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苦悩の集

行くも行かざるも同じ。ならば歩け。

作者: 時雨 小夜

 

 夕方に


 後部座席から眺めるこの世は


 寂しさと


 虚しさと


 明日への渇望


 そんな奴等と戦っている様に見えた


 前に座っている運転手は


 かつて人を殺めた


 だから自分も死ぬという


 助手席に座っている老婆は


 死人のような青い顔で


 遠く離れた孫を思い


 これから会いに行くという


 僕の隣に座った幽霊は


 これから愛する人の所へ行くという


 僕はどうしよう


 何をしよう


 何処へ行こう


 どちらまで、と


 運転手は聞く


 では、このままでいよう


 そう答える前に


 太陽が沈み


 車は落ちた


 何処でもない


 確かな場所へ


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