1-④ 初めてのお泊まり 1st
週1が限界かなぁ…。
「ささ、どうぞどうぞ、汚いとこだけど。」
そう言う、ランスロットさんの家は物も少なく、汚いとこと言えば、机の上の本が散らばってるくらいだ。
「そんなこと無いです、めっちゃきれいです。」
「ははは、そう言ってくれて助かるよ。食べ物を作ってくるから、そこのイスに座ってて。」
指差したそこには、大きめのテーブルと二つのイスがあった。他にも誰か住んでるんだろうか。
俺がイスを見ていると、ランスロットさんも見て、俺が考えてることを悟ったようで、
「ん?あぁ、最初から二つ置いてあったんだよ。」
まぁ、借りてる家ってことだから、二つあってもおかしくはないか。
俺はイスに座って食事が運ばれてくるのを待つ。
10分ほどたって、食事が来た。パンとコーンスープ、それとハムだろうか?二人分ある。美味しそうな見た目である。
「はい、どーぞ。」
自分側に置いてくれる。
「ありがとうございます。」
「うん、どういたしまして。それじゃあまぁ、食べますか。」
ランスロットさんがイスに座ったのを見計らい、手を会わせる。
「いただきます。」
手前に置いてくれたスプーンをとる。そのときに、ランスロットさんと目が会った。なぜか呆けた顔をしている。
「『いただきます』ってなんだい?」
もしかして、この世界にはそういうかけ声というか、言葉?がないのだろうか。
「えーと、なんというか…、食材に感謝?するための言葉です…。」
「へぇ、自分の信仰してる神様にお祈りするみたいな感じかい?」
「多分、そんな感じです。」
「そうか、じゃあ俺もしようかな。」
ランスロットさんが手を合わせる。自分ももう一回手を合わせる。
「「いただきます。」」
今度こそ、スプーンを持ち、コーンスープを掬う。
うっす。
死ぬほど薄かった。というか味がしなかった。ちらりとランスロットさんを見る。美味しそうに食べている。
そこで、ハデスさんの顔をが思い浮かぶ。
『タナトス、受肉化すると骸の状態では無かった五感、まぁ視覚・聴覚は元からあるが、それを手に入れることができる。他にも欲求なども出てくる。ちなみに、味覚・嗅覚・触覚は最初はオフになってるぞ』
あぁ、そうだった。道理で匂いもしないし、味も無いわけだ。他にも何か言ってた気がするが思い出せない。
俺は頭の中で設定を変え味覚と嗅覚をオンにし、今度こそ食べる。
うん、おいしい。俺は、一気に食べ終えた。骸の姿のときには感じたことのない満足感がこの姿にはあった。
「そういえば、さっきランスロットさん信仰してる神様…とか言ってたけど、そういうのはいるの?」
「ん?あぁ、えっとね、俺は神様じゃなくて、妖精を信仰?してるんだ。」
妖精?妖精ってあの…森の?アレカ?
「『ニムエ』さんっていってね。湖の妖精なんだ。」
「にむえ?」
「そう。両親は早くに他界してね。ニムエさんの湖で子供の頃からお世話になっていたんだ。」
「じゃあ、どうしてここに?」
「成人したのを機に、独り立ちすることにしたんだ。一応、親は昔は高い位の人だったから、こうやって立派な家を借りれてる。そういうことさ。」
「そうなんだ。」
懐の剣をベルトから外し、自分の前に突き出す。
「これはそのとき貰った剣なんだけどね、最近見つかった鉄っていう希少な素材で作ってあるんだ。」
そのまま、鞘から剣を抜く。剣は水色の宝石が埋め込まれてる部分から折れていた。
「でもこの通り。ちょっと、ハメを外しちゃってね。」
そういう、ランスロットさんの顔はどこか寂しげだった。また、ハデスさんの言葉が思い浮かぶ。
『タナトスよ、恩には礼儀を持って返すもんじゃよ』
そう、だったな。うん。このくらいのことならしてもいいかもしれない。
「その剣、貸してみて、ランスロットさんが帰ってくるまでになんとかしてみるよ。」
ランスロットさんは目を丸くする。
「あ、でも…、そんなことできるのかい?」
「うん。」
「それに、この真ん中の宝石にニムエさんの魔法石が埋め込められてるんだけど…」
「大丈夫。それを使って作ればいいんでしょ?なんとかしてみせるから。」
「なんとかって………、よし、騎士に二言はない!信じて行ってくるよ!」
「期待しててね。」
「あぁ、じゃあちょっと早めに行ってくるかなぁ!」
そうして、皿を片付け、身支度をした。といっても、さっきとったマントをつけただけだが。
「いってらっしゃい」
「うん、行って来ます」
ガチャン
ドアが閉まる
「さてと、さっそく始めますか。」
まずは、外装、折れていてわからないがロングソードのようだ。うーん、やはり想像出来ない。
ふと、埋め込まれている宝石、いや魔法石?を見る。どうやらランスロットさんはこの石を大切にしていた。大事なのは、この石っぽそうだな…とりあえず魔法石より上の折れてる部分を自分の鎌で真っ直ぐ切断する。
ちなみに、鎌は買うと金がかかるという理由で、《創剣》で作った。
剣じゃない?なら、クリエイトウェポンにするかな。
そんなことはどうでもいい。
魔法石なら属性がある筈だ。水色、ということはやはり水だろうか?
そこで一つ想像が浮かんだ。この魔法石の魔法を随時発動型にして、抜刀…抜剣?するときに水で剣を形づくるのはどうだろうか?
試しに、庭に出て作ってみた。失敗した。
鞘から出した瞬間水が吹き出た。これでは循環せずにすぐ魔法石の保存水量を超えてしまう。それに、まとまりもなく、剣とは言えなかった。
それから数時間、試行錯誤をして、水浸しになりながらも剣を作成した。
「これで5作品目…」
剣を創るとき、魔力の消費量によって強さが変わる。。今回で最後にしようと、自分の7割の魔力を使って剣を創る。
抜刀する。今度は水の威力が強い気もするが、ランスロットさんくらいの力なら大丈夫だろう。水は細長いロングソードの形で循環しており、保存水量を無駄に消費せず、仕上がっている。
ためしに、そこらにある石を投げてバッティングしてみる。
すっぱりと切れた。そういえば前世にも火災を沈下するときに放水するヤツで、ガラスを割れるとも聞く。案外そういうものの類ですぐ想像出来たのかもしれない。剣を鞘に入れる。と、そこで
「おーい!そこで何をしてるんだー?」
良いタイミング、これもイケメン補正というやつだろうか、やっぱり他にもイケメン補正はあった気がするけど、どうにも思い出せない。
「見てこれ!さっき作った剣!」
「え?それが?」
剣を渡す。
「意外と軽いな。」
「まぁ、抜いたらわかるよ。」
「そうか。」
そのまま、ランスロットはその剣をベルトにつける。
「抜かないの?」
「あぁ、抜くのはどうしても戦わないといけないときだけって決めてる。」
おぉ、かっこいい。
「じゃあ、そのときがきたら、感想いってね。」
「わかった。」
「っ、というかびしょ濡れじゃないか!」
「え?あ、確かに」
自分は触覚をまだオフにしてる。理由は痛覚と今は一緒になってるからだ。痛いのは嫌だ。そのせいで、暑さや寒さは感じないし、人の温もりというものもわからない。
「そろそろ日が暮れる、その姿だと風邪を引くぞ?そうだ!実は最近水魔法を使って『風呂』というものを作ってみたんだが、一緒に入らないか?」
「風呂?」
前世で聞いたことがある。確か棺桶みたいなとこに水を入れ、熱して暖かくしてその中に入る奴だ。
今は無き日本人の血が騒ぐ。入りたい。
「まだ誰にも教えてないんだ。きっとすぐ気に入るよ。」
「うん。」
その後、部屋の中に入り、「脱衣場」みたいなとこに入る。先にランスロットさんは準備をするといって、「浴室」に入った。ちょいと脱いだ物を確認したが、下着みたいなものは着ていなかった。
俺も服―――と言っても、ボロボロの布切れ1枚だけなのだが―――を脱いで、浴室に入る。
このとき気づけば、こんなことにならなかったのかもしれない。もしも、俺が触覚をオンにしていたら、自分の身体の異変にも気付いたのかもしれない。
それでも気づけなかった。自分の事を、そしてイケメン補正には「ラッキースケベ」があると言うことを…。
自作が気になる人はいるでしょうか、まぁそんないい感じにはならないかと、