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Game of crimes  作者: Riviy
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第14戦:解き放たれた死神



「くそっ!」


ダンッとサツキは見えない壁を左の拳で叩いた。見えない壁を挟んだ遠くの所ではマヤと鈴都、そして哀が唄と戦っている。


「………っ」


サツキは自分にできることはないかと後ろを振り返った。後ろには先ほどまで異変を訴えていた他の皆がおり、それぞれ異変を訴えていた所に鎖が集中して巻きついている。

春や勇馬は比較的あまり痛そうにも見えないが、未来や零、ヴァークは巻きついている鎖の場所が場所なだけに痛々しい。皆、何故か気絶していることだけが幸いにも思えた。


鎖を取る方法は何かないか。

無理やりに引き離せば皮膚も一緒に取れるなんていう気持ち悪いことが起きかねない。皆に巻きつく鎖は暗い空間の床にめり込んでおり、それを抜くことも難しそうだ。


「!そうだ」


まだ自分には歌があった。

サツキは左手を心臓がある左胸に当てると大きく息を吸い込む。

引き離すのも引き抜くのも、丈夫そうな鎖を断ち切るのも無理そうなら。


「……フゥ……♪〜」


サツキがよく響く、美しい歌声を紡ぐ。歌の名は『子守唄の楽園』の1つ、『歯車仕掛けの時計』。


「♪歯車は休まずに 動き続けるの♪〜♪愛しきモノのために〜♪」


ポワン…と可愛いらしい音がし、サツキの背後に様々な色をした小さな歯車が現れた。サツキは左胸に当てていた左手を鎖に囚われた皆に差し出すように向ける。

そして、歯車が動く系譜、言葉を口にする。


「♪あるじの願いを聞き入れましょう♪」


歯車はサツキの言葉を聞き、彼の左手が示す方へ一斉に飛んでいく。そして、皆に巻きついている鎖にスゥ…と入っていく。すると歯車が入った鎖は徐々に薄まり、消えた。


「……ハッ、こ、これで………え?」


サツキは歌うのをやめ、皆を見て驚いた。片目に鎖が巻きついた未来とヴァークだけが鎖が消えていなかった。


「なんでだ?……なんで…」


サツキは左手で前髪を掻き上げ呟く。

あの歌は、『歯車仕掛けの時計』は『歌を聞かせる対象者が囚われているモノを消す』効果がある。それが効かないのは何故か。歌の効果を打ち消すほど、強い鎖なのか。


「どうすれば…どうすればいい?!」


サツキはなんとか2人を救おうと頭に埋め込まれているはずの脳をフル回転させて考える。


「「解放しなさい」」

「!!??」


どこからか聞こえた2つの声にサツキは恐怖した。この声は…!!


「お前の“中”に閉じ込められた」

「哀れで可哀想で愛しい存在の心を」


聞きたくない!聞きたくない!聞きたくない!


サツキは両手で両耳を抑えて聞こえる2つの声から逃げる。だが、2つの声は彼を逃がさない。


「何を怖がっているの?」

「“そいつ”に見られるのがそんなに嫌か」


違う。見られるのが嫌な訳じゃない。【こいつ】を放つことが怖いのだ。サツキの心に深く根付いた【こいつ】。【こいつ】はサツキの“闇”と言える存在だった。だからなおさら、放ちたくないのだ。自分が“闇”に支配されるという恐怖付きなのだから。


「恐れるだけなら誰でも出来る」

「行動に移すまでがちょー困難」

「「それが心」」


「うるさい…お前らに何が分かる…」


2つの声に反論するサツキ。2つの声はおかしそうに嗤い、聞こえなくなる前にこう、告げた。


「「お前/君の“光”は、お前/君の片割れはもう、知ってる」」


その言葉がサツキの心に突き刺さる。

もう、彼は知っていたのか?知らないと思っていた。でも、何故か他人のその言葉で胸がスッキリしたのは確かだ。


ずっと、夢を見ていた。自分の“闇”に支配され、怯える自分の夢を。でも、それを今日ここでやめようか。

あいつらの言葉が嘘でも本当でももう悔いはない。

これは自分のためであり、仲間のためだからだ。


「嗚呼、もう、いい」


サツキは清々しい顔で見えない天井を見上げる。


「もう、勝った」


その途端、サツキの足元から黒い雲が吹き上がり、彼を包んだ。

その雲が晴れた時、そこにいたのはさっきとは違う姿のサツキだ。

黒と白を基調とされたコートを着ている。そのコートには左胸の所に十字架が描かれている。中には黒の左腕部分がないTシャツを着ており、コートに合わせた長ズボン、そして少しヒールの高いブーツを履いている。ちなみにブーツの大半部分はズボンに隠れている。

そして、彼がしていたしずく型のピアスは左耳の方だけが黒く染まっていた。髪型はそのままだ。


「………案外この姿も嫌いじゃないが。さて、やるか」


サツキは自身の右手を眺めると手を握りしめる。とその手に彼の大罪武器であるレイピアが現れる。

サツキがスゥ…と目を細めて嗤う。


「我が“闇”、死神こいつの力で」


サツキの心の“中”にいるのは彼の“闇”である【こいつ】、死を司る『神』、『死神』である。


そして、『死神』はレイピアを鎖が巻きついた未来とヴァークの方へ向ける。


「騙ることばはあるか?いましめよ」


それに2人に巻きつく鎖は淡く灰色に光って答えて見せた。まるで彼を嘲笑うかのように。


それに彼は面白そうに嗤い、言う。


「ならば、解いてやろう」


彼………『死神』、いやサツキか。彼はレイピアを空で切る。すると鎖は糸も簡単にパリンッと壊れて消えた。

それを見て、ふうと息を吐く。


「『死神』………ありがとな。お前の力なしには2人を助けられなかった」


サツキは胸の服を左手で握りしめ、言う。今なおここにいる『死神』に向かって。それに『死神』は嗚呼…と言ったようにサツキには感じられた。



しーにがーみさーん!!!


……………てね。出てこないかなこれで。無理か。

次は鈴都&マヤ&哀VS唄に戻りますよ!

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