転生、そして死。
あれは3ヶ月くらい前の出来事だったと思う。いや実際はもっと経っているのかもしれないけれど、
年は13か14くらいで、それ以降の記憶はない。
よく覚えていないが、僕は社があって、森が広がった所にいた。その夜は満月だった。赤い月。生暖かい風、木々のざわつく音、それは恐怖よりも、心地よさと猛烈な眠気を誘うものだった。眠い。どこか横になれるとこは――。
そこには大きな木の中身をくり抜いたような物が転がっていた、何に使うかは分からないが、僕はそのくり抜かれた穴に誘われるように中に入り肉体の制御を止めた。
それが、原因なんだと思う。
突然、目蓋を閉じてでもわかるほどの光が当たりを包んだ。
とても暖かかった。
こんな温もりを感じたのいつぶりだろう。
そして、まるで聖母のような包み込むような慈愛に溢れた優しい声が聞こえた。
「……、……。で…す。起きて、あなたは選ばれたのです。」
ん…もうちょっとだけ…このまま…
「もう、仕方のない子ですね…。」
そう言った優しい声はまるで本当の母親のように聞こえて、目を瞑ったまま自然と疑問に思ってたいことを聞いた。
「ねぇ、ここはどこなの?」
その声は答える。
「ここは天界です。と言っても、あなた達がいる世界の天界とは違う天界です。あなたは選ばれたのです。もしあなたがこのことを受け入れるのなら、元の世界にはもう帰れないかもしれません。きっと辛いことでしょう。でもこればっかりは今は亡き想像主のご意志、どうか怒らずに聞いていただけませんか?」
「ううん、怒ってないよ。それになんだかここはとっても温かいんだ。今まで辛いことばっかだったし、…もう疲れちゃったんだ。」
「そうですか…。ですが、ここにいるのもほんの少しの時間だけ、あなたにはこの世界の地上界へ転生してもらいます。」
「この世界の地上界?」
「えぇ、その地上界、《シトラス》は過酷で溢れています。世の中は荒れ、人々は飢え、かつて栄えてた大都市は分裂し、戦争が各地で起き初めています。」
「そこで僕は、何が出来るの?」
彼女は答える。
「あなたはその世界の調停者になっていただきたいのです。」
それはまだ10代前半の子供には重すぎる頼み事だった。
みずしらずの人がいる世界で、右も左もわからない場所で、人々をまとめ上げるなど普通なら到底不可能なこと、それは誰にでも明らかであった。
彼女は静寂となった空間でまた口を開く。
「しかし、それはさぞ大変なことでしょう。それでももし、この頼みを聞いていただけたなら、あなたには能力を授けましょう。」
「ちから…?」
「はい、私の召還者としての最後の魔力を使い、貴方に力を授けましょう。それは素質、性格によって形を変え、貴方の心にそった能力になることでしょう。それをどのように使うかは人それぞれでしたが…。」
「それぞれ…?他にも自分のような人がいるの?」
「はい、今は私1人になってしまいましたが私のような者が、選ばれた素質のある人に力を授け、転生させるのです。」
「そんな力を貰っても自分には何も出来ないかも…」
「そんなことはありません、きっとあなたを助けてくれる物になるはずですよ。」
「そっかぁ。…うん、精一杯頑張ってみるよ」
そういい、少年は覚悟を決めた。
そして、
時は来た。
「……時間のようです。貴方とはここでさようならです。どうか貴方にたくさんの出会い、そして創造主「t$"o #s」の祝福があらんことを…。」
最後の言葉はうまく聞き取れなかった。
魂の転生…確認。
肉体生成……完了。
魂と肉体の結合…完了。
次に能力の創制…召還者からの魔力的補助により、最高位能力の獲得…完了。
――――《万物創造神》、獲得。
最後に能力付与…………………………………………………………失敗。《万物創造神》、生成不能、《創剣》に変化。新たに、虚無を獲得………………………………………………能力使用種類に制限。分裂した能力の分散を確認。……神経がうまく繋がらず断線、染色体の4から12、14から20番に異常発生。五感の全てがほぼ……………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
その後のことはよく覚えてない。
いや、それ以前のこともよく覚えてないが…。
それからどのくらいが経ったんだろうか。長いような短いような。気がついたら、…気がついても頭は正常とは言えなかったが、かすかに光が見えた。横に寝そべっているんだと思う。ほんの少しだけ、固い地面に寝そべっているような感触があった。
周りには人がいた。人々は突如現れたであろう自分を取り囲んでなにやら話していた。ふいに宙に浮くようになり、それが持ち上げられたことだとわかるのに数秒かかった。
その後俺は、どこかの家に入れられ、皆がせわしなく動いていたのを感じた。冷たいものを頭に当てたり、自分に何か飲ませようとしているのがわかった、多分自分をなんとかしようとしていたのだろう。
それが薄れゆく意識とかすむ目で視れた最後の光景だった。
あぁ、失敗したのかな。もう死ぬのか…。まだなにもしてないのに、あの人に誓ったのに、…あれ、そういえばあの人の名前聞いてなかったなぁ。
自分は目を閉じ、体の制御を放棄した。心が、折れた。
その直後。
何か自分の首の周りに冷たい何かがまとわりつくような感覚があった。それは、まるで魂ごと首を刈り取ろうとするような何か。
それが転生してからの人間としての最後の記憶となった。
少しずつ内容が改正されていきます。