第32戦:『神』様が導いた答え
大罪人達はもう限界だった。
皆、傷がたくさんついた。
たった2人。されど2人。さすが『神の双子』。
「さぁ、次の一手は?」
「ねぇ、まぁだ?」
ケラケラと床に倒れる大罪人達を嘲笑う2人。大罪人達は言い返せない、何も。それくらい戦った。全力を出した。それでもダメだった。これを絶望と表せずになんと表す?
「……ちっくしょお……体動かねぇ」
自分を蔑むように勇馬は言う。彼の言う通り、体は傷だらけでもう動くことを拒否している。
「…すまんな…我が、不甲斐ないばっかに」
自分に呆れたように笑う鈴都。それにマヤが笑って言う。
「大丈夫……私も…だから」
「だったらサァ〜…僕もダネ〜」
空元気に笑う哀。
「………めんどくさい……今この、状態が……」
「まさに、正論だぜ…」
春と零が言う。
なぜ、なぜこんな危機的状況なのにこいつらは笑っていられる?
「余裕だね。誰か助けてくれる当てでもあるの?」
レオンが訝しげな顔をして問う。それに零が仰向けのまま、独り言のように呟いた。
「当てはなくもない……だが、オレ達は、燃え尽きた……」
それに大罪人達は頷く。それでも、その瞳には諦めないという意志が強く、強く宿っている。
「燃え尽きたと言ってもまだ、戦えるんだろ?お前達の力はこんなんじゃない」
「こんなんで倒れてたら、倒せる者も倒せないよ」
『神の双子』が言っていることがよく分からない。
さっきまで自分達に殺気立っていたのに、いきなりこんな、励ますだなんて……どんな作戦?
「真実が」
「嘘が」
「「知りたいと」」
「あの日を取り戻そうと」
「あの日のように戻ろうと」
「「してたんじゃないのか/の?」」
『神の双子』の意見はごもっとも。
でも、今、体が動かない。倒したくても、ね。
『神の双子』は呆れたようにハァとため息をついた。
2人は片方の扇を消すと近くにいた春と勇馬の所へ歩み寄った。傷だらけで動くこともままならない皆は近づく危険に鋭く睨むことしかできない。
「何をする気や?!」
「だって君達、動けないんでしょ?だったら、こうしたら…?」
そう言ってオモチャを見つけた子供のように歪んだ笑みを浮かべながらレオンは扇を勇馬の首筋に当てた。ギョッと仰向けで倒れていた勇馬は驚いた。
「どうにかするだろう…?」
リオンが扇を春の首筋に当てた。彼も仰向けで倒れていたのでいきなり武器を当てられ、驚いた。
「?!……卑怯…」
春がリオンを睨み付ける。それに彼はハッと鼻で嗤い、春に自身の顔を近づけ言った。
「『神』に卑怯なんて関係ないさ。油断して、倒れていたお前達が悪い」
正論だ。それに大罪人達は何も言えない。ギリ…と零が大剣を杖代わりに頑張って立ち上がろうとする。それに続いて哀やマヤ、鈴都も。仲間のために、立ち上がる。
「そう、そうさ」
「じゃあ、もっと、やる気」
「「出そっか?」」
そう、口元を歪めて2人は嗤う。人を殺すこともいとはない目が春と勇馬の体、頭、意志、心をつんざく。そして2人は容赦無く扇を2人の首筋目掛けて振り下ろした。
嗚呼、もうダメか。ここで終わりか。
「ハル!」
「ユウマ!」
一番 大罪人の中で仲の良かった声が聞こえる。今日が最後、今日が命日?いやだ、それだけは。まだ、あいつらと、あいつらと一緒にいたい!
『望んだのぉ?』
『ケケケ、望んだな?』
「「へ?」」
『かぁみぃさぁまぁ?やり過ぎじゃねぇの?ケケケ』
『そうじゃのぉ。童に手加減くらいやっても良いではないか』
大罪人達は驚いた。何故って、2つの武器が自分の意志で、『神の双子』の首を取ろうと刃を向けていたのだから。しかも空中に浮いてる。
「……死神と破壊神、久しぶり」
「ウチらは手加減したつもりだから間違ってない」
リオンとレオンは2つの武器にイタズラがばれた子供のように言うと春と勇馬から離れた。2つの武器も離れる。
「オイ、破壊神、勝手に行くな」
「死神もだ。戻ってこい」
『え?!』
その声に大罪人達は振り返った。ドアの近くに今までいなかったヴァークとサツキが立っていた。
『おやおや。我が主に呼ばれたのぉ。失礼するよ』
『ケケケ、良かったなぁ。命救われたぜぇお前ら。ケケケ』
そう、『神の双子』に言って、2つの武器はヴァークとサツキの手の中に戻っていく。ヴァークの手には短剣、サツキの手の中にはレイピアが。
大罪人達は混乱しているようで口をパクパクと餌を待つ鯉のようになっている。
「ふーん、動き出したか」
「……一旦帰る?リオン」
「嗚呼、帰ろうレオン」
「「『神』様が帰ること言っちゃってイイノ?!」」
そうツッコんでしまったマヤと哀は多分悪くない。
「んじゃそういうことだから」
「君達にこれだけ教えとくね!」
リオンが微かに笑って、レオンがウインクして言う。『神の双子』は扇をしまい、言う。
「「本当の敵は『神』のオリジン、ティウム」」
と。そして消えてしまった。驚きを隠せないでいる皆にヴァークとサツキが言った。
「とりあえず、手当てな」
「話はそれから」
終わりが見えて参りました!
次回は水曜の予定です!




