第獣医地話 武闘大会開催!
朝が来る。
今日は光が差し込まなかった。
空が曇っている。
今日も右側にカヤエがいない。
左側のウラもいない。
早起きなのは良いことだ。
俺はリビングに向かう。
「おはよう。カヤエ、ウラ」
リビングにいるであろう、二人に喋りかけたが、返事は来なかった。きっと修行しに行ってるのだろう
「剣技習得…か。今日が大会だってのにな」
大会…そうか。今日は武闘大会だ。武闘大会が終われば遂に砂漠の森、だな。
大会で優勝すれば、まだ使えないスキルも使えるようになるかな。
ん…?まだ使えない…?
そういえば、俺はカヤエと出会った時、普通に空間停止スキルを使った。
レベルがまだ低いのにも関わらずだ。
確かにスキルを使うのはコツが必要で、
いくらレベルが高くても使えない者は沢山いた。
だが、やっぱりスキルを使うのには最低限のレベルが必要だ。バックシールドは最初から使える。
しかしバックシールド+1は違う。
これはレベルが最低でも50は必要なのだ。…いや、まさかな。
俺は一つの案に辿り着く…
俺はテスカ装備に着替えて、二人が決闘した広場に向かった。
「さぁ…やるか。」
広場に着いた俺は深呼吸をする。正直、成功するかわからないが成功すれば、この後の冒険に大きく影響を及ぼすであろう。
ーームーメント・ムーブメント!ーー
俺はスキルを発動する。
そして…
「やった…!やったぞ!成功だ!」
俺はスキルを使い終えた瞬間…ホテルの部屋にいた。そうだ、俺は瞬間移動をしたのだ。瞬間移動のスキルは、魔王を倒すことにより、使えるようになる特別なスキル…
つまりだ。それが成功したということは、これは俺がゲームで手に入れたスキルを継続していることになる!
俺が気分を上げていると、直後に胸に激痛が走る
「…ぐっ」
これはスタミナが切れた事を意味する。ムーメント・ムーブメント、つまり瞬間移動は高レベルスキル。一回使えば、今のレベルではスタミナ切れになりスキルが続かないため、そこから攻撃に繋げない。
戦闘する時には使えないな…
とりあえず、俺の確認しておきたいことは済んだ。
それより…
そろそろ大会開始の時間なのだが…
間に合うのか…?
俺は部屋を出て、
受け付けを通り、
外に出る。
「あいつら、何処に行ったんだ?」
俺が道路で探していると、
「た~す~け~てぇ~!!」
「ウラ!?」
ウラが何かに追い掛けられている。
あれは…カヤエじゃないか!
しかも手には愛刀が…
ウラが俺の後ろに辿り着き、俺を盾にしてカヤエを見る。
すぐにカヤエが俺の前に着く
「ちょ…ちょっと待てって!何があったんだよ!」
「ウラさんが逃げ出したのですよ。剣技習得の途中に」
アンテナはピーンッと立っているが、絶対ウソだろう。
やがてウラが本当の事を言う。
「か、カヤエさんのお尻から何か黒いのが出てましたので、そ、それで触ったら……ご、ごめんなさい!」
つまり、ウラはカヤエの尻尾を触ったのだろう。普段は恥ずかしがって尻尾は隠してあるはずなのだが…
「カヤエ…もういいだろ?何もそこまで…」
「何を言ってるのですか?私の大事なコレは、夫になるべき男性にしか触らせません!父にも触られたことありませんでした!」
…これは完璧に怒っている。
「…ま、まぁ。わかったから、な!とりあえず、もう大会始まっちゃうから速く行こうぜ。な!」
俺が説得すると、背中にいるウラをこれでもかと言う具合に睨み潰して
「わかりました。今日の所は、我慢しましょう」
…我慢するも何も、そんな尻尾が出ていたら誰しも触ってしまうだろう…それはカヤエが悪いと思う。うん。
「いいから、早くその尻尾しまって、行くぞ」
まだ出てしまっている尻尾を眺めるのは悪くないが、本人が困るだろう。
「…あ、はい。では速く行きましょう。時間がありません」
「大丈夫だよ。ほら、集まって」
俺が二人を側によせる。瞬間移動は触れている物も一緒に瞬間移動する。
俺はカヤエの肩に右手を回し、左手をウラの所へ、
「何をするのですか?」
ムーメント・ムーブメント!
俺達は一瞬で会場の前に着いた。
「え?」
カヤエの声が響く。
ウラは沈黙。
そして俺はドヤ顔。
「じゃあ会場の中に入るか?な」
俺は一人、スタスタと受け付けに向かい、受け付け完了をして、会場に入った。
それに釣られて二人も無言でついてきた。しばらくして…
「あ、ヨシさん!私たち専用の部屋がありますよ!」
ヨシハル一行という表札の部屋についた。ゲームであれば、そんな部屋に入らずに直ぐにバトルが始まるのだが、現実世界となった今ではそれは出来ないのだろう。
しっかりと部屋にはモニターがあった。モニターと言っても、現代の機械的な画面ではなく、魔法で映像化されたものである。
「そしたら、まずはですが、作戦会議としましょう。ルールは毎年変わるみたいなので、戦い方を考えましょうか」
ウラが素早く右手を挙げる。
「ではウラさん。何か意見はありますか?」
なんか、小学校の発表会でよくいる司会者みたいだな。
「私は、先程のヨシさんがおこなった行動が気になります!」
……完全にあの事はスルーされたと思っていたのだが、ウラが話を持ち込んできた。
「同感です。説明してもらえますか」
二人の冷たい目線が刺さる。
別に悪いことは何もしてないのになぁ。なんだかなぁ。
とりあえず説明しとこうか。
「あれは瞬間移動スキルだ。さっき、それが使えると気づいた。」
「旬期間食べ放題スキル…?」
ウラが言った。
……どうやったらそんな風に聞こえるのだろうか?
旬期間食べ放題スキルって何?何なの?食べ放題ツアーでも行っちゃうの?
…まぁ、カヤエが聞き取ってくれていたら、それだけで充分だ。
「猫耳付け放題スキル…ですか?」
違うッ!まだウラの方が近いんですけど。猫耳つけ放題??誰得なの?確かにカヤエに付けたら可愛い…じゃないッ!!
もう、本当何なのこいつら。
「冗談ですよ。ウラさんはともかく、私がそんな聞き間違えをするはずがないです。
で、何なのですか?思春期脱走スキルというのは?」
いや…間違ってるんだけど…。
もうツッコミするのに疲れた。
助けてよ、ジョニー…
ん?ジョニーって誰だ?俺まで可笑しくなってきた。
「瞬間移動スキル…な」
俺はもう一度言うと二人は顔を赤くした。
「瞬間移動スキル…そんなスキルがあるのですか?」
俺に疑いの眼差しを向ける。
「ああ。あるさ。その証拠にさっきやってみせただろ」
ああ!そういえば!と、頷き始めるウラ。二人とも納得してくれて何よりだ。
「貴方はどうやって……まぁいいでしょう。作戦会議の途中でしたので話を戻しますが…」
「ちょい待った」
「まだ何か?」
「ここから作戦指揮は俺がする。カヤエは聞いていてくれ」
カヤエは少し不満だったのか頭の髪の毛でできたアンテナがカクッと曲がっていた。
俺はそのアンテナごと、頭を撫でて椅子に座らせる。
「今回の大会は一対一の戦いとなる。まずだが、一回戦はそれ程強くない相手だと思われる。
俺達はランダムに選ばれて戦うことになるが、きっと一回戦の相手は状態異常攻撃を頻繁に使ってくる魔法使いだろう。
だから一回戦に選ばれたら、これを付けてもらう。状態異常無効の使い捨てアイテムである、ミヲマモールだ」
ミヲマモール…名前はふざけているが、効果はふざけていない。
このアイテムはボス戦などの時に良く使用されて需要のあるアイテムだ。
状態異常を一度だけ無効できる。
ルールについては、ゲームの通りであれば間違いないだろう。
「そろそろ時間だ…」
俺が言うと、ほぼ同時にアナウンスが流れる。
《よよよよーうこそいらっしゃいました~!今回の武闘大会は、一対一のシングルバトルどぅえーす!
では、さささ早速、一回戦の組み合わせをランダムで決めたいと思いまーすぅ!
では…
一回戦はこの組み合わせ達どぅえーす!
トゥルーVSディーン!
パーティナVSオルガリン!
サリーVSザッカス!
タッカーVSヨシザワ!
ナガリスクVSミクタチ!
ウラーニアVSヨミニークル!
以上だぁぁぁあ!
これらの組み合わせに選ばれた人たちはほぼ同時にバトルを開始しマーす!
ちょっとこちらの事情でぇ?時間がないのでぇ?仕方アリマセーン!
では、
呼ばれた人はバトルステージに!》
「まずはウラだな。胸を張って行って来い!」
俺はミヲマモールを渡して見送った。
そしてモニターにウラの姿と、その相手の姿が映った。
《では、皆さん!それぞれのバトルステージに着きましたかぁー?
それではスタートぉぉぉほぅ!》
合図と同時に、他の組み合わせの連中は、もう剣を交えている組み合わせもいる。
…あ、ザッカスさん。もう勝っちゃってる。
《おぉう!すごいぞぉ!ザッカスが早速蹴りをつけたぁぁあ!》
それに比べ、ウラは動かない。相手も動かない。お互いに相手の様子を見てるのだろう。
賢い選択だ。
「ウラは、大分と成長したみたいだな。今まであんな戦い方はできなかったはずだ」
「まぁそうですね。しかし、あの人は成長が早い。直ぐに剣技を吸収していきました」
そうか…ウラも強くなったんだな。
俺が感心していると、
ウラの方から攻撃を仕掛ける。
「このぅ!」
しかし、相手はスラリと避ける。
相手はヨミニークルだ。ヨミニークルはこの街で一番の魔法使い。
「押されてますね。このままでは、焦りが彼女の判断を狂わせてしまいます」
カヤエは真剣な目つきでモニターを見つめている。
しかし…魔法使いは、物理攻撃に弱い。今のウラの攻撃が当たれば一撃だろう。相手もわかっているはずだ。焦りが目に見える。
「はぁ…はぁ…ちょこまかと!いい加減やられてください!」
ウラには次第に焦りが見える。
「…嫌だ」
ヨミニクールは当然と言っていい言葉を返す。
「ムキーッ!ムカつきますね!」
ムカつくも何も、そんな事言われて潔く負ける奴なんていないだろう…
あれは駄目だな。完全に相手のペースだ。
「帰ってきたらお仕置きだな」
俺が言うと、真剣な目付きでモニターを見つめているカヤエの口が開く
「そうですね。たっぷりと」
カヤエは、少し不気味な口調でそう言った。
正直…怖いです。この人…
「そうだ。落ち着こう。ヨシさんならここで何か策を考えるはず!」
何か、今の私に…ヨシさんなら…
ヨミニクールがウラにむかって火炎魔法を放つ。火炎魔法は少しのズレもなく、見事にウラに命中する。
「きゃッ!」
ウラは咄嗟に痛みを声に出す。
痛い…!
ヨミニクールは再び火炎魔法を使う。しかし、ウラは二度も当たる訳にはいかない。ウラは、それを見事に避けて
「もうッ!危ないじゃないですか!!」
ウラは敵である相手に無意味と知りながらも訴える。
しかしながら、ウラはヨミニクールが魔法を使う時の細かい仕草を見逃さなかった。
そうか…!なら、次に…!
ヨミニクールは毒性魔法をウラの身体に目掛けて使ってくる。しかし、ウラは…
「お?ウラ、ヨミに向かって突っ込んでるぞ?」名前が長いのでヨミって言っちゃったが、カヤエは全く気にする様子も無く
「みたいですね」
少し冷たい声が聞こえたが、俺はモニターを見る。
ウラはそのまま突っ込んで行くようだ。
やがて毒性魔法はウラに直撃する。しかし、ウラは何事も無かったかのように、そのままヨミニクールに渾身の一撃を加える。
物理攻撃に弱い魔法使いであるヨミニクールはその一撃に耐えきれず力なく倒れた。
「やっぱミヲマモールを持たせて正解だな」
ウラは俺の狙い通りにミヲマモールを使ってくれた。ミヲマモールには状態異常無効の効果がある。
毒性魔法は、相手を毒にするだけで、ダメージはない。つまり、そのまま突っ込んで一撃を打つ事ができる。しかも実はヨミニクールは一つ一つの魔法が強力なため、魔法が一つ使い終わると、少し動きが止まってしまう。
ウラはその隙を見抜けたのだろう。
ウラにしては上出来だ。
「…ですね。それよりも…貴方はどうして、相手が魔法使いと知っていたのですか?」
それは…聞かれたらマズイ質問だ。
ゲームでの知識なんだよ。すげぇだろ?なんて事は死んでも言えない。
ここは嘘で…
「…勘だよ」
嘘で固めようとするが、カヤエに嘘は通じなかった。
「そんな理由で私に通じるとでも?」
ウラの方が、騙しやすいんだけどな…
ピンチ到来。
確かに聞いてくるとは予想できた。だけど言い訳が思いつかなかったのだ。
ここは正直に
「ごめん、カヤエ。秘密なんだ」
俺が申し訳ない雰囲気を出しながら謝ると、カヤエはキッパリと諦めた。
「そう…ですか。なら良いです。私は貴方が困る姿を見たくありませんので、これ以上は問いません」
そして何とか危機は去った…
すると、ウラが戦闘を終えて、部屋に帰ってくる。
「…何とか…勝ちましたよ…カヤエさん…ヨシさん…」
俺もある意味カヤエに勝ったところだ。
それにしても、かなりボロボロで帰ってきたものだな。砂だらけだ。
この大会は死なないとはいえ、ダメージは継続されるし、防具が破損してもそのままだ。
するとカヤエが、
「私の回復薬で回復させておきますので、少し部屋を出ておいてください。」
とか何か言って、
そして俺は部屋を出される。何で回復するだけなのに部屋を出されたのだろうか?
しかし、その疑問は直ぐに解決した。
何故なら部屋から、
「ひぃぃ!やめてください!お願い許してください!カヤエさん!うひゃひゃひゃ!ちょっと!きゃあ!うっ!ダメです!それは!きゃああああ!」
こんな声が聞こえてきたからだ。
何が起きてるのか想像できない…なんか想像したくない…
キィ〜と、部屋のドアが開く。
「もう大丈夫です」
満面の笑みで俺を迎えた。彼女のこんな笑みは今まで見たことがない。
「お、おう。そうか…」
俺が部屋に入るとウラは
「…もう…ダメですぅ~…」
部屋の端でくたばっていた。
何があったんだよ…
間も無く、アナウンスが流れた。
カヤエが選ばれ、カヤエは自分の装備を確認する。
「カヤエだな。カヤエなら大丈夫だ。心配ない。肩、慣らして来い」
俺が応援すると、少し顔を赤くして、
「は、はい」
小さな返事をした。
カヤエの相手はザックフォード。
魔法を使う剣士で、ステータスは平均的に高い。魔法剣士とか言う奴だな。
ザックフォードは短刀では右手に出るものはいないと言われていて、
彼に短刀で勝った者はいないと言う…
ザックフォードのスキルにも魔力吸収という、恐ろしいスキルがあり、間接的に、または直接的に触れたものの魔力を吸収して、自分の物に変換するスキルがある。魔力吸収スキルだ。
あ、因みにだが、俺も使える。自慢ではない。多分、使えるだろうってだけだ。
さぁ、始まるぞ…
楽しみだ…面白い試合になりそうだ。
《それでは試合スタートぉ!》
「……おかえり」
「ただいま」
試合がスタートして、数分後、カヤエは部屋に帰ってきた…
まぁ…一瞬だった…な。うん。
ザックフォードって、あんなに弱かったっけか?
いや、ザックフォードは十分強いはずだ…
「肩慣らしにもなりませんでした。あのような雑魚」
雑魚…だってさ、ザックフォードさん…
「ザッコフォードに改名させてきます」
「待て待て!それは駄目だ!落ち着こう!一旦落ち着こう!」
ザッコフォードって…
俺は言葉を失う。
そして三回戦を告げるアナウンスがなる。
「次は俺だな」
「頑張ってください。応援しています」
「ああ…ありがとうカヤエ。じゃあウラ、いってくる」
「…はぁあい…いってらっさいですぅー…」
未だにウラはくたばっている。
カヤエはウラに一体なにしたんだよ…怖いわ…
因みに俺の相手はアズ。
アズも実は人気ランキングで五位の可愛さなのだ。強さも一流だ。
そして試合がスタートする。
アズのレベルは94で、俺に勝ち目はない。正直、なんでアズが俺の相手になったのか疑問なくらいだ。
だが…
「お前は叶えたい夢はあるか?」
目の前にいるアズにむかって一言。
アズは
「…べつに」
やはりアズは冷たい。まぁ、初対面の相手に冷たいのは当たり前なのだが。
「ふーん。そうか。なら、俺と結婚しないか?」俺は結婚宣言をする。
「えっ!えっ?」
戸惑い始めて目が泳ぎだすアズ。
アズは混乱する。
実は、アズの一番弱い言葉、それは結婚という言葉だ。
その言葉を聞くと、相手が初対面であっても動揺して力が出なくなる。何故なのかは、未だに不明。俺は知らない。
可愛いなぁ…じゃなくて!!
今だな。
俺はバックシールドを使い、アズの近くまで一気に近づき、一撃を与えて、アズを気絶させた。
「ただいま」
「…急に相手の力が抜けたようですが、貴方、何かしましたか?」
「…まあな」
「何を?」
「まあ、そんな硬くならないでさ。な。尻尾は柔らかいんだからさ」
「…ッ!本当に貴方という人は!」
俺はカヤエを沈めてレベルを確認する。今のアズを倒したことにより、かなりレベルは上がった。
この調子だな。
《次、四回戦は特別ルールと致しまして…二人組でバトルしてもらいまーす。では最初の組み合わせは…
ヨシハルANDヨウシ・カヤエ
VS
カーザリックANDヨウシ・ミクニ
だぁぁぁあ!》
ミクニ…って…
「やはり、参加していましたか。しかもよりにもよって、私たちの敵となるとは…」
「ミクニってのはやはり…」
俺がカヤエに聞くと、カヤエはアンテナを動かして、
「はい。間違いありません。
私の父です」
私だ。
ふっふっふ。
今は私の名前を知らなくても良い。
次話で出てくるからな!
我が愛刀、セイクリッドソードがウズウズしているわ!
さあて、次話に備えて、
磨いておくかな。
ふははははは




