自分たちを信頼してくれたと取っていいのだろうかとちらりとクラースに視線を向けると、彼は声を押し殺して笑い、そっと耳打ちしてきた。


「素直じゃないよな」

「そうだね」


2人で笑い合うと、明らかに不機嫌そうな顔でアウィスは言う。


「何だ?」


アウローラとクラースは首を振って、笑う。

城へ向かう馬車の中からは、機嫌の悪そうな声と笑う2人の声が外へ微かに漏れていた。





周囲を見渡して、私は深呼吸する。久しぶりにすることに、緊張している。

プラティヌム伯爵邸の裏手にある、私が個人的に使っている一角。自分の故郷の花や好きな花を育てている場所。庭に飾るほどの華やかさはないけれど、素朴なこの花々は私のお気に入りで、アウローラお嬢様も気に入ってくれていた。

薬草にもなるその花々の香りを嗅ぎながら、もう一度深呼吸。

ポケットから、赤、青、緑、黄色の純度の高く透明度の高い魔鉱石を取り出して魔力を注ぎ入れる。限界まで注ぎ込んだその石はひびが入り、割れる直前で空へと放り投げる。

魔鉱石は空中で霧散し、それを小精霊が拾い集めて散り散りにどこかへと消え去った。

数分後、湿気を含み、温かく、土の匂いが濃い、強い風が吹き荒れた。しかし、周囲の花々が散ることは無い。すると、その風は赤、青、黄、緑の色帯びて、人の形へと形成していく。少しして現れたのは、小さな姿をした火、水、土、風の大精霊だった。


「君から呼び出しなんて珍しい。どういう風の吹き回し?」


登場して早々風の大精霊は馴れ馴れしくこちらに問いかけてくる。これとは長い付き合いであるが、この感じには慣れることはない。大精霊になる前は、もう少し大人しかったはずなのだが。


「うるさいわね。その口縫い付けるわよ」


急ぎの案件の為軽口をたたき合っている場合ではない。語気を強く風に言うと、若干引き気味に「え、怖っ」と言いながら近寄って首を傾げる。


「怒っている?」


真正面から問いかけられて、私は額に手を当てて首を振る。


「虫の居所が悪いだけよ」


すると、水の大精霊が小さく手を上げて「あのー」と言ってくる。


「えっと、私は一応初めまして・・・なのよねぇ?記憶はあるけれど」

「オレは初めましてだな!事情は聞いたぜ!」

「こういう風に面と向かって話すのは久しぶりだねぇ。で?用事があるんだろ?」


続けて皆が話す。水と火は面と向かって話したことは無い。土とは、ほんの少しだけ共にいたことがあり彼女はいつもながらに察しがいい。話が早くて助かる。


「えぇ。一つだけ。何となく嫌な気配がするの。今日明日、王城に小精霊を配置して人が気付かない程度の防御魔法と遮断魔法を使ってほしいの」


私の言葉に火が「まじかよ」と言いながら腕を組んで眉を寄せる。


「おいおい。遮断魔法って今殆ど使われてないやつじゃねぇか。許可下りんのか?」


現在使われている魔法はほんの一部だけなのだが、遮断魔法は現代に生きる人々にとって“禁術”に指定されている魔法の種類の事だ。遮断魔法は有効範囲の“音”“気配”などを有効範囲外に感知されないようにする魔法だ。現代で言うところの防御魔法に分類される。しかし、これは一人ですることができず、魔力消費も激しいため“禁術”に指定されている。しかし、それは人間に限ってのことだ。精霊達にとってはその程度激しい魔力消費とは言えない。

とはいえ、現代で使われていない魔法を使うとなれば、母なる大精霊マーテルは許可してくれるのだろうかという疑問が浮かぶ。大丈夫だという確信が、私にはあった。


「大丈夫だと思う。あの王城にはアウローラも光の大精霊も聖女もいるんだから」


聖女は言うなればお二方の切り札であり、彼女等を通して世界に干渉できる“目”であり“手”である者達。彼女等が安全になるというのであれば、許可を得るだろう。それに、お二方から寵愛を受けている光を司る大精霊が内部にいる。彼には先程、パーティ会場のみに防御魔法を展開するようにお願いしておいた。光が動けばお二方も動くだろう。

アウローラお嬢様は、とある理由から特別な加護を彼女自身も知らずに受けている。それを、お二方は無下にしないであろう。


「あのアウローラって子、一体何なんだい?」


土の問い掛けに私は「さぁ?」と返答する。すると土は呆れ越えで煙草の煙を吐いた。


「さぁって・・・ミールス、アンタねぇ」

「一つ言えるのは、そうね」


お小言が始まりそうな土の言葉を遮り、私はすっと目を開いて微笑む。


「私の、大切な人よ」



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