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溺れる日記  作者: 揺蕩う夜
第四部 記録者
10/50

第三章 誰かが書いていた

翌朝、私はもう一度、あの家を訪れた。


午前中なのに、曇りガラス越しの光はくすんでいた。

空気が昨日よりも重い。

玄関のあたりに立つと、ひとつ息を吐くごとに胸の奥が冷えていく。


前回気になっていた床の補修箇所には、今回も微かな“軋み”があった。

軽く足を乗せると、コン、と低くくぐもった音が響く。

音は厚みのある何かを覆い隠しているようだった。


床下に何があるのかはわからない。

だが、その場を離れようとすると、ふと奥の押し入れが気になった。


中は空だった。

……はずだった。


目を凝らすと、板の隙間に何かが挟まっている。

指を差し入れ、そっと引き抜いた。


それは、湿り気を帯びた革張りのノートだった。

サイズは手帳より少し大きい程度。

表紙には何も書かれていない。


私は床に座り込むと、ノートを開こうとした。


その瞬間、スマートフォンが鳴った。


編集部からの着信だった。


「……はい」


簡単なやりとりを終え、ふと気づくと手元のノートがじんわりと湿っていた。


ページをめくったわけでもないのに、紙の端がわずかに波打っている。


直感的に、私はノートをバッグに押し込み、家を出た。


玄関の扉を閉めたとき、背中に冷たい気配が残っていた。


このノートは、ここで読んではいけない。


そんな予感が、拭えなかった。


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