第20戦:“彼”が『神』についたウソ
『これは昔々のお話です』
ーそんなに昔か?ー
『じゃあ訂正しよう。ちょっと昔のお話です。ある罪が『神』様にあるウソをつきました。『神』様にウソをつくなんて大犯罪、裏切りに値します。しかし、『神』様はそれを見逃してしまいました。いえ、正確に言えば、気づかなかったのです』
クスリと古びた玉座に腰掛けた男は嘲笑した。
まぁ、ここまでは想定済みだ。
『だってそのある罪はその『神』様が愛し、育てた“七つの大罪”の弟分に当たり、そしてある人間達が生み出した貴重な資料だったからです。しかし、その罪は何故か持っているはずのない“人間の時の記憶”がありました』
男の笑みが歪む。自分の記憶に触れられ、勘にでも来たか。
『人間達から生み出された罪に記憶があるなんて可笑しなことです。罪は考えました。そして、ついに答えに辿り着きました。その答えはーー』
バンッと足元の床に銃弾が撃ち込まれた。床には真新しい黒い焦げた汚れが出来ている。
男は片手に拳銃を握っており、その銃口からは黒煙が立ち上っている。
ー………それ以上言うと今度はお前の脳みそに撃ち込むー
頭にテレパシーのように男の声が響く。男は足を組み直し、拳銃を右腰のホルダーにしまった。
『それはやめていただこうかの。まだ死にたくはない』
ーハッ。不老不死の野郎がなにを言うー
そう言って男は玉座の肘掛けに右肘を置く。
ー代わりで生まれたお前に死なんてないだろう?ー
まぁ、そうなのだが。両肩を竦めてそうだと返答する。と男は訝しげに首を傾げた。
どうしたのだろう。なにか変なことを言っただろうか。
ー今日はやけに素直だなー
『そうだろうか。いつも通りだが?』
その答えに男は少し考え、納得したのかうんと頷いた。
ーそういえば今日はなにようだ?そんな昔話をするために来たわけじゃないだろ?ー
男の言う通りだ。危うく忘れる所だった。…………昔話ではないのだがな、アレは。アレは今と過去を結び、未来へ導くためのモノなのだが…。まぁ、こいつはそんなことも、気づいてるんだろうな。とっくの昔に。
『そうじゃったの。貴様にはいろいろ世話になっているしの、ちょっとした余興をプレゼントしに来たんじゃ』
ー余興?ー
面白そうに笑う男の前へ行くと懐からある本を出し、それを渡す。それを受け取った男はペラペラと本のページをめくって眺めた。
パタン…と本を閉じ、口元を歪めて男は嗤った。
ー楽しみな余興だな。でも余興、あいつらも知ってんだろ?ー
『いいや、まだその時ではない。黒幕が初っ端から登場なんて可笑しいじゃろ?』
嗤って言うと男もそうだなと頷き、本に視線を向ける。
嗚呼、この時をどれほど待ったことか。貴様も不用心だな。それと共に愚かだな。
男が本を再び読み始めたのを確認し、こちらも懐から出した男の持つ拳銃よりも小さい銃を彼のこめかみに当てる。
カチリと引き金を引く音に男は反応し、驚いた様子も無く、睨みつけて来た。
ーIt is any imitation?(何の真似だ?)ー
『Will you understand it?(お前はわかっているのだろう?)』
パタン!と本を閉じ、顔を上げて……我を見た。男のこめかみにはまだ我が当てている銃の銃口がある。
ーI have already understood it when I did such "an act".But.As for it, do you, too?(俺が“あんな行為”をした時点でもう、わかっていた。だが。それはお前もだろ?)ー
嗚呼、笑いがこみ上げてくる。貴様は、本当に愚かだ。
『It is more magnificent than you that I went.I went on self-will.It is different from you.(我が行ったのはお前よりも壮大だ。自分の意志のままに行った。お前は違う)』
すると男は狂ったか、笑い出した。そして顔を歪めて愉しそうに言うのだ。
ーWhat is different?You seem to think me to be stupid, but the true fool is you.(なにが違うんだ?お前は俺を愚かだと思っているみたいだが、本当の愚か者はお前だ)ー
『What? !(なんだと?!)』
我は男の言葉に怒りを覚えた。我が愚か者だと?ふざけるな!!我は愚かではない。我は自分の意志で………!
バンッと引き金を引いて男に銃弾を放った。男は一瞬、ビクッと痙攣した後、玉座に寄りかかって動かなくなった。鮮血の匂いが我がやった行為を思い出させる。
『ハァ……ハァ……』
怒りに任せてやってしまった。我は噴き出す汗を拭き、銃をしまう。そしてそこを急いで後にしたくなった。ここに長いしてはいけないと心が我に警告する。
何故だ?何故にこんなに逃げたくなるのだ?あいつは我にとってはただの駒の一つ。なのに何故……?
ーAre you ready?ー
『?!』
その、低く頭によく響いた声に後ろの玉座を振り返る。……そこに奴の死体は愚か飛び散ったはずの血や本さえなかった。
我は驚いたが…今はこんなことに足を止めている暇はないとその不可思議を無視して歩を進めた。
ーハハッ、バカな奴。俺は確かにあるはずのない“人間の時の記憶”があるが、誰がそれが関係していると言った?それに俺がついたウソは“どこにもねぇ”よ…ハハハッー
そろそろ残りのキャラも出したいです。




