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転生したけど死んだので死神になりました  作者: 1st
<[ヘルセト]>王都死神狩り編
15/18

1ー⑩ あんなコト (おまけ)

ピチャン、ピチャン

 水のしたたる音が聞こえる。


 暗い。だが、その暗さは目を何かで隠されたことでの暗さだと気づく。


 ガシャン、


 手を動かそうとすると、鉄と鉄が当たる音がする。両手が後ろに回されて、拘束されているようだ。


 手に纏わりつく金属は冷たかった。しかし、床に溜まった水はどこか生暖かい。気のせいかもしれないが、若干スライムみたいな感触だ。


 ここはどこだ?なんでこんなとこに…。というか今俺なんで『受肉化』してるんだ?というか男の姿になってるような…


ポタン、ポタン


 と、そこで急に何者かが水浸しの床を歩く足音が聞こえた。


ポタン、ポタン


 次第にその足音はこちらに近づくことがわかるほど大きくなってくる。

 何者かが歩いてできた水の波動が自分の太股に当たり、なんだか変な気分だ。


 その足音は自分の近くまで来るとピタッと止まる。


「あなたが、タナトスくん?」


 女性の声だ。声質は高い方だが、その声は妙にトーンを低くしているようで、なまめかしかった。


「だっ、だれ?」


 声が裏がえる。


「さぁねぇ、…自分がなんでここにいるのかわかる?」


 女性は俺のローブの中に手を入れながらそう言う。どういうことだ?なんで受肉化してるんだ?それに男だし…というか触覚はオフにしておいたつもりだったのに、ちゃんと触覚もある…。


「あっ…ぐっ、わか…ない、、。」


 思わず声が出てしまう。


「そっかぁ、それじゃあ、、、『監視者(ミルモノ)』って、言えば…わかるかなぁ?」


 監視者(ミルモノ)…、そう言えば『神の名の下』地上界を監視してるっていう…。はっ!

 ハデスさんの言葉が思い浮かぶ。


『うむ。『寿命付与(ギブハート)』というのは我ら―――死神は人の魂を()り、残ったその体の寿命を自分の寿命として補っているのだが、逆に人に自分の寿命を分ける力だ。しかし監視者(ミルモノ)に見つかると、こっぴどく叱られるので、使うのはオススメ出来ない。…あんなこともう二度とされたくない…。』


「あっ…。」


「あ、やっと思い出した?」


 そうだった。なぜ忘れていたのだろう。

 俺はやっと事の重大さに気く。


「じゃあ、まぁそういうことだからぁ。覚悟し・て・ね?」


 艶めかしい声を発しながら、さらにその女性は後ろから覆い被さってくる。


 ヤバいヤバいヤバい。なんかいろいろな意味でヤバい。あ、でも別に出るとこは出てないというか…、いやなんでもない。


 俺はこれから何をされるのかという恐怖と、少しの期待を自分がいることに気付く。

 何を考えてるんだ俺は。聞いた話だと、ある死神は法を犯し、果ての世界でほぼ永久に追放されるとも言う。これは本当にまずい…。なんとかしないと、、。


 その女性は俺の顔に手を添える。その手から溢れる甘い匂いに鼻孔を刺激される。

 その瞬間。


 バッ。


 急に視界が明るくなった。といっても、目隠しを取られただけだったが。


 えっ?


「なーんてね。ちょっとふざけすぎたかな。びっくりした?」


 後ろから覆い被さっていた女性が手錠ような物を外し、いたずらっぽくそういう。

 俺の前に出てくる。


 155cmくらいだろうか?見た目は紫の髪でボブ、その白い肌は一種の神々しさを出しているが、この部屋―――無機質な壁、簡素な椅子、薄く赤くなっている温い水が滴る空間―――の中にいる彼女はどう考えてもただの可愛らしい人には見えなかった。


「それとも…もしかして何か期待しちゃった?」


 そうニヤニヤしながら言う彼女のメンはヘラっちゃってるのだが、心を見透かされたようで何も言い返すことが出来なかった。


 余談だが、メンヘラ=ボブという偏見があるのだが、他の人はどうなんだろうか?

 自分の中ではメンヘラは色的にいうと紫=ボブ、ピンク=ツインテで落ち着こうとしている。


「まぁ、今回はそんな重大なことはしてないし、初めてだから見逃してあげるよ。でもまぁ、ハデスちゃんみたいに、やり過ぎないようにしてよね?そのときは…まぁ、いろんなコトを、ね?」


 何があったんだろうか、ハデスさんそんな問題を起こしたのか。というかいろんなコトってなんだ?後でハデスさんに問いたださないと。


「あの…、」


 俺は声を出す。出そうと思ってた声より意外と声がでなかった。


「…あなたは誰なんですか?」


 その女性は目を丸くする。


「それって、名前を聞いてるのかな?」


 首を縦に振る。


「んーと、名前はそうだね…ヘルセト、とでも呼んでよ。」


「ヘルセト…。って、え?ヘルセトってあの…、街の名前じゃ?」


 俺は問う。

 王都アヴァロン。その第13区の名前はヘルセトであるはずだ。


「うん、私は13区の監視役だからね。一応どこの所属かわかるために、監視下の町の名前を名乗ってる。君は?」


「自分ですか?えっと…一応13区担当のタナトスって言います。」


 そう言うと、彼女は目を細め口を吊り上げる。

 彼女の涙袋は普通の人と比べると大きく、目を細めると、(しずく)のようにこぼれ落ちてしまうのではと思ってしまうほどだった。


「そっかぁタナトスちゃんかぁ!13区を担当してるってことなら、ずっと監視()てられるね!」


 彼女は手を合わせ嬉しそうに跳ねる。


 えぇと、…それはなんというか…非常に困る、、。


「それは、ちょっと…。」


 と、そういった瞬間、


 さっきまで嬉々としていた彼女の顔が一瞬で変わる。それは勿論悪いほうでだ。


「なんで?どうして、ダメナノ?私にミラレルノソンナニ嫌ナノ?」


「いっ!いや?!別にそんなことないです!!」


 とっさに否定する。ぶっちゃけこの世界に来てから一番一生懸命な気がする。

 死に瀕してる人ほど生を実感するというのは本当だな。


 そんなことはどうでもいい。彼女―――ヘルセトは、またもやパッと表情を変え、嬉しそうに言う。


「そう?良かったぁ!じゃあ、これからもよろしくね!『タナトス』ちゃん!」


 もう勝手にしてくれ。

 顔から嫌な汗が垂れる。


「じゃ、じゃあ俺はこれで…。」


「まって。」


 俺がこれ以上いるとヤバいという本能に従い去ろうとする。しかし、それをヘルセトは許してくれなかった。


 俺は恐る恐る振り向く。


「今回のことは、水に流すことにしたけど、君の性格的に、何度も同じことをしそうなのよね。そういうの嫌いじゃないけど。」


 ヘルセトは舌なめずりをする。背中…背骨に悪寒が走る。


 彼女は続ける。


「一々、注意されるのも嫌でしょ?だからそういうのぜーんぶ、免除してあげるよ!…その変わり、1ヶ月に一回くらいはここまでキテホシイナァ?」


 自分に選択肢はなかった。あるにはあるが、それを許さないと目が言っている。怖い怖い。


「うん…喜んで…。」


 口角を釣り上げ俺はそう言った。


 俺は心の中で深く息を吐いた。

(お色気回では)ないです

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