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第四章

 ヒルドはエルダのもとにいた。

 囚われ、ヒルドはエルダからむき出しにされた敵意をくみ取り、彼女はチュールの顔を思い浮かべる。

「こわい、チュールさん、助けて・・・・・・」

「あんたが原因で、あの人はわたしを見てはくれない」

 電撃鞭をふりまわし、ヒルドを脅しつけるエルダ。

「あんたが死ねばいい。そうすりゃ、あの人はわたしを愛するしかなくなるからねぇ。おほほほ」

「死んでも死にきれないわよ、そんなんじゃ」

 ヒルドが言い返すと、エルダは鞭をヒルドに当てた。

 悲痛な叫び声があがる。

 それでもエルダはやめようとしなかった。

「おまえが憎い、憎い! ちくしょう!」

 愛に飢えた獣は、自分ではない愛される対象に狂おしい憎悪を抱く。

「わたしはね、ヒルド。おまえなんかよりずーっと、チュールを愛している。それにおまえは神ではない!」

 何度も何度も鞭をあてがうエルダ。

 既にヒルドは意識がなく、いたぶられても泣いたりしなかった。

「お仕置きだよ、お仕置きなんだよ、これは」

 エルダは肩を揺らし、自分に言い聞かせるように、牢獄を出て、鍵をかける。

「狂っている」

 ちょうどエルダの背後に、チュールが立っていた。

「チュール・・・・・・」

「狂っているよおまえは。エルダ」

 その視線は冷ややかだった。

 そう。

 チュールは元々、エルダを愛してなどいなかったのだ。

 それでも神々の決めた婚約者と言うことで、渋々結婚を決めていた。

「なのにこの有様とは。聞いてあきれる」

「聞いて。聞いてチュール」

 エルダの腕をひっぱたき、払いのけるチュール。

「うるせえ。ヒルドには二度と近づくな!」

 その表情はまさに、鬼の形相だった。

「許して、チュール。その子が悪いのよ!」

「ヒルドが何をした・・・・・・」

 エルダは泣きながら、

「あなたを誘惑したじゃない」

 と訴えた。

「いいや」

 と、チュールは首を横へ振る。

「ヒルドは俺を誘惑したんじゃない。――愛情をくれたんだ」

 慈しむチュールのまなざしの行方は、やはり自分ではなくヒルドへであると、エルダは唇を噛みしめてくやしがった。



「ふ。いやになるわね」

 エルダは未来を透視し、悲観に暮れていた。

 そして、是が非でもチュールの愛情を奪いたかった。

 ヒルドさえいなければいいのに、とそればかりを考える。

 どうすればあの子を消せる?

「ただ殺すのはつまらんだろ」

 エルダに知恵をつけたのはオーディンだった。

 彼女に向けて、えげつない微笑みを見せている。

「オーディン様」

「チュールからヒルドを引き離す最良の方法は――忘却」

 エルダは、あくどい笑みを漏らした。  

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