第22戦:クライム
「なんでユキが……?ていうかツキは?!」
水が叫んだ。それに雪はクスリと笑い、言った。
「ツキなら今、ミクと一緒だ」
なんで敵と?もしかして雪は敵の方についたのか?
皆がそんな疑念を抱いた時、バンッ!とドアが蹴破られた。それに雪を抜かす皆が振り返る。
「おいぃ、俺様が通れないじゃねぇか」
そう言って頭を低くして入ってきた男がいた。ここの誰よりも高い背を持つ男。
「ご、剛?君なんでここに?」
練が驚きながら問う。
現れた男は“七つの大罪”の一つ、暴食の罪、剛だ。
剛は微かにぶつかった後頭部をさすりながら言った。
「あ"?あぁ…雪とお嬢の付き添いだ」
お嬢とは剛がつけた未来のニックネームだ。
付き添いとはどういうことだろうか?
「とりあえず、武器をしまってくれ。お前達の質問に全て答える」
雪がメガネを上へ上げながら言った。
仮にも仲間…というよりは家族に近い彼が言うのだ。武器をしまいたいのは山々なのだが、何故中立がここにいるのか、何故月と未来が一緒なのか。その答えを考えるだけで恐ろしく、しまえなかった。
「すみませんがお断り致します」
唄がにっこり笑って答える。それに雪は小さくため息をついたが言った。
「お前達の質問はおおよそ予想ができる。ミクも剛も敵についた訳じゃない。助けただけだ」
「助けただけ〜?どういうことでしょうか〜?」
蜜の問いに剛がドカッと近くのソファに腰掛けながら言った。
「攻撃されたんだぁ。俺様達が情報を全員に教えようと走り回ってる時にたまたま、助けたんだ」
「攻撃されたって…誰に?!」
練が剛に詰め寄る。剛は「刀あぶねぇ!」と大げさなリアクションを取りながら言った。
「我が『神』と同類のやつだ。この前教えただろぉ?『神』が3人降りて来たって」
それに雪と剛を除く皆は再び驚く。
我が『神』と同類のあいつが月を攻撃した?なんで?
「………意味わかんない…」
水が両腕で自分を抱きしめる。微かに彼は震えていた。
「だから今、ミクがツキを治療してる。大丈夫だ。ミクはちゃんとわきまえがしっかりしてる奴だ」
雪が皆の輪から抜け出し、剛の隣に腰掛ける。
「それでこの天才君が謎の青年君の言葉を姫から聞いてお前らに教えようと姫に成りすました訳だぁ」
剛が「この天才やろぉ」と雪の右肩に左肘を置く。置かれた雪はわずわらしそうに顔をしかめた。
姫とは月のことだ。
「なんで成りすます必要が〜?直接くればよろしかったのに〜」
他人に成りすますのは蜜の扱う幻術と似ている。それが見破れずに少し落ち込んだ蜜が聞く。
「ツキを攻撃した奴をついでにおびき出そうとしたんだが…失敗した」
雪が残念そうに言う。
「………ツキは、何処?……迎えに行く…」
「落ち着いてください、スイさん」
水が月を迎えに行こうと言う。それを落ち着かせる唄。それに剛は満足そうに笑った。その笑みの意味を皆が考えている時、開け放たれたドアから誰かが入ってきた。
「「「「!」」」」
「……ツキ!」
それは頭に包帯を巻き、未来に支えてもらいながら入ってきた月だった。水がすぐさま彼女に駆け寄る。月を支えていた未来はもう大丈夫だと思ったのか月を水に預けた。
「ツキ…大丈夫…?」
「あらスイ。大丈夫よ、この月様なんだからね」
水に支えてもらいながら月は彼の腕中でいつも通りの笑顔で言った。それに彼女の心配をしていた皆は安心する。
「ん〜。あたし敵だしここにいても邪魔だと思うから帰るね」
未来は彼らに遠慮して帰ろうとした。
「待ちなさい、ミク!」
がそれを月が止めた。月は水の手を借りながら剛と雪が座るソファの反対側のソファに座って言った。
「敵同士にしろ助けてくれたのはアンタだしアンタはアタシの可愛い妹なんだから、まだいなさい!命令よ!」
それに未来は一瞬キョトン…としたが次の瞬間、パァアと笑顔になって月の隣に飛び込んだ。
「アハハ!ツキ姉っ」
猫のように月に甘える未来の頭を撫でる月。男達も安心し、武器をしまった。
「一応、俺様達が手に入れた情報教えるぜぇ」
剛が言った。その途端、皆が真剣な顔になった。そして、剛の言葉を待つ。
「あいつがーーー」
一日一話投稿、出来ない時があると思いますが、少なくとも二日に一話は投稿します!
次、そろそろ大罪人の方に戻ります。それか能力リスト…。




