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プロローグ 杏香メモその1

4/8 晴れのち天気雨 


私は人間の女として15年生きてきた。花の女子高生の仲間入りした今でも愛だの恋だのには詳しくはないが、これだけは言える。私は恋愛に向いていない。


第一に、顔が良い人間にしか興味がない。平均以下の容姿は小数点のごとく無意識に視界から切り捨てしまうのだ。

見た目より中身が重要だと良く聞くが、そもそも見た目が良くない人間について知りたいと思わない、思えないのである。まずは、見た目。


第二に、私は捻くれてる人間が好きだ。素直な人間は信用できない。何でもかんでも思ったこと言うような奴の言葉には重みがない。新鮮味もインパクトも欠けている。羽のように軽い。どんなに素晴らしいセリフでもため息一つで飛んでいってしまう。その羽の行方は誰もわからない。少なくとも相手には届かない。きっと何を言われたのかすら覚えていないだろう。というか素直な人間特有の、嘘偽りなく自分の意見を言うことに対して抵抗がなさそうなのが気に食わん。本当に気に食わん。

人というのは腹の内で何考えているかわからないぐらいがちょうどいい。それに、そんな人間が長い時間をかけ信頼できるようなった相手だけ紡ぐ愛の言葉ほど、甘美な物はないだろう。少なくとも私はそう思う。


第三に、我が儘を受け入れてくれる包容力のある人がいい。私のためなら喜んで地獄に堕ちてくれるほど私のことを受け入れ愛してくれる人がいい。

私は自分を我が強いというか、我儘な人間だと思っている。だからこそ、他人の事情を顧みない事がしばしばある。直そうとした事もあるが、これといった成果を得られなかった。のでいっそのことありのままの自分を受け入れてくれる人を探した方が早いのではないのかと思い至った。


もちろんそんなわけが無いのはわかってる。周囲が変わるのを待つより自分を変える方が早いのは私でも理解している。でも、できないのだ。私は変わろう、変わろうと思っても変わるのは表面上の自分だけ。根っこの、私の“本質”という物は全くと言っていいほど変わらない。変えれないのだ。

それに、くだらない内省をメモに書き出して、それを一人で読み、書き直し、そして読み返す。納得いく物ができるまで繰り返す。誰かに見せるわけでも無いこんな物を。こんな陰気な趣味を持つ人間がまともに恋愛できるのだろうか。


私には少女漫画の主人公みたいな華やかな見た目も、天真爛漫さも、誰かを思いやれる心も、何もかも足りてない。

それなのに私はこの三つの条件がないと人を好きになれないなど宣うのだ。そして絶対に、提示した条件に合う人間がいたとしても、欲が出てより高い理想に当てはまった人間を望んでいくんだ。私は何一つ変わらず歳を重ねていく一方で。


だから、私は恋愛に向いていないのだ。理想を固めたような相手じゃないと愛せない、仮にいたとしても、長い時間愛せる自信もない。

きっと、私は教室でひっそり本でも読みながら、いずれ運命の相手を見つけ旅立っていくであろう幼馴染とぐうたら花の女子高生として生きる青春を無駄に溶かしていくのがお似合いなんだろうな。


まあでも、あいつと一緒ならそれも悪くないか。

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