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出会い編6

 パートナーで有ると言うことはお互いに同一であると言うことだ。

 お互いに勝利を分かち合い、敗北の苦みをかみしめ、次の戦いに備えて訓練していく。

 倉守が命がけで意志を証明しようと言うのなら、

 俺だって意志を証明しなければならない。

 大事なパートナーを殺させはしないと言う証明を。




 修也に掛かってる遅延魔法を外すには修也の協力は絶対に必要だ。

 一応発動条件を満たすように修也に襲いかかると言うことも出来なくは無いけれど、

 逮捕されてしまう。

 本末転倒もいいところだ。

 魔法特区は戦闘狂の殺人鬼に優しくても実益重視の通り魔には優しくない。

 それにこの場合だと倉守を殺そうとしていたと、修也が誰かに漏らしてしまう可能性だって出てくる。

 詳しく調べられれば俺がやったことぐらいばれてしまうだろう。

 

「断る」

 修也は即答だった。

 修也の携帯電話が繋がらなかったので、ホームルーム前にやはり殺すのは中止になりました。と、とても丁寧に言い回した結果がこれだ。

「お前に取っちゃ人の命なんてすっげぇ軽いんだろうな。

 死傷者三万二千百八十二人だったっけ? 821蒸発事故」

「今回の事とは関係ないし、俺の事でもないぜ」

 俺は出来る限り平穏を装っていたが、それがきちんと出来ている自信は何一つ無い。

「まぁ魔法使いの家じゃ人の一人や二人殺して当たり前なんだろ? 気まぐれで殺したり殺さなかったり、まるでゲームだな。俺にとってはこの模擬戦で一生が変わるかも知れないんだぜ?」

「お前が倉守を殺して評価されたとしてもそれはお前の力じゃない」

「そんなの知ってるさ。

 でもまずは注目されないとな。俺はお前と違って金も才能も地位も無い。

 だから今回のことはチャンスだと思ってる。

 例え俺の実力が最終的に露呈してしまったとしてもコネとか作れれば今よりは絶対にマシになるからな。

 それに倉守は強くないが、今学年最強どころか学園内最強候補の一人であるお前のパートナーだ。魔法使いをチームで見る人なら、人を三十人殺すよりもよっぽど高く評価する」

 これ以上交渉の余地は無いとでも言うように、修也は自分の席に座りヘッドフォンを着け携帯電話を弄り始めた。



 模擬戦は五時間目から行われる。

 昼休みに作戦を伝えたけれど、きちんとやってくれるのだろうか。ハッキリ言って心配だ。

 模擬戦は学校近くにある闘技場で行われる。

 魔法特区内にはスーパーと闘技場が同じ数だけ存在していると言われている。

 なぜそんなに有るかと言えば生徒の自主練から、中小企業が魔法道具の実検に使ったり、生徒同士が明日の昼食代を賭けて勝手に戦ったりと、多種多様に使われているからだ。

 もちろん当然魔法特区内にある魔法高校も闘技場のお世話になる。

 闘技場内は一般的な体育館とそこまで変わらない。あえて言うなら真っ平らであるべきなのが体育館で、真ん中に大きなリングが設置されているのが闘技場だ。

「模擬戦の前に和声魔法の手順について復習するぞ。

 まずチームはイン、アウトの役割を分担して行う。

 まずインは大気中にあるマナを体に取り込む、取り込んだマナを転調回路(アンプ)(アンプ)に入れて魔力に変換しアウトに対して魔力を送る。

 アウトは結合指輪から送られてきた魔力を混ぜ合わせたり、発動を指定したりして魔法を実行させる。

 例えば火属性の魔力が送られてきたとしよう。アウトは体内で発動させることによって、自らの身体能力を向上させることも出来るし、体外に発動させることによって火を起こすことも出来る。実際に行うタイミングを指定してずらせば遅延魔法になる。

 もちろんそれらを同事にこなすことも出来る。慣れれば、火と水を同事に体内で発動させつつ、風と土を混ぜた魔法と金属性の魔法を体外で使うことだって出来る。

 勝利条件は、相手が魔法を使えない状況になった時だ。死んだとき、気絶したとき、などがあげられるが、基本的には相手の結合指輪を外すことが基本になる。

 今回の模擬戦はドールマスター戦で戦う。ドールマスター戦について、くらも……火野答えろ」

「は、はい!?」

 話を全く聞いてなかった。

「じゃあ倉守起きてるみたいだからお前が答えろ」

「ドールマスター戦はお互いのアウトだけが戦うルールです」

「初めてまともに答えてくれて先生はとても嬉しいけど、倉守は体育の時間だけ張り切る小学生と一緒だな」

 そこかしこで失笑が漏れた。

「ルール的にインはどこにいても良いが、結合指輪で魔力を渡すときにお互いの距離が遠ければ遠いほど貰える魔力が減っていく。

 逆に近ければ、魔力の減りを最小限に防げる、さらに手を繋いでいる状態だと結合指輪なしでも魔力を減らさずに受け渡す事が出来る。

 ドールマスター戦のルールでは手を繋ぐことがリングの中に入るのと同じ行為になっているので出来ないが、出来る限りパートナーの近くにいろ」

 倉守と修也はリングにあがる。他の生徒もリングの周辺に集まってくる。

 本来のウィザードのリングならば一辺が88メートルで出来ている正方形の物を指すが、この闘技場にあるのはその半分である44メートルの物だ。それでも十二分に大きいように感じられるかも知れないが、一流の魔法使いにとっては鳥かご並みのサイズだ。

 倉守と修也はお互いに20メートル離れた位置で対峙する。

(昼休みに言った作戦大丈夫だな?)

 俺は結合指輪越しに倉守に話しかける。

(大丈夫!)

 ホイッスルが鳴り響いた。


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