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第一話 螺旋図書館42階司書室

「ここかなぁ……」

 ここは、とある山奥にあるレイフォース学園の螺旋図書館42階司書室。ドアの前にはご丁寧に張り紙があった。

『おなやみそうだんしつ!! はいるまえにノックよろしく!!』

 と、乱暴な字で書かれていた。

「なーんか……胡散臭いですなぁ」

 ドアの目の前に立つ、茶髪の女生徒は躊躇していた。その理由は明白であろう。

「んぅー」

 十秒ほど悩んだ後に、ノックをしてみることにした。

「もし、駄目そうだったら帰ればいいんだよね」

 彼女は能天気に物事を考え、考える前に行動といった、短絡的に行動するタイプだった。

 コン、コン。扉を叩く乾いた音が聞こえる。

「いないのかな?」

 再度扉を叩くが、扉の向こうで動く気配は無い。女生徒は首を傾げ、ドアノブを回してみた。

「おっ、開いてます。開いてますよ」

 返事が無かったがとりあえず入ることにした。

 中には、机に足をのせ、偉そうに本を読んでいる男がいた。右手中指に銀色の指輪をはめていて、首には黒いレザーの首輪をし、その首輪に黒い南京錠が取りつけてあった。

「……?」

 しかも、本といっても週刊で発売される漫画誌であった。それらの要因が重なって、彼が例の司書であると思えなかったが、左腕に特別司書と書かれた腕章をしていたのでそうであると確信した。

「んっ……?」

 制服を着崩している男は、彼女の存在に気づくと矢継ぎ早に声を上げた。

「こらぁ!! 返事もしてないのに勝手に入るんじゃねぇぞ! さては、狼藉ものだな?」

「ふぇ?」

「者ども出会え出会えっ! この者を引っ捕らえろッ!」

「ひぃ! お許しを~~!!」

 男のいきなりの剣幕に、部が悪いと思ったのか、彼女は一旦退却した。ドアの前で深呼吸をする。頭も幾分か冷静になっていった。

「あれ、わたし……ノックしたよね?」

 自らに落ち度はないことを悟り、もう一度訪ねるためにノックをすることにした。

 コン、コン……

 しかし、返事はない。何度も繰り返すが返事はない。そうしていると、彼女の胸にふつふつと浮かんでくる想いがあった。

(こうなったら維持でも返事をさせてやる!)

 どうやら、彼女の選択肢には帰るというものはなく、意固地になっているようだ。

「あっ!」

 そこで、彼女は先ほどの男がいい放った言葉を思い出していた。

(そっか、入らなければいいんだよね♪)

 おもむろにドアを開けた。

「入ってもいいですか?」

「はっ?」

「入っていいっすか?」

 男は迷惑そうな表情を浮かべていたが、彼女の演技かかった物言いに困惑していた。それに、彼女は言いつけ通り、まだ部屋に足を踏み入れてなかった。

「……」

 もちろんそれは、屁理屈であるとは双方理解している。だがそれは、彼も同様だ。ノックの音が聞こえながらも返事をせず、返事をしていないからといって部屋から追い出そうとした行為も同じようなものだ。

「入っていいですかぃ?」

 三度目の物言いに男は、困惑しながらも頷いたのであった。






第一話 螺旋図書館42階司書室







「ふぅ……」

 男は、先ほどの彼女と向かい合うように座っていた。三人が楽々座れるような二つのソファの間にはローテーブルがあり、二人分のお茶と菓子が乗っていた。

「おっとこれは、番茶ですね。これまた渋いチョイスですなぁ」

 彼の目の前に座る彼女は、完全にリラックスしながらお茶と菓子に手をつけていた。

「はぐはぐ……あはっ。このチョコおいしぃ!」

(なんだこいつは)

 男は呆れていた。彼にはするべきことがあった。日課である漫画誌を読むことだった。

「で、あなたのお悩みは何でしょうか」

「あっ、すいませんすいません!」

 彼女は自分が何をしにきたのか今さら気づいたらしく、姿勢を正した。

「わたしは、2年の周防すおうあやめです…………えぇと」

「おれは、鴇田瑠璃ときたるり。みての通りここの司書だ」

 あやめの様子を見て、瑠璃は自らの自己紹介をした。さらに続ける。

「わかってるかもしれないが、おれが受ける相談はここでしか解決できないような類いだ。それは理解しているのか?」

「はい」

「ならいい、続けてくれ」

「わかりました」

 数秒の沈黙の後、彼女は語りだした。

「最近、悪夢……のようなものを見るんです」

「悪夢? それはただの夢じゃないのか?」

「わたしもそう思っていたんです……でも、いつも見る夢が同じで、まるで夢のように思えないほどつらいんです」

「へぇ……」

 瑠璃は、他人事のようにお茶を飲みながら目の前のあやめを観察していた。

「その夢は、前に見たことはあるか?」

「ない、です。でも……昔、一時期その人の……」

 そこで言葉は途切れた。

(判断できないな。材料は乏しいし、この様子から見ると、ただ精神的に不安定になっているようにも思えなくもない)

 そう考えたが、この話に入る前の彼女がそういった様子を見せていないことが気掛かりだった。

(しょうがない、か。本当はあまり、込み入った話にはかかわり合いたくはないんだけど。取り返しのつかないことになったら、あいつとあいつらがうるさいだろう)

「なるほど。だけど、それだけじゃちょっとわからない。いくつか質問してもいいか?」

「は……はい」

 彼女は、乗り気ではないようだった。よほど、詮索されたくない事情があるように見える。しかし、そのことに気付きながらも、判断が出来ない以上聞かざる負えなかった。

「その悪夢を見る直前に何か、珍しい体験や、何か拾ったとか、そういうことはなかったか?」

「えと……」

 あやめは、しばらく思い悩んでいる様子を見せていた。

「あっ」

「なんでもいい、とりあえず話してくれ」

 思い当たったことがあるようなので、瑠璃は返事を促した。

 こういった場合、特別なケースから日常的ななんでもない出来事、様々な場合があるが、なんらかしらの起因があることは瑠璃も理解していた。そのために、ほんの些細なことでも解決の糸口となるケースが多いというわけだ。

「えと、関係ないというよりも、いまいち記憶があやふやなんですけど……いいですか?」

「あぁ」

「手鏡を、自分の部屋の前で、拾ったような気がします」

「…………拾ったような?」

「はい」

 あやめは続けた。

「拾ったはずなんですけど、手元にはありませんし、どんなものだったかもいまいち思い出せません。わかることは、とてもきれいな手鏡、ということだけです……」

「ふぅん、それ以外に何か変わったことは?」

「えと……ない、です」

(とてもきれいな手鏡、か……うむ、わからん)

 とりあえず、瑠璃は要所をメモ帳に記しておくことにした。

「なるほど……次は――――やっぱいい。ちょっと着いてきてくれ」

 本来なら、悪夢についても聞くべきところなのだが、瑠璃は無理に聞く必要に無いと思えた。おそらく、鏡と、夢という点から候補はいくつも絞れるであろうという考えだった。

「は、はい!」

 瑠璃が立ちあがったので、あやめも続いて立ち上がった。二人は部屋を出て、中央階段の方へと向かった。




 螺旋図書館、というのは名ばかりではない。膨大な数の本を備えているレイフォース学園螺旋図書館には、螺旋状に階段が渦巻いていて、それに沿うように大量の本が並べられている。それに加えて、一階及び地下、五階区切りの広間にも、大量の本が貯蔵されている。それらは50階にわたり、世界一の超大型図書館とも噂されていた。

 二人は、広大な本の世界を眺めながら階段を下りていき、40階へとたどり着いた。五階区切りに、エレベーターの乗り場があるのだ。

 瑠璃は、二つあるうちの右側のエレベーターを呼び寄せるためにボタンを押した。

「司書さん、大丈夫なんですか?」

 あやめは、職員用と書いてあったので尋ねた。

「あぁ」

「へぇー、司書さんってすごいんですねぇ」

「あのな、馬鹿にしてんのか? この図書館で働いてる職員は司書しかいねぇだろ……」

「あっ、すいませんすいません…………あはっ」

 エレベーターが来たので、二人は乗り込んだ。瑠璃は51階のボタンを押す。

「あれ……? この図書館って、50階までじゃないんですか?」

 違和感に気付いたあやめは、目の前の彼に問いかけた。

「まぁ、な。でも、この学園なんだから、そういうことがあってもおかしくないだろ?」

 51階は、限られた人物しか入室することのできない階だ。職員用といっても、数名しか使うことが許されていないからだ。

 だが別に、51階の存在自体を隠しているわけではない。51階は図書室ではなく、螺旋図書館を管理する人物が住んでいるからだった。

「そう言われればそですね。この学園は不思議なことだらけですからねぇ。でもさすが司書さん! 極秘の51階に入れるなんてすごいっすなぁ!」

「だからナチュラルに馬鹿にすんじゃねぇ。司書が図書館を掌握してないで、どこが司書だよ……って、着いたな」

 エレベーターのドアが開いた。そこには常人には信じがたい光景が広がっていた。

「ふわぁ……す、すごいっす! これ、すごいっす!?」

「まぁ、そうだよな」

 まず目に入る物は、中央にある部屋いっぱいの大きな噴水のようなものだ。これの不思議なところは、三段重ねの見事な水だけの円形型タワーが成り立っていることだった。

「え…………えっ? なんなんすか、なんなんすか!?」

 次に目に入るのは、彼らを誘導するように伸びる赤い絨毯だった。そこにあるはずが無かったのに関わらず、浮き出てきたように見える。

 そして、その赤い絨毯に続くように、水のタワーが割れて行き、前方にある重々しい黒塗りの扉が目に入った。まるで、そこに来ることを促すようで、不可思議で、不気味な現象だ。

「まぁ、落ち着けよ。この学園で起こることを真に受けたらやってらんないぞ」

 瑠璃がそう言うが、彼女には信じ難かったようで、目を擦っていた。

「そういうレベルじゃねぇ! 真に受けるとか真に受けないとかそういうレベルじゃ…………というか、司書さん」

「なんだ?」

「さっきから、まぁ、って言いすぎですけど。口癖なんですか? まぁまぁ星人ですか? 司書だからですか?」

「だからお前、さっきから軽いノリで馬鹿にしてんじゃねぇよ?」

「あわわっ、わざとじゃないんです、すいません。司書さんの目つきが悪くてどう接すればいいかわからなくて……」

「お前さ、完全にわざとだよな? 恐くじゃなくて悪いって時点で確信犯だよな? あと、意外と冷静だよな?」

 指摘通りあやめは、困惑していたのはほんの十秒程度で、一度歩き出してしまえば、見事に落ち着いていた。

「うわっ……ほんとにすごいですねぇ」

 それどころか、目をきらきらと輝かせ、楽しんでいるようにも思える。変わったやつ、と、瑠璃は思っていた。


 二人が重々しい扉の前にたどり着くと、まるで歓迎するかのように扉が開いていった。

「ふっ……もう驚きませんぜ」

 何が来ても驚かないと自信に満ちていたあやめだが、今度は違う意味で驚いていた。

「うわぁ。目が、目がおかしくなりそぅ……」

 中には広大な部屋が待っていたのだが、壁が不気味だった。言うなれば、本の壁になっていて、本棚があるのか区切りあるのか、果たまた無いのか、わからないほど本が一面にびっしり並べてあった。天井までは50メートルほどあるにも関わらず、構うことなく、寸分の開きなく本が並べてある。一言で言うなら異様な光景だった。

 そして、広大な部屋でありながら、天井に大きなシャンデリア、中央付近に高級感溢れる書斎机とそれに見合った椅子。その前に、二つのソファーと、間にあるローテーブルがあるだけで、瑠璃がいた司書分室を、そのまま広くしてしまったようで、スペースは膨大に余っている。 唯一の違いは、やたらと豪華なワゴンがあり、そこにケーキや高級菓子、紅茶、コーヒーなどといった物が置いてあるだけだった。

「メル、お客だ」

 椅子には、優雅に一人、小さな少女らしき人物が腰をかけていた。

「そう。じゃ、そこに……」

 らしき、というの彼女を見れば理解できる。長いきれいでサラサラの髪は、白く輝いていて、目は深海のように深い青色。それらの異様さをごまかすように、白いリボンのついた可愛らしいベレー帽を頭に乗っけている。妖絶さも、あどけなさも兼ね揃えていた。

「ほら」

「あっ、はい!」

 異様すぎるオーラを発する少女に、思わずあやめは見とれてしまっていたようだ。しかし、先ほどと違い、素直な感想を述べることはできなかった。

 あやめは、司書室の時のように、右手のソファーに座った。てっきり、瑠璃も同じソファーに座るものだと考えていたのだが、予想に反して瑠璃は反対側に座った。

 メルと呼ばれる彼女がどうするのだと考えていると、メルは立ち上がり瑠璃の座っているソファーへと腰を掛けた。

「なっ……!」

 思わずあやめは、声をあげてしまった。無理もない、メルは当然のように瑠璃の上に座ったからだ。

「なに?」

「……なんでも、ないです」

(まっ、そりゃあそうだ。そういう反応するよな、これは。)

 瑠璃は自嘲していた。

「……」

 あやめが絶句していたのは、少女が当たり前のように座ったからではなく、甘えるでもなく、物として瑠璃を扱っているかのように見えたからであった。彼を背もたれに使ってる彼女は、明らかに彼を所有物としていることが傍目には理解できる。まだ幼さの残る少女でありながら、少女さを感じられず、ただただ、すべてにおいて異様としか定義することが叶わないだろう。

「さてと、瑠璃?」

 物の言い方すらも、聞き手を服従させるような、絶対的な支配者であるかのような冷酷さがにじみ出ている。

「あぁ、わかった」

 瑠璃は、先ほどあやめから聞いた事を、断片的に要所だけ抜き取り彼女に話した。

「ふぅん……レイシスかレメシス。どちらかは断定できないけど、どちらかではありそうね」

「やっぱりそうか、サーチをかければ絞れるんじゃないか?」

「えぇ、お利口ね。ご褒美に私の飲みかけの紅茶をどうぞ」

「…………あぁ」

 少女が指を鳴らすと、デスクにあったカップがソーサーごとローテーブルに移動した。瑠璃はそれを、一口飲んだ。

「ふふっ……」

 妖しげな笑みを浮かべたのち、サーチをかけるために行動を起こした。

「Tips」

 少女の目線に、青い球体が姿を表した。

「Search 鏡、夢」

 彼女の問い掛けに、青い球体は異様なうねりを見せて、彼女にだけわかる結果を表示した。

「7……ね、瑠璃」

「あぁ」

 彼女は、あえて瑠璃に尋ねた。

 瑠璃もそう来ると考えていて、あらかじめ考えておいた質問をすることにした。今しがた、司書室で尋ねなかったのは、この部屋の方が彼女が素直に答えてくれるからだった。

「鏡を拾ったとき、お前は何を見た? ちゃんと覚えているはずだ」

 あやめはその時、自分自身の意識が戻ったように感じた。

「……」

 というよりは、行動する権利を与えられたような気分だった。

「わたし、自身」

「自分自身?」

「汚いわたしと、弟……」

 そこで話は終わった。瑠璃は頭の中で考える。

(汚いわたし、か。それははおそらく、根底に眠る意識、っていうところかな。後、拾ったものは、とてもきれいな手鏡。認めたくない意思から対比して、とてもきれいに見えたってことだろうか? いまいちわからないし、弟ってのもわからない。正直、予想はできないが……)

 瑠璃は考えを上手くまとめられなかった。あやめから聞きだすことはできるのだが、この場でこれ以上深い事情を聞くことは反則に思えた。 なのでしょうがなく、それらしいことを勘で言ってみることにした。

「メル。鏡、夢、後悔でどうだ?」

「Search 鏡、夢、後悔」

 再び青い球体はうねりを見せ、今度はさっきよりもはやく動きを止めた。

「残念、三件ね」

「そうか」

「ラストチャンスよ。レイシス、レメシス、どちら?」

 少女の質問に対して、数秒考えた後、瑠璃は答えた。実は、答えは既にわかっていた。

「レイシスだ」

「理由は?」

「おそらく、あの鏡は、彼女が無意識のうちに望む何かを見せて、どうにかしようとしているからだ。どうにか、までかはわからないが、つらい夢を何度も見せる辺り、そういうことだろう。レメシスならば、つらい夢を何度も見続けさせはしないんじゃないか?」

「…………及第点ね」

 少女は瑠璃に微笑んだ後、初めてあやめに意識を向けた。

「あなたに取りついているのは、真実の鏡というレイシスよ」

 真剣な眼差しをして、あやめにいい放った。

「レイシスである以上、後はあなた次第ね」










 予期せぬ現象続きで、すっかり疲弊しきっていたあやめを一階まで送り届けた後、瑠璃は再び51階の少女がいる部屋へと戻っていた。

「で、さっきのあれは回収しなくて大丈夫なのか?」

 先ほどとは違い、ソファーに向かい合わせで座っていた。彼女は優雅にコーヒーを飲んでいた。

「えぇ。人体にさして問題があるわけじゃないし、彼女の因果力がなくなってしまえば壊れてなくなるわ。さっきも言った通り、あくまでも彼女次第」

「ふぅん……しかも、メルが欲しいような物でもないと」

「えぇ。あんなカスみたいなレイシスを回収したって無駄よ、くだらない」

「うっわ、そっちが本音だろ……」

「何か言った?」

「いいえ、なんでもアリマセン」

 瑠璃も、目の前に置いてあった紅茶を飲んだ。たった今、自分で用意したものだ。

「ふぅ……てことは、今回は仕事なしか」

「ふふっ」

 怪しげな笑みに、瑠璃は思わず構えた。というよりも、自分が勝手に思い違いをしていることに気がついた。

「なんだよ。てことは、仕事しろと?」

「いいえ」

 指を鳴らして、瑠璃が飲んでいた紅茶のカップを引き寄せて彼女は九カップに口を当てた。瑠璃はその行動に、思うところはあっても何も言わない。

「求められたら、手伝ってあげなさい」

「求められたら……ね。といってもさ、おれ自身、レイシスに立ち会うのは初めてで、何をすればいいのかわからねぇ。レメシスは、風紀員のやつらに丸投げして終わりだし……」

「だからよ。いい経験になるでしょ?」

「なるほど、ね」

「一人でやるのよ?」

「あぁ……」

 メルの言い方に、瑠璃は呆れていた。

(いい経験、ね。あいつのことはどうでもいいってわけか)

 瑠璃が考える通り、メルはあやめのことなど心配していなかった。使えないレイシスである以上、瑠璃が失敗しようと成功しようと放置しようと、彼女にとって無関係であるからだ。まして、死ぬわけでもない。あくまでも、瑠璃が成長するためにとの、申し出だった。

(まっ、メルらしいか)

「じゃ、帰るよ」

「えぇ」

 瑠璃は自己完結し、自身が暮らす寮へと帰ることにした。

「はぁ……あいつが頼ってきませんように」

 秘かに願い、螺旋図書館を後にした。

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