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期末試験編5

 ついに倉守がカツカレーの前に敵前逃亡しやがった。

 願掛けぐらいいいだろ? 一応カツカレー、カツ丼、トンカツで微妙に変えて出してるんだし、この試合は勝ちたいって試合の時にしか出してないし、つまり大半の試合の前日に出したって事でもあるけど。

 しょうがないので、俺は一人でカツカレーを食べると、倉守の分をラップして冷蔵庫の中につっこんだ。

 絶対に退学させないなどと大見得を切ってしまっているけれど、現実問題かなり難しい。 八百長も一応考慮に入れてみたが、全勝する気満々の風間が勝ちを譲ってくれるわけもないし、お金の力で買収できるような相手でもない。

 となると、やはり樹里をどうにかしないといけないのだが……

 悩みに悩んでもしょうがないので、気分転換にお風呂に入り、気分転換に一人でゲームをして、気分転換に―――と、時間だけ浪費されていく。

「好きだ結婚しよう」

「好きだ――――結婚しよう―――」

「好きだ!!!!!!」

 自分の声がICレコーダーから聞こえる。

 どのイントネーションが良いかを調べるために録音して聞き直している。

 言うだけでも精神が削れていくのに、それを録音して一人で聞いていると言う事実がさらに俺の精神を削り取っていく。

 鳥肌がヒドイデス。

 チキン肌と言わずにそのまま鳥になって国外逃亡したい。

 それがダメなら焼き鳥になりたい。出来れば塩で。

 駄目だ……思考が色々狂ってきてる。

 思考を変えなければいけない。

 別に樹里を五秒止めるだけなら、言葉じゃなくても良いはずだ。

 樹里の苦手なカエルを投げつけ…どうやってカエルを確保してそれを樹里に投げつければ良いんだ? 途中で風間に打ち落とされるのが落ちだ。

 そうだ。樹里と風間の部屋に大量のカエルをぶちまければ、戦意喪失したり、あわよくば遅刻したりするのでは無いか? 模擬戦と違って、後日再戦なんて優しいシステムなんて無いのだし。

 そうか遅刻させれば良いのか!

 他の対戦相手は友好関係に無かったから出来なかったが、樹里と風間が相手なら出来るはずだ。それに明日の試合は朝の十時とまだ遅刻しやすいタイミングだ。昼の一時とか三時とかは難しいが十時ならいける。

 俺は「樹里の所に行ってくる。火野昇」と書き置きして樹里の家に向かった。


 事前連絡無しで樹里の所に尋ねたら風間が不審がるかと思ったが、そんなことは無くすんなり上がらせて貰えた。

 言い訳も一応考えてきただけに肩すかしだ。

「喰うかチーズカツカレー? わたしと樹里の分しかカツ買ってないからチーズカレーだけど」

 樹里と風間は遅めの夕食を取っている所だった。しかもメニューがほぼ一緒だ。

「遠慮するよ…食べてきたし」

 まさかチーズが乗ってるか乗っていないかだけで、負けた気分になるほど落ち込んでいるとは思わなかったよ。

「てめえ!また名前で呼ぼうとしただろ!?」

「一言も言ってないどころか思ってもいなかったぞ!レンアイちゃん!」

「だから名前で呼ぶな!」

 じゃあ名前を呼んで欲しそうなフリも止めて欲しい。

「それにしてもまさかこんな所で勝負を仕掛けてくるとは、わたしは思わなかったよ。ここ数週間だけで魔法使いってか策士としての評判がウナギのぼり、いや、鯉のぼりなだけあるぜ」

 まさか明日の試合を遅刻させるために、目覚まし時計の時間をずらそうとしていることがバレてるのか?

「ゲームでわたしを完敗させる事によって精神的打撃を与えて翌日の試験でわたしをボッコボコにするんだろ?」

 そんな自信満々にコントローラーを握ってても俺はやらないからな。

「…………そんな事で精神的打撃を受けるな!!」

「でも、ノボりゅんだってチーズカツカレーを見たとき絶望してた! モンドセレクションに受賞できそうなレベルで絶望してた! や~いや~いトンカツもチーズも買えないレベルの貧乏に~~ん!!」

「ノボりゅんって何だよ!? しかも絶望なんてしてねぇ!」

「ねぇねぇ、ウナギのぼりは解るけど、評判が鯉のぼりってどういうこと?」

「めんどくさそうだからわざわざ無視したボケを一々回収しないでくれ!」

「策士ノボ太郎をボッコボコにしたわたしが詳しく解説しちゃうとだな――」

「するな!!」

 仲裁でもするように俺の携帯が受信音を鳴らす。曲はアニメの主題歌だけどまぁこれぐらいならセーフだ。……セーフだよね?

「乙女なわたしよりも、電話を優先するのか!?」

 三次元よりも二次元の方が大事に決まってるだろ? と思いながら俺は電話に出た。まぁ電話の先も三次元だけどさ。

「やぁボクだよ。君の許嫁の叔父だよ」

 氷河氷柱だ。おじさんが出てくると言うことは悪いことが起きる予兆と言うわけだけれど、すでに悪いことのまっただ中だ。

「おじさんいい大人なんですから普通に名乗って下さいよ」

「子供の心を忘れないと言って貰いたいね」

「大人に成れない子供なだけでしょ」

「楽しい会話はここまでにして、今一人かい?」

 俺は樹里の所に居ると言おうとしたが、樹里は携帯の画面を見せつけてきた。

画面には「今一人って言ってね♪」と書かれており、樹里は作ったような綺麗な笑顔をしていた。

「……一人だけど」

「なるほど、なら気兼ねなく話せるな。倉守が生死の境をさまよってる。すぐに来てくれないか?」

「倉守に何しやがった!!!!!!」

 俺が怒りをぶちまけようとしたが、携帯電話を引きはがされた。

「おじさん。一体何をしたの? ……ノボルには嘘を言って貰うように頼んだの。………それじゃノボルは怒らないよ? それに会話が多少漏れてた。………本当の事を言って。……………おじさん」

 俺の怒りが急激に引いていく。代わりに樹里がとてもすてキナエガオニナッテマス。

 かざまはぬれた子犬のようにふるえながら見てました。

「次同じようなことをしたら有ること無いこと全部世間にぶちまけたあげくに、学校どころか、氷河の家からも追放させるよ? これでも随分優しいよ? だって、世間からは見放されるけど世界にはとどまっているんだから」

 樹里は捲し立てるように言い終わると、俺に携帯電話を返した。

「………恨むぞ。とにかく、詳細はこっちに来てから言わせて貰う。大学の第三工学魔法研究棟に来てくれ。ボクはロビーにいるから来ればすぐに解るはずだ。」

「解った」

 俺は携帯電話を切った。

「樹里すまないが、箒を貸してくれないか?」

「イヤ」

 樹里はきっぱりと答えた。

「倉守が危ないんだよ。詳細は解らないけどとにかく行かないといけないんだ」

 この時間ならまだ電車はあるけど、俺は待つなんてが出来なかった。

「だって私が乗せて行きたいから、それにおじさんにお灸を据えないと」

「ならわたしも行きたい。ミルキーウェイなら頑張れば三人乗りいけるって!」

「ごめん。私とノボルの二人で行きたいの。それに帰りはみみちゃん乗せていかないと」

「……そっかわかった」


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