第34戦:九つ目、銃を持つ
「……ハァ…一体、何処にいんだよあいつら……!」
愛憎の罪は罪達が基地として使用していた家の中をあらかた探し終え、壁に手をつけて息を整えながら言った。
『神』のオリジン、ティウムが動き出すということで様子を見に来たはいいが………誰もいない。いるはずなのにもぬけの殻。おかしすぎて笑いそうになるのを愛憎は抑える。
「もう、ティウムに殺られたか?いや、ねぇな。殺られそうになったら絶対誰かが抵抗の跡を残すはず…」
そう言って辺りを見回すが、抵抗したらしき跡は何処にもない。
抵抗しなかった、ということは全員【狂い咲きの暗闇】に犯され、敵になったと考えた方が妥当だ。いやしかし、まだこういう考えもある。ティウムが来るのを察知して逃げた、とか。
「あ、逃げるはねぇな」
うんと自分で納得する愛憎。傲慢がいる時点で“逃げる”という言葉が緊急事態時に脳の辞書から除外される奴らのことだ。何故って傲慢だからだよ。(傲慢の見えない威圧)
愛憎は腰のホルダーから拳銃を抜き取ると銃弾を一個一個丁寧に詰め、ガチャッと引き金に指を当てる。
そして、地下へと続く階段を降り出した。地下へと続く階段は薄暗く、湿っている。愛憎はゆっくり、ゆっくり歩を進めた。
(あいつらが地下にいる気はしないが……一応)
暗い地下に辿り着き、暗闇に慣れない目で地下の部屋を見回す。
「……いない……か……?」
暗闇に慣れてきた。ここにも皆はいないようだ。愛憎は拳銃を下ろし、拳銃を持っていないもう片方の手で頭をかく。
あいつらは何処に?上にもいないし、地下にもいない。じゃあ何処に?
「……………プラ……兄……」
「!ミク?」
愛憎は未来の声に辺りを見回す、が誰もいない。
プラ兄とは未来が呼ぶ愛憎のあだ名みたいなものだ。“七つの大罪”も八つ目も九つ目も皆、皆兄弟という感じに捉えているので未来の呼び名は合ってるちゃあ合ってる。まぁ家族とも言うが。彼らの中での兄弟設定は生まれた順番や大罪人と契約した順番で決まっていない。なんと言うか見た目年齢で決めているのだ。
なので順に剛、雪、愛憎、蜜、練、月、水、唄そして未来となる。だから未来は姉呼び、兄呼びだ。他の罪はしないがたまにお遊びで言い合って遊んでいる。
さて、愛憎の方へ戻る。未来の声がしたが当の本人はいない。
(気のせい…か?でもさっきのミクの…)
愛憎は考えながら、再び、拳銃を構えた。そして階段を登ろう部屋に背を向けた、その時
ーグサッー
「!?」
「……プラ兄…ご…め、ん………キャハ♪」
愛憎の左脇腹を未来の薙刀と思わしき武器が貫いた。そして背後から聞こえた声はまさしく未来。【狂い咲きの暗闇】に犯されたか。
ズボッと嫌な音を立てて引き抜かれる薙刀。愛憎は脇腹が痛いのを我慢し、拳銃を背後にいる未来に向けた。
未来の瞳に光がなかった。血がついた自身の薙刀と愛憎を見てクスクスと嗤っていた。多分、愛憎を刺す前は意識というか意志があったのだろうが今は完璧に【狂い咲きの暗闇】に犯されていた。
「ちくしょう…ティウムの奴、こいつらの意志も想いも全部取りやがった!」
「ネェ、遊ぼ?あたしは“悪意”…だから、遊ぼ?キャハ♪」
未来が薙刀を愛憎に向け、言う。
愛憎はゆっくりと未来を見据え、後ろ歩きで階段を登り始めた。
最悪だ。最悪なことになった。『神』のオリジン、ティウムが【狂い咲きの闇黒】で“七つの大罪”及び八つ目を操り始めた。例外だった憂鬱が犯されているのだ、暴食や憤怒も犯されていると考えていいかもしれない。いや多分、犯されている。
犯された未来を見る限り、ティウムは【狂い咲きの闇黒】を最大限に利用しているみたいだ。未来達を道具として世界を壊すのに使う気だ。未来達が自分に抵抗しないよう意志も想いも奪い取ったのだろう。
「あーあ、やべえことになっちまっt……ーーーーー?!ーー!!」
声が、出なくなった。時間が来たのか、はたまた誰かのイタズラか。
上へと後ろ歩きで辿り着いた愛憎。声が出なくなったことに少々驚きながらも冷静にする。左脇腹から流れ出る血を放置し、壁に背を預ける。そこで彼は気づいた。ここが、彼らの基地でないことに。
「アハハ?驚いた?」
階段を登って来た未来が口元を歪めて言う。
そこは満天の星空だった。そして、“七つの大罪”、仲間であり、友であり、家族でありそして兄弟である彼らが武器片手に立っていた。皆、未来と同じように【狂い咲きの闇黒】に犯されたらしい、瞳に光がない。
(ーチッ、やっぱ剛も雪も犯されてるかっ!ー)
拳銃を構える愛憎。
「ねぇ、早くコイツ殺すわよ。アタシ達は“悪意”なんだからね!」
月が言う。
まさか、ティウムはこいつらが“悪意”を演じてると知っててやったのか?だったら……余計にヤバイじゃないか!!
ーオイお前ら!目ぇ覚ませ!俺を殺してもお前らの大罪人を殺してもなんにも意味ねぇぞ!ー
彼らにテレパシーで語りかける愛憎。それに大罪人を持たない剛と雪が鼻で嗤った。
「俺様達にはなぁんにも関係ねぇことだなぁ」
「それにお前を殺しても意味はある。お前の血肉を“悪意”の合図にする」
全然、伝わんねぇ!
こいつらを止めるにはやっぱりティウムを倒さないとダメなのか?いいや、きっと他に何かあるはず。
(ー!思いついた…“あいつら”がうまくやってくれれば、いける!ー)
愛憎はフッと口元を歪めて笑う。
お前らが“悪意”だと、人間達に着せられた悪意を突き進むというのなら、俺は俺の悪意を突き進んでやる。
愛憎は拳銃を自らのこめかみに当てた。敵となった彼らは驚くというそぶりすら見せない。【狂い咲きの闇黒】に操られ、意志がないとはいえ、少しくらい驚いてくれたっていいではないか。
ー愛と憎しみが裏表のように、悪と善が裏表のように。I will disturb a comedy named the tragedy.(悲劇という名の喜劇を壊してやろう)ー
バンッと飛び散る血と倒れ行く愛憎の体。一瞬、彼らは反応した。彼が“死”んだから。
と、彼の体を何処からか出た本のページが包んだ。そのページはたくさん。数千はある。そのうちの数ページが彼らの前に踊り出て、それぞれの光を放つ。
“七つの大罪”は昔、人間が犯した罪により“悪意”を演じ続けていた。それを利用しようとする『神』がいた。『神』は彼らから意志や想いを奪い取り、【狂い咲きの闇黒】を使って彼らを自分の野望を叶えるための道具とした。もはや彼らは“悪意”となった本当の大罪人。でも本当は、やりたくない。操られているだけ。
彼らを助けるべく大罪人は立ち上がる。操られている罪を救うために、またあの日に戻るために。
ーさぁ、ゲームの始まりだ。殺し合いという名の、残酷なゲームのな!ー
【狂い咲きの闇黒】が一番悪いって話……。
さぁて次から罪VS大罪人ですよ!!!盛り上がってまいりました!!もう少しでこの物語も終わりです。
今年中になんとか後書き(物語の)まで行きたいです。
次回はー…来週また忙しくなるんですよねーだからその前にたくさん投稿しようかなと。なので次回は月曜の予定です。がんばって2つ投稿します!
(ゲームからとても複雑なことに……)




