第16戦:“僕”の召使が犯した罪
ジャラララとマヤの足元から大量のコインが沸き上がり、彼を包んだ。
そして、それが消えると彼の姿は変わっていた。
マヤはボーイッシュ・ロリータと呼ばれる格好で、黒いカボチャ型のパンツに白と薄い青を基調とした袖口に紐状の取り付け可能のリボンがついたTシャツ。靴はやはり4cm厚底のブーツだ。頭には可愛らしい小さな帽子をつけ、その帽子の飾りはコインの形をしたモノで真ん中に青い文字で「G」と刻まれている。。髪型は変わっていない。
いつものマヤとはうって変わり、こちらは彼の性別通りの少年だ。
「改めましてこんにちは。“僕”は“こいつ”の能力の一部及び“こいつ”の本来の自分…“覚醒”の名は
真実の詐欺師だ。よろしく」
そう言って彼は頭を軽く下げた。
「マヤ……で合ってるよネ?」
哀が彼にちょこちょこと近づいて聞く。彼は精一杯背を伸ばして哀の頭を撫でた。
「嗚呼、“僕”も“こいつ”もマヤ・久理乃・ローテルだ。ただ、お前達と違って“こいつ”の代わりに“僕”が出てくるだけ」
「????キミはマヤのなんなノ?」
哀が首を傾げる。彼、マヤは嗤って言う。
「さっきも言っただろう?“僕”は“こいつ”の本来の自分だと」
「え……もしかして…マっちゃん?!」
哀が驚いて薙刀を握り締める。今の所、分かっていないのは鈴都だけだ。
「どうなっとるんや?」
鈴都が問うとマヤはニッコリ嗤った。
「分かりやすく説明しようか。つまりは『被害が及ばない時の強欲者』がお前達が見ている“こいつ”で『被害が及ぶ時の強欲者』が今の“僕”だ。わかったか?」
一応、成績がいい鈴都だが、微妙すぎる。ヴァークみたいなものだろうか。
鈴都はうんと自分で納得する。
「嗚呼、マヤ。ようやく出て来れるようになったのですね…!」
「ウタさん〜今は感激してる場合じゃあありませんよ〜」
なぜか感激している唄とそれを止める蜜。
うん、今すっごく
「(いろんな意味で)カオスやぁ…」
鈴都が呟き、ため息をつく。鈴都のため息にマヤはクスリと右手で顎を押さえて嗤う。
「ここは“僕”に任せてもらおう。『使用人の尻拭いは主の務め』だからな」
マヤが右手を頭上に上げると大きな斧がゆっくり動き始めた。
「嗚呼、私はこの日をどのくらい待ち望んだことか……!」
「ウタさん!もう、そんなこといいですから早く戻って来てください〜!!」
蜜が大きな斧が動き出したのを見て唄の両肩を掴んでグワングワン揺らしてこっちに引き戻そうとする。
“七つの大罪”、今期初めての大ピンチ。原因は唄が大罪人の“覚醒”に感激したことによる敵になったのに超過保護なこと。………今週の記事はこれで決まりだ!
嗚呼、これ月に散々怒られるーと蜜が諦めモードである。
マヤが右手を振り下ろすと大きな斧は唄と蜜に向かって振り下ろされた。
「ったく〜!しょうがないですね〜!」
蜜が唄を連れてギリギリの所で斧を避ける。避けたあとも唄はまだ感激中。………なんでこいつを連れて来たんだろう…。昨日の自分の選択に色欲でありながら怒りを覚える蜜であった。
と、パリン!と音がした。そちらを見ると見えない壁を見事破ったサツキがいた。いつもと姿が違うので“覚醒”したらしい。(サツキにとってはちょっと違うが彼らには“覚醒”に分類される)
「あああああもう!!今日は帰ります〜!」
蜜が叫び、幻術をかける。そして2人は蝶の鱗粉に包まれて消えた。
幻術をかけた主である蜜が消えたことによって暗い空間は元の地灰家に戻った。
“覚醒”したサツキとマヤは戻り、体に異変を訴えていた皆は異変がなくなったようで元気になった。鈴都が心配し過ぎて病院に行こうと訴え出すのを止めるのはこの後の話だ。
「このっ、過保護野郎がぁぁぁああああ!!!!」
罪達の隠れ家で月が叫んだ。怒った顔で両腕を組んで仁王立ちしている月の前には正座をし、小さく縮こまった唄がいた。
「なに戦闘中に感激しちゃってるのよ!!!殺しに行ったはずなのにこのバカ!!」
「………すいませんでした…」
唄が月に怒られしょげる。
「バカだね、ホントに」
「………ネェー……」
それを見た練と水がクスリと笑う。
蜜がそういえばと思い出す。そういえば、ここに帰って来る前、唄がある事を呟いていたのを思い出したのだ。確か、
「ウタさん〜帰って来る時おっしゃっていた『罪を押し付けてごめんなさい』ってどういうことですか〜?」
それに唄は顔を上げ、口元を歪めて嗤った。
月が「ちょっと聞いてんの!!??」と怒鳴るのを無視して唄が言う。
「昔、私が今使っているこの体の持ち主である人間がある罪を犯し、それをマヤの前世に押し付けたんです」
『“僕”の召使が犯した罪は、前世から“僕”らを繋ぐ枷の真実だ』
ちょっとなかった奴があったので直しました。