1ー② 個体値鑑定屋(壱)
ちらほらと、登場人(神)物が増えて参りました。
どうもニャ。あたいの名前はニャルソンと申します。
天界の中央広場から見て東の道を2つ進んだ店にあたいの店を設けています。ニャ。
そこでは主にお客様の個体値を鑑定させてもらってますニャ。家に代々受け継がれる秘宝、鑑定石(LV,828)を使うことによって『なんかよくわからないモノ』がピカッて感じからヒュヒュヒューンで、その人の個体値、及び能力を平均から逆算して導き出しているニャ。
ちなみに、鉱石や魔法石、剣などの相場、レベル(鉱石にはないですが)なども鑑定できますが、わざわざ天界まできて物の価値を鑑定してもらう人は少ないので、実質、ほぼ個体値鑑定屋となっておりますニャ。
さてさてそんなことを言ってる内に、今日最初のお客様が………。
カロンカロン
「すいませーん、もう開いてますかー?」
「はーい、開いてますニャー!」
「あぁ、良かった。俺昨日までずっとずっと、ずぅーーーっと、ヘラクレスのもとで稽古してたんだけどさ、もう、その稽古がハードったらなんの!、いやーー、そのかいあってこんな筋力もついたし、《狂戦士化》も手に入れたし、なんて言うの?終わりよければ…まるっと、解決?みたいな?まぁやっぱり俺はやれば出来る男?ってカンじ?この筋肉で数年前俺を降ったヘ…」
「あぁー!もうながったるいニャ!そんなことより要件はなんニャ?、自慢か?自慢だけなのニャ?!うちはそういう商売はやってないニャ!」
男はハッとしたように我に返る。
「あっ、わりぃわりぃ。簡単に言うとだな、俺の個体値を鑑定してほしいんだ。」
そんなこったろうとは思ってましたニャ。まぁ、お店に来たんだからそれしか無いだろうけど。
「わかりましたニャ。個体値、ということはLv,500に解放なので…えっと、7000Gになりますにゃ。」
「んー、もうちょっと、負けてくれねぇか?」
「ダメにゃ、これも商売ニャ、ニャンにゃらそのバーサーカー?ってやつのレベルもみてやるニャ。」
「んー、なら仕方ない…な、よし!男に二言はねぇ!」
さっきの言葉はなんだったんニャ。
そういい男は、1000Gの貨幣を7枚取り出した。
「まいどありニャ。それではさっそく個体値を計測するので、こちらに座って手のひらを出すニャ。」
「こ、こうか?」
「そうニャ。」
出された腕に鑑定石を乗せ、その上に紙を押し付ける。
「『投影』…ニャ。」
そう言うと、ピカッと光ってこの部屋から一瞬、影という影が光により上書きされなくなった。
石の上にある紙を取り、内容を確認。見たところ失敗はしてないようだ。
下の表は、一応、重要なとこを整理して説明とか省き、さらにいろんな計算して防御力などよくわからないものもいれた内容ニャ。メタ発言?そんなの知らんニャ。
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アレス(Lv,653)
物理攻撃力→65万2400
物理攻撃緩和力→89%
魔力→2100P
魔法攻撃緩和力→65%
推定ヒットポイント→約100万
推定肉体的回復量→約毎秒1万
推定魔力回復量→毎秒50P
特殊スキル…狂戦士化
Lv,6(最大10)
(身体能力、胴体視力)3.4倍
(魔法威力、魔法緩和力)0.5倍
持続時間6分
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後は他の能力とかも書いてあった。
ちなみに、それをそのままお客様に見せるわけではないニャ。さっき相手が頼んでお金をもらったところの内容だけを言うのである。ニャ。
「えぇーと、まぁこんなところかニャ。」
そういうと、物理攻撃力のとこから魔法攻撃緩和力のとこまでの4つと、特殊スキル《狂戦士化》のレベル、能力のとこをちぎって渡した。後は個人のプライバシーにかかわるので、早急に処分した。
「おぉ!やっぱり去年よりも一段と、いや二段と?!強くなってる!やっぱり俺はやれる男だと思ってたんだよね。なんたって俺はあのヘラク…」
「あぁ、ごちゃごちゃうるさいニャ!用が済んだら帰るニャ!」
そういい、半分押し出すような形で、店から放り出した。
「ふぅー、まったく調子にのりおって…、これだから戦好きの脳なしは…」
「あのー、すいません…」
ぶつぶつそんなことを言ってると、少し怯えながらこちらを見上げる1人の少女がいた。
見た目は完全に幼い。
「どうしたんだい?迷子(神)になっちゃったかい?ニャ?」
「えっと、その…これの鑑定をして欲しいんですけど…」
そういい、ピンク色のワンピースのポケットから取り出したのもまた、ピンク色の石だった。厳密に言うと、ピンクダイヤだった。
「私、ペルセポネっていうの。この石を売って、お花さんたちの肥料を買いたいんだけど、いくらで売れますか?」
ペルセポネ、あぁゼウスの子供さんか。これは丁寧に扱わなければ、死んでしまう…。
「ちょっと、その石見して貰えるかい?」
そういい、手にあるピンクダイヤを優しく受け取る。そしてもう一度みてみる。
見たところキューブ状だからどんな形も作れるから用途は広い。大きさも手のひらよりくらいのビッグサイズ。これは、あきまへん。
「うーん、このサイズになると10億Gは軽く逝くわ…」
予算オーバーや、あきまへん。
「どこの店いってもね、無理だって、潰れるって、もうここのお店しかないの、だから…」
少女は泣きそうである。あわわ、泣かしたら吊し首や、なんとかせぇへんと。
「わかった!わかった!から、ね?よーし、ちょっと、ちょーーーーっとだけ、待っててね?」
「うん…」
執行猶予を貰い、その隙に、全ての通信手段を使い、ピンクダイヤの買い取り場所を探した。このときもしかしたら初めて生きるために頑張ったかもしれない。ニャ。
そして、一件、買い取り場所が見つかり、しかも高額で引き取ってくれるコレクターと繋がって首の皮一枚でなんとかなった。
「うん、大丈夫ニャ。じゃあこれ、小切手。使い方わかるかニャ?」
「うん、大丈夫。」
「ニャら、細かいことは言わないで大丈夫だね。じゃあ、これは貰い受けるね。」
「うん、ありがとうございました。」
そうして、その少女、ペルセポネは帰っていった。
…ふぅ、人生で一番高い買い物をしたニャ。まぁ、数時間後には自分の物ではなくなるけど。でも少しは、というか3000万Gくらいは儲けになるので悪くない話だ。
カロンカロン
おや、またお客さんが来たようだ。今度は…なんと、骸骨が来たではないかニャ!…なんてね。
「いらっしゃいませニャー。おっ、タマトスさんじゃないですかニャ!」
「いや、タナトスだから。そんなバレーボールの技みたいな名前じゃないから。」
彼はタナトス、見た目は骸骨でその骨格はとても綺麗な形をしている。と言っても本人が言うには、受肉化すると身長が縮むからこの骨が自分の物なのかはわからない、そうですニャ。
2ヶ月前くらいからここに来始めて、今ではすっかり顔なじみとなっており、2割ほど代金を安くしてあげるほど、気に入っていた。
タナトスのつっこみを無視し、言う
「それで、今回はなんの鑑定かニャ?やっぱり個体値かニャ?」
「うん、一応この後、一仕事あるから早めに頼む。それとジョブスキルで二つほど新しく手に入れたからそれのレベルとかの内容も知りたい。」
「はいはーい、それじゃ、ええっと…8000Gになりますニャ。」
「今回もハデスさんに請求しといてくれ。」
「りょーかい。ニャ。」
こんなんでハデス様怒らないのかな…。まぁ、ゼウス様の娘もダイヤを簡単に出すし、お金持ちの神様の懐の深さは未知数だニャ。
そんなことは置いといて、すぐさっきと同じ作業と詠唱をし、紙の内容をちらりと確認し、それを見てため息をつく。
そしてタナトスに切った紙の一部分を渡した。
「さんきゅーな。また後で。」
「またお越しくださいニャー。」
そして出口に向かうタナトス、しかしドア付近で足を止めた。
「なぁ。」
「ニャ?」
「人類みな平等だなんて言うけどさ、本当に平等なのは死ぬことだけなんじゃないかな。」
「急にどうしたニャ。臭いニャ。」
「うるせーよ。…またな。」
そういい、彼は扉を開けて出て行った。
「変なやつだニャ。」
次の話に一応、個体値をだしております。