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The Perfect Locked Room

作者: 沖野唯作

 『次の誕生日にお前を殺す』と、殺害予告を受けた大富豪・沼渡権三ぬまわたりごんぞうに依頼され、友人の建築家・高嶺礼たかみねらいが設計した立方体の家(通称:キューブ)は、たった一つの出入り口である鉄製の扉を通らなければ中に入ることができないうえに、誰かが屋内にいる状態で扉が閉まるとセンサーがそれを感知して自動でロックがかかり、その後24時間は何人なんびとたりとも鍵を開けることができない(内側からも外側からも)という籠城にはうってつけの建物であり、新鮮な空気を確保するための換気装置はもちろんのこと、椅子やベッドといった最小限の家具もあらかじめ備えつけられていて、一日程度であれば何不自由なく生活できるように工夫されていたので、沼渡権三の誕生日にあたる5月25日の0時0分、食糧と水を携えた沼渡が鉄扉の向こうに姿を消した時、家族や使用人たちは胸をなでおろし、扉の前で見張りの番についていた警備員の二人も、生存確認のために沼渡から三時間に一度送られてくる電気信号(キューブ内部にボタンがある)をのんびりとした気分で待っていたのだが、ついに一度も信号を受け取ることはなく、3時5分、警備員の報告を受けた沼渡の家族が、「即刻キューブを破壊して、権三さんを救出するべきです」という高嶺礼の提案に従い、高嶺が手配した解体用の重機でキューブの壁に巨大な穴を空けて中に入ってみたところ、傷一つない沼渡権三の死体がパネルを張った床の上に横たわっていて、「密室殺人だ!」「いいや、密室などありえない」「重機で壁を壊した時に、巻きこまれて死んだんじゃないか?」「それなら体に傷が残っているはずだ」と人々が激しく議論を交わす中、一人ほくそ笑むのは、キューブをひそかに無響室に仕立て上げ、音のない空間に沼渡を閉じこめることで彼を狂死させ、最後に壁を壊すことにより、キューブ内部が無響室であったという事実を隠蔽することに成功した建築家・高嶺礼。


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