第67話 宝箱階層と塩対応の冒険者
宝石ダンジョンの宝箱階層。床や壁に散りばめられた赤水晶や紫水晶が、淡く光を放ち、静寂の中に仲間たちの足音だけが響く。アイリスは銃を腰に構え、慎重に進む。
「ここが宝箱階層……期待通りね」
ガルドは肩に剣を担ぎ、リーナは盾を構えて前後を警戒する。アリエルは魔法で周囲を照らし、レオは結界で罠やモンスターの出現を感知する。
「まずは宝箱の安全確認から」
アイリスが仲間に指示を出す。宝箱は規則正しく並び、罠や結界が仕掛けられていたが、レオとアリエルの魔法、ガルドとリーナの警戒で無事に回収作業が進む。アイリスは宝箱を開け、希少宝石や素材を確認しつつアイテムボックスに収納する。
その時、廊下の向こうから声が聞こえた。
「ねぇねぇ、ちょっとご飯くれない?」
振り向くと、他の冒険者パーティが現れた。小柄な女性や少年も混ざり、手を差し伸べながらじっとこちらを見つめる。明らかにクレクレ行動だ。
アイリスは眉をひそめ、ガルドとリーナも視線を合わせる。
「……冒険者なのに、くれくれですか」
アリエルが小さく呟く。レオも杖を握りしめ、結界を少し強めた。
アイリスは作り置きのご飯をちらりと見て、心の中で判断する。カレー、オムライス、青椒肉絲、豚汁、唐揚げ、チーズハンバーグ、ふわふわパン――どれも仲間の士気のために確保したものだ。
「……無視でいいわね」
アイリスは低く決断し、仲間に目配せする。ガルドとリーナも頷き、アリエルは補助魔法で料理の温度を保ちつつ、レオは結界で安全を確保する。
クレクレ集団は期待に満ちた目で近づくが、アイリスは微動だにせず銃を腰に下ろしたまま。ガルドとリーナも一歩も譲らない。アリエルとレオの魔法が自然に防御を強化し、誰も食事に手をつけられない状況を作り出す。
「……ま、仕方ないわね。あくまで探索優先よ」
アイリスは仲間に向かって呟く。クレクレ集団はしばらく見つめていたが、反応がないので諦めて宝箱階層の端で待機するように退いた。
食事を再開した仲間たちは、静かに深呼吸をして士気を高める。ガルドは熱々のハンバーグに頬を緩め、リーナはパンを口に運ぶ。レオは結界の力を感じながら味わい、アリエルは補助魔法で風味を保つ。
「低階層の宝箱階層でも、クレクレ冒険者が来ると戦略が少し変わるわね」
アイリスは銃を腰に置き、仲間たちに指示を出す。宝箱の回収は続き、ブルーダイヤや赤水晶、紫水晶の混合物を順調に回収できた。アリエルとレオの魔法が宝石を安全に取り出すのを助け、ガルドとリーナは警戒を怠らない。
クレクレ集団は遠くから視線を送るが、アイリスたちが塩対応で無視しているため、宝箱にも手を出さずにいる。逆にその状況が仲間たちの士気を高め、笑みと余裕が広がる。
「さあ、次は深部ね。ここでの戦略と経験を活かして、安全に進むわよ」
仲間たちは頷き、宝箱階層の奥へ再び進む。美味しいご飯で士気を上げ、クレクレ冒険者の塩対応による静かな優越感も加わる。この階層は宝石の光と仲間たちの笑顔で満たされ、探索の緊張感と充実感が混ざり合う場所となった。
夜のダンジョンに、宝石の光と士気、そして塩対応の余韻が漂い、アイリスたちはさらなる深淵へと歩を進めていくのだった。




