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冬の二面性  作者: ZetsubØ
~Chapter Three~
32/50

写真と冷たい視線

 月曜日の朝はいつもより冷たく感じられた。薫は家の砂利道から自転車を押し出しながら、その理由を考えていた。単に天候の変化によるものなのか、それとも今日という日が持つ重みが、周囲への感覚を敏感にさせているのかもしれない。何しろ、写真を提出し、それが直に認められなければ、この部活には入れないのだから。


 彼女の自信満々で、そしてあの怖さ...それが学校での一日をとても長く感じさせた。普段なら涼真のいつもの馬鹿話に耳を貸すところだが、今日はそんな余裕もなかった。代わりにカメラに何度も目をやりながら、それが壊れていないか確認したり、撮った写真が全部酷いものでないか心配していた。


 当然のことながら、二人の友人はすぐに異変に気付いた。薫が静かに物思いにふけるのは珍しくはないが、今日の彼の様子は明らかにいつもとは違っていた。


「薫、薫ぅ……僕と聡介のこと、今日一日中無視してるじゃん。なんでまた僕に冷たいの?もしかして、あの女子たちが僕らのBL描き始めたから?」


 その一言に薫は驚き、横目で涼真の机を見た。「何て言った?マジで僕らのBL描いてるやついるのか?涼真、頼むから冗談だと言ってくれ……」


 涼真は、薫が既に知っていると思い込んでいたようだが、更にからかうことに決めたらしい。にやりと笑って椅子にもたれかかると、こう続けた。「うん、有名人になったんだよ、薫。すごいよな、これは。あ、もしかしてラブレターが下駄箱に入るのも時間の問題かもね?」


「涼真!全部お前がいつも僕と馬鹿みたいに絡むせいだろ!今度からもっと強く殴るぞ……」薫はため息をつきながら髪を掻きむしる。「っていうかさ、それならお前と聡介のBLにすればいいじゃん?」


「僕と聡介?ははっ、それはないわ。だって彼、絶対喜ぶし。」


「喜ばねぇよ!」静かに二人のやり取りを見ていた聡介がついに口を開いた。いつもの落ち着いた声だが、涼真への若干の苛立ちが含まれている。「薫、どうしたんだよ。今日一日中ぼんやりしてるし、涼真の馬鹿話にも全然反応しないじゃないか。」


 薫は答えを躊躇い、誤魔化すか正直に話すかを悩んだ。肩にかけたカバンのストラップを握りしめながら、カメラの重みが現実に引き戻す。「いや、大丈夫。ただ、ちょっと考え事してて。」


 涼真が机越しに身を乗り出し、にやにやと笑いながらこう言った。「へえ~?もしかして彼女でもできた?隠してるんじゃないの、薫ちゃん?」


 その言葉に薫は思わずむせかけ、教室で声を上げるのを辛うじてこらえた。鋭い目つきで涼真を睨む。「お前さ、本気で僕に彼女がいると思うか?」


「ふふふ…そうだなぁ……」涼真は考えるふりをしながら椅子を揺らし、悪意のある笑みを浮かべた。「詩織先輩とかどうだ?金曜日、君が彼女と一緒に歩いてるの見たけど、あの時に告白されたんじゃないの?『あぁ、薫くん、大好きなの~』みたいなさ。」彼はさらに笑いながら付け加えた。「詩織もうウェディングドレスも用意してるんじゃない?」


 薫は頭を抱えながらうめいた。「涼真、お前ほんと馬鹿だよな……あんな人が僕みたいなのに興味持つわけないだろ。」


 聡介も頷き、腕を組んだまま少し残念そうな口調で言った。「その通りだな。詩織先輩は生徒会長だぞ。残念ながら薫の恋愛沙汰なんかより、もっと大事なことがたくさんあるだろう。」


「おい!」薫は二人を睨み返しながら怒鳴った。「もういい、今度こそお前ら二人とも茂みにぶち込んでやる!」


 そんなやり取りをしても、時間の流れは遅いままだった。涼真と聡介のふざけた会話が気を紛らわせてくれるとはいえ、薫の胸に重くのしかかるプレッシャーは消えない。時計を見るたびに、それは処刑の日へのカウントダウンのようだった。


 放課後のチャイムが鳴り響いたとき、薫はまるで死刑台へ向かう囚人のような気分だった。カバンを肩に掛け、二人に簡単な挨拶をして教室を出る。「詩織先輩に指輪買うの忘れるなよ!」という涼真のからかいも無視した。バカだ、本当に……


 部室のドアの前に到着すると、しばらくその場で立ち尽くしてしまった。直さんが彼の写真を見て、部屋の窓から放り投げるような想像が頭をよぎる。もしかしたら、彼女はそれを嫌うかもしれない。でも、彼女が言ったのは、カメラを使いこなせるようになることだけだった…たぶん。そして、案外、そんなに酷くないかもしれない。


 薫は意を決してドアを押し開け、中に足を踏み入れた。椅子を引くかすかな音が聞こえ、彼の視線はすぐに部屋の中を巡った。


 もっと人がいると思っていた。だが、そこにいたのは直一人。そして、机に座り、ノートに目を落としている霞の姿。


 相変わらず怖い雰囲気を纏ったまま、直は部屋の向こう側から薫を見つめた。「遅いんだけど、バカ…」


 薫は言い訳しようと口を開いたが、その前に霞が顔を上げ、彼を見た。その驚いた表情は薫の驚きとよく似ていた。霞…やっぱりこの部に入ってたんだな。なんだか居心地が悪いというか…いや、むしろ不思議な気分だ。本当にここにいるんだ。

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