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Chapter7 ⑤


こちらに歓声を上げる兵士たちを見て、カルネが手を叩いて笑う。


「ほらほら大人気だよレイ君。ね、手ぐらい振ってあげようよ」


「いやその……この姿、本当に外に見えてないの?」


「大丈夫だいじょーぶさっきも言ったっしょ」


「でも……」


裸に毛の生えたような……いや毛はまだ生えてないけどそういう事じゃなくて、ともかく裸とたいして差のない服装に、恥ずかしさで顔が熱くなる。


服装にはさっきからちょっとした変化があった。


両手両脚に、鳥の翼のような意匠が施された手甲ガントレット脚甲グリープがはまっている。

カルネが言うには、これをつけている間はこの機装、〈ダイタンオー〉というらしいが、とにかくこの機装は僕の動いたとおりに動くんだそうだ。


「でもカルネ、これやたら重い気がするんだけど」


さっきから動きの邪魔になっている手足の鎧を目で示す僕に、カルネは当然だとばかりに肩をすくめる。


「しょうがないよ。

 ダイタンオーは全高約12メートル……40フィート近くあるんだ。

 物は大きくなると動きのスピードが遅くなるから、この子がキミと同じ動きをするためには三倍半もの時間がかかるんだよ?

 その重さは、スピードを合わせるための重しだと思ってあきらめて」


手足の鎧についてはカルネの言葉どおりにあきらめるとして、今のカルネの説明で一つだけ合点がいったことがある。


いま、僕は大通りに立っている。

もちろん機装の中なんだけど、それでも僕は大通りの石畳を踏んでいる。


ただし、通りの幅は記憶にある15ヤード(13メートル)ぐらいではなく、いいとこ5フィート(150センチ)ぐらいしかない。

両側の三階建ての商家にしたって、屋根がようやく僕のお腹に届く程度だ。


何が言いたいかというと、今の僕はカルネが言った身長40フィートの巨人の視点に立っているということだ。

街並みは手の込んだ模型にしか見えないし、足下の人たちにいたっては片手で掴める人形と同じだ。


「でも不思議と高さは感じないね」


「それはそうだよ」


僕の独り言にカルネが振り向く。


「距離感なんて身体の大きさ次第だからね。不思議なことは何もない……

 っと、来たよほら!」


カルネに言われなくても、足下のアデルたちの慌て方でわかる。


ゆっくりと(それでも精いっぱいなんだけど)振り向けば、中央広場の方から近づいてくる黒い機装が目に入った。

生身の時は大きく感じた敵の機装も、この視点では子グマぐらいにしか見えない。のっそりした動き方も、いかにもクマめいていた。


「チンピラ機装ちゃん、誰にケンカ売ったか教えてあげるからね」


白いうなじを見せてカルネが気色ばむ。

ちなみに彼女の乗る鞍は常に僕の正面に来るようになっている。

おかげでうなじだの背中だの、小ぶりでキュッと締まったお尻なんかが常に目の前にあるわけで、これはちょっとした目の毒だね。


「エッチなこと考えてないで、ブルトガング構えてほら。

 うかうかしてたら敵さん突っ込んできそうだよ」


「あ、うん」


僕は手に持つランス、銘はブルトガングというらしい、を敵めがけて構える。

カルネはさっきと同じく鐙(彼女はスラストペダルと言っていた)をぐっと踏み込む。

カカシ騎士にしたように、ランスで踏み込み攻撃を仕掛けるつもりだろう。


その時、耳の後ろをぞわりといやな雰囲気が包む。

これは……


「カルネ!」


「うん、どこかに……いた!」


カルネが頭を振ると、空中に真四角の鏡のようなものが浮き上がる。

カルネによれば遠眼鏡の親戚らしいが、そこに見覚えのある人物が映し出された。


小柄な黒騎士。

鎧はボロボロと剥がれ、一昨日のように全身を血と黒いもやが包んでいる。

背景の屋根がけっこうな速さで流れているのは、彼女が屋根伝いに走っているせいか。


「しぶといなぁ、あの爆発で生きてたか」


四角板の遠眼鏡が、黒騎士の動きに合わせて右側面から正面へとやってくる。

大写しになった黒騎士は仲間の機装に飛び移り、その大口のようなのぞき穴からするりと操舵宮カンツォの中へ入る。


次の瞬間、機装の割けた口が血しぶきを吐いた。


「えっ!?」


「んのゃろう、味方殺して機装を奪いやがった!」


カルネの言葉を証明するように、黒の機装は二、三度身震いすると、突如としてその動きを変える。

低く身を沈めるなり、子グマどころかイノシシも真っ青の勢いで突進してきた。


「あんなのとやり合ったら街が壊れる!

 レイ君、あいつをぶん投げるよ!」


「了解!」


ランスを腰のレストに引っかけ、突進に応じるように腕を広げる。

ちらっと見た後ろでアデルや兵士たちが逃げていくのを確認して、僕は腰を下げて黒い機装を迎え撃った。


黒機装は飛び込む寸前に大きくジャンプし、両腕のかぎ爪を広げる。

紋章のライオンなんかがよくやる姿だ。


大きく開いた両腕が眼前に迫る、その瞬間。


「今だ!」


カルネの合図で手を突き出し相手の胸元、というかアゴの下を掴む。


「せいっ、りゃぁ――――っ」


そして全力で街の外へ、城壁との間に広がる畑へと投げの姿勢に入る。

カルネが合わせてペダルを蹴りこみ、突進した時と同じく僕の、つまり機装の背中から突風が吹きだす。


三回使えば慣れたもの。

僕は風の勢いを得て、黒機装を押し上げて宙を舞う。


「そこだっ!」


飛び上がりの頂点で投擲。

相手の機装は畑の黒土めがけて飛び、頭から柔らかい大地に突っ込んだ。


こちらはカルネの手綱さばきで姿勢を戻して、少し離れた場所にふわりと着地。

ところが畑の土が軟らかすぎるのか、あるいはこっちが重すぎたか。

足がズブリと沈み込み、たちまちくるぶしまでが埋まってしまう。


「ととっ、カルネ?」


「対地面の調整するからちょっと待って!」


カルネが手にした取っ手をガチャガチャと回して何かをしているが、その視線の向こうでは黒い機装が起き上がってこちらに振り向く。


「……向こうは待ってくれないみたい、だよ!」


僕の言葉が終わらないうちに、再び黒機装が動き出した。

足が沈むのは向こうも一緒らしいが、長い腕を生かして四足獣のように駆け回るのでこちらより動きが速い。


再び突っ込んできた相手をランスを持って打ち払おうとするが、身をひねって躱された上にかぎ爪の一撃を頭にもらってしまう。


衝撃と鉄を打ち合わせる轟音。

叩かれた顔がひとりでに横を向き、殺しきれない勢いで上体が揺らぐ。


「こ、のぉ!」


カルネが再び風を呼び、僕は倒れる寸前でどうにか持ちこたえた。

背を押す突風の勢いを借り、何とか当て身を喰らわせて黒機装を押し飛ばす。


雷のような音を残して、再び彼我の距離が開いた。


なんとか仕切り直したが、そう何度も対処できるかはわからない。

土に足を取られる上、動作が重すぎて身軽さ重視の僕の剣はほとんど使えない。


しかも身体を動かせば動かすほど、なぜか身体から力が抜けていく。

正直あと数撃いなせばへたばってしまいそうだ。


「カルネ、長くもちそうにないよ」


「んな事言われても〈眷属〉憑き機装相手に生半可な攻撃は……あ、そうか!」


再び突っ込んできた敵をランスで弾いた僕の前で、カルネが取っ手から手を離して指を宙に滑らせる。


光で描かれた紋様が、彼女の指を追って浮き出した。

白と黒の差はあるが、めまぐるしく形を変えるそれは黒騎士の見せた模様によく似ている。


カルネはそこから何事かを読み取ると、小さく拳を握る。


現象固定効果術式ヴィルクンゲレトは機能してる。

 集中現象調律機ヘイムダルも使える。

 よしレイ君、一撃でいけるよ!」


「一撃?」


「〈騎士〉の、〈神衣〉の力を使う技、〈神殺し〉の技がこのダイタンオーには備わってるのさ!

 その名も〈神姫兵装しんきへいそう〉。

 相手が〈眷属〉なら、たった一撃であの世行きにできる!」


カルネが高らかに吠え、空中の紋様に手をかざす。

紋様が翼を広げた鳥のような姿に変化し、その中央にぽっかりと穴が開いた。


にぎった拳を、カルネはその円めがけて振り下ろす。

ところが……


『神姫兵装は使用不可です。残〈想素ヴァーネルム〉が不足しています』


あのダヴの声が、不快な音と共にカルネの手を止めた。


「は? 何でよダヴ!

 一発分ぐらいは残してたじゃないか!」


『不足しています』


冷静なダヴの声に歯ぎしりするカルネに、別の方向から声がかかる。


『管理者、今は我が主の生命維持に多くの力が使われている。

 我ら全ての蓄えを持ってしても、一撃の〈神殺し〉には足りん』


「〈騎士〉かい? 

 それってレイ君の身体再生するのに使っちゃったって事だよね。

 くっそー、リチャージしたくても戦闘中じゃ時間が……」


カルネが頭を抱えるが、その間にも黒機装が迫ってくる。


何とかランスでいなしているが、打ち据えても大したダメージにはなっていないどころか、与えた傷はたちどころにふさがってしまう。

カルネいわく、機装には再生する力があるのだとか。


とにかく何か手がないと体力が限られているだけこちらが不利だ。


先ほどダヴは〈想素ヴァーネルム〉が足りないと言っていた。

その言葉には聞き覚えがある。

カルネが説明していた時に聞いた人の想いの力……そうか!


「カルネ、僕の力は使えないかな。

 人間には〈想素〉があるんだろう?」


「あるけど……わるぃ、キミのはもう使ってるんだよ。

 〈御使い〉になった時から、君の〈想素〉はこっちにも流れてる。

 それでもリチャージが間に合わないんだ」

 

「なら、僕からの分を増やせばいい!」


「増やせなくは無いけど……って何考えてるの?」


大きく息を吐いて目を閉じた僕に、カルネは怪訝な声を向けた。


「想いの力、それは願いや願望、それに欲望だって君は言った。

 なら僕がみんなを守りたいっていう願い、いや欲望だって力になるはずさ。

 〈騎士〉を呼んだ時のようにやれば、できなくはないはずだ!」


「それはそうだけど、でも一人の人間にそこまで……」


カルネの声が聞こえたのはここまで。

瞬間、僕から全ての音が遠ざかった。



 ***



心の中に、胸の奥底に呼びかける。


今度の願いは死にたくないでも、助けたいでもない。


僕の願いに僕は入らない。

僕自身を捨て一心に人を守りたいと、ただそう願う。


その願いを力と引き替えにする。


『我が主、一つだけ忠告だ』


どこか遠くで〈騎士〉がささやく。


『我得を望まぬのはいい。

 されど自らを外に置いては願いは願いたり得ず。

 全ての願い、全ての欲望は、良くも悪しくも人そのものによって成る。

 努々忘れるな、自らを捨てる者に応える力はない』


わかったよ〈騎士〉。


そういえば関係ないけど、君ってけっこうおしゃべりなんだね。

ちょっと雰囲気と違うけど、僕はそういうのは嫌いじゃないよ。


ふっと暗闇を揺らして彼女が動揺するのが伝わってくる。


『ちゃ……茶化すでない!

 ど、どれ、我が再び〈絆〉となろう。

 我が主の願い、しかと〈機装〉と〈管理者〉に届けてくれん。

 さぁ、心の底から叫べ我が主!』


暗闇を透かして僕には見える。


アデルが、

シンディが、

ニカが、

兵士が、

生徒が、

街の人たちが、


そしてカルネが。


その全てを守る。

自分の勝手で助けるのではなく、ただ彼らがあるがままにあるために。

彼らのあるがままを守るために。


「僕は守る力を欲する!」



 ***



闇が吹き払われた。

気づけばほんの一瞬のことだ。


「……の力は無いからって何これ!?

 この膨大な〈想素〉……これ全部レイ君のもの!?」


目を開ければ全てが光に包まれていた。

カルネも僕も、宙に浮かぶ紋様も、そして風景までもが眩しく光輝いている。


「何を願ったのレイ君……」


「いつか教えてあげるよ。さぁ、これで決着をつけよう!」


『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』


僕の声に、空気を震わせる雄叫びが重なった。

総身にあふれる力にダヴ、いやダイタンオーが叫んでいる。


「ああもう! ボク以外のみんなで盛り上がっちゃってさ!

 でもその通り、さぁダヴ、仕切り直し行くよ!」


今や不死鳥のように赤々と燃え上がる紋章の中央に、カルネは今度こそ拳を叩き付けて叫ぶ。


神姫兵装起動アクティヴィム

 音階初段装填トーノ・シュターテムズィーカイト和音選択(アコード)守り手の突撃(ヘイムダルスラスト)〉!」


『〈神姫武装:守り手の槍(ブルトガング)〉選択。バレル開放シーケンス始動、安全装置を解除』


ダヴの声に合わせて、僕の手の中でランスが形を変える。


護拳バンプレートが花のように開き、縦に走る装飾溝フルーティングから槍全体が開いていく。

その内側からは青く輝く一回り小さな槍が姿を現し、外装が展開しきった瞬間、その長さを二倍に伸ばした。


こちらの変化を覚ったか、黒い機装がランスの穂先がら逃げようと身をひねる。


「逃がすかよっ、アレイスティング・テイザー!」


カルネが取っ手に生えた引き金を引く。

槍から青白い電撃が放たれ、それがまるでヘビのように黒い機装を締め上げた。


「今だよレイ君、トリガを!」


「わかっ……あれっ?」


ランスの握りに現れた引き金をしぼろうとするが、固くて全く動かない。


『我が主、槍の名は銀閃貫徹ぎんせんかんてつなり。

 しかと狙いをつけて打て!』


〈騎士〉の声。

僕は敵を見据え、青白く輝く穂先を確かにその腹に据えて吠える。


銀 閃 貫 徹(ぎんせんかんてつ) !!」


瞬間、引き金がガチリと絞られ、カルネが高らかにその名を呼んだ。


「ヘイムダル・スラスト! ブレェ――――クッ!!」


時間が止まる。

目に見えるもの全てが光になり、後ろへと突き抜けていく。


僕とカルネ、そして〈ダイタンオー〉は身体ごと光の槍となり、敵を貫き、そのまま木っ端みじんに吹き飛ばした。


時が戻った瞬間、僕は槍を構えたその姿で遙か前方の土を踏んでいた。


「敵はっ!?」


ランスを振り抜いて見返れば、そこには青い稲妻に打たれて崩れ去っていく瓦礫の山、いや黒い機装の残骸があった。

それは電光の中に溶け崩れ、わずかの間に灰となって風に散る。


『全機構過熱、緊急冷却。喚装を解除します』


ダヴが何かを言うなり、周りをガギゴキという騒々しい音が包む。


「えっと?」


とまどう僕に気を利かせてか、カルネがあの四角の遠眼鏡を一枚差し向ける。


映っているのは巨大な白銀の騎士。今の僕達を外から見た姿だろうか。

騎士の鎧が銀の粉になって宙に溶け、その手足も厚みを失い、最後は光の紋様になって消え失せる。


折りたたまれていた小さい手足が伸び、胴体が前後を逆さまにする。


最後に大きくガクンと揺れ、地に立ったのは小柄に戻った銀の機装。

僕が初めて見た時の姿、〈ヴンダーヴァッシェ〉に戻ったのか。

あの時は大きく見えたが、〈ダイタンオー〉と比べると子供のように小さい。


四角の面から顔を上げると、まわりの景色も縮んだ背丈に合わせて心なしか大きく映る。それでもそこら辺の木よりは高い。


自分がどこにいるのかを外から見た事で、改めて体に震えが来た。

何をしたのか理解し、僕は自分の手の平を見てつぶやく。


「こんなに大きいものを僕が動かした……」


「そして勝った。

 レイ君、ボクらは勝ったんだよ」


満面の、でもすこし寂しそうな笑顔をカルネは僕に向けた。


戦っている間は気づかなかったが、見あげれば空が青い。

春の少しだけ白い風に、灰と緑の精霊たちが舞っている。


「レーイ!」


僕を呼ぶ声とひづめの音。

ヴンダーヴァッシェの下に白馬で駆けつけるアデルたち。


途中で逃げたのか三頭だけだ。

一人で乗るのはバルトロ、アデルにはシンディが、そしてニカの後ろにはザビィが相乗りしている。


「よかった、ザビィも無事だったんだ」


「挨拶する?

 ちょっとまって開けるから」


カルネが鞍の下で何かをガチャリと動かすと、見えていた景色が左右と下の三方に開けていく。


外から風が吹きこみ、僕とカルネの髪をふわりと揺らす。


振り向けば、そこに本物の景色が広がっていた。

僕の背丈で、みんなより少し高いところから見る景色。


ああ、今日はいい日だ。

僕はふと、そんなどうでもいいことを考える。


下から手を振るみんなに顔を見せようと僕は地面へ飛び降りた。

と、なぜかカルネが泡を食って操舵宮から大声で呼ぶ。


「ちょいまちレイ君、あ、待って待って!」


そこへちょうどやってきたアデルたちが、僕を見てなぜだか目を丸くする。


「アデル? どうしたの?」


「いや、どうしたのって……お前は誰だ?」


「髪の色からするとレイ様でしょうか。

 それにしてもまたなんとも艶めかしい格好で」


「レイ兄さま……はうっ」


「ちょ、ニカ殿下気を失っちゃダメだよ、落ちちゃダメだって!」


「これは、目のやり場に困るな」


五者それぞれの反応にとまどう僕の横に、慌ててカルネが降りてくる。

もちろん服はあの裸に色が乗ったぐらいの……あ。


「まさか!?」


自分の身体を見れば、やっぱり〈ヴンダーヴァッシェ〉に乗った時のまま。

裸同然のピッタリした服と豊かな肢体を無防備に晒してしまったわけで……


「ちょ、待って、みんな見ないで! 特にシンディ!」


とっさに機装の足の後ろに隠れるが、シンディはすぐにイヤラシイ顔で後ろにくっついてくる。


「その反応はレイ様に間違いないですね!

 あらあらまあまあ女の子になってしまわれて、でもそれもまた素敵です」


「やめて、ちょ、シンディそこ触っちゃダメ!」


脇ではカルネを見つけたアデルが戸惑いつつも食ってかかる。


「おい、お前カルネだな! いったいレイに何をした!」


「はぁ? 何でいっつもボクのせいにすんのさ。レイ君を助けたのはボクなのに!」


そして馬の背から気を失って落ちそうなニカと、それを支えるザビィ。


「気がついてよニカ殿下、馬から落ちちゃうから、だ、誰か助けてぇ」


バルトロは頬も真っ赤に天を仰ぎ、必死に鼻を押さえている。


「やばい、鼻血が止まらん!」


真上から降り注ぐ陽射しの下、勝利を手にした七人のバカ騒ぎを、白銀の巨人だけが目を細めて見守っていた。


誰もいない操舵宮に、優しい女神の声が流れるのだった。


『これからよろしくね、私の可愛いパイロットさん』

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