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冬の二面性  作者: ZetsubØ
~Chapter Three~
22/50

穏やかな朝に

 家。


 この壁は、彼女がどれほど変化を望んでも、『家』のままであり続ける。少なくとも、学校がまた始まった。


 それは、彼女が望むような新しい展開ではないかもしれないが、それでも一つの区切りにはなる。同じ町を毎日同じように歩き回る気まずさを和らげてくれる。欠点だらけの学校でも、そして本当は戻りたくないと思っていても、そこで過ごす残りの時間を過ごすための悪くない道しるべとなる。


 霞は静かにため息をつき、特に何かを見つめるわけでもなく、ダイニングチェアにほんの少し体を揺らして座っている。カーテン越しに差し込む朝の光が、電灯では届かないところを淡く照らしている。手にはカメラをゆるく持ったまま。


 昨夜の祭り。彼女が撮影を任されたその祭りは、今年はほんの少しだけ違っていた。カメラのソフトなクリック音とともに画面が明るくなり、彼女の指がゆっくりと撮影した写真をスクロールしていく。


 焚き火のオレンジの輝きと、それと対照的な暗い夜空。露出でぼやけた踊る人々の姿が、この小さな画面に時間を切り取られている。ほかにも、小さな屋台の光景が、提灯の明かりに照らされた一瞬を収めている。


 そして、彼女はほとんど撮った記憶のない一枚の写真で動きを止めた。ブレていて、まるで動きの途中のようだ。階段の上からのような視点で撮られた写真。彼女は少し首を傾げ、指をボタンに軽く置いて考え、ようやく思い出した。


 あれは、あの男の子に声をかけられた時に撮ったに違いない。木漏れ日薫――記憶が正しければ、そう名乗っていたはずだ。彼とはいったい何を話したのだろう?詳しくは思い出せない。ただ、誰かが自分に話しかけてくれたことに感謝していたことだけは覚えている。


 それに、彼はいい人に思えた。大声を出すわけでもなく、何かを求めている様子でもなかった…。


 おそらく、それが今年の祭りを少しだけ違うものに感じさせた理由だろう。単純なことだけど、義務感ではなく誰かに話しかけられることが、安心感をもたらしたのかもしれない。それが何に対するものかは分からないが、それでも心地よい出来事として残っている。


 ただ、振り返ってみると、もう少し何かを話していればよかったとも思う。言葉は素敵なものだけれど、それ以上に素敵なのは、その人について知ることだ。


 霞はもう一度ため息をつき、階段の写真に目を留めたまま、カメラの縁を親指で軽く叩く。考え込むような表情で。彼が最後に言ったのは何だっただろう?「また会おう」みたいなことだったような気がするけれど、記憶はもうすでにどこか遠くなっている。


 首を振り、カメラの画面を閉じる。それについて考え続ける必要はないのに、その思いは頭の中に残ったままだ。彼女は椅子から立ち上がりながら自分に言い聞かせる。今日はまた学校の日。


 これから続く多くの日々の一つに過ぎない。だからきっと、彼にまた会う時間はあるだろう。彼が自分にとってどんな存在になるのかは分からないが、今の浅い関係ばかりの人たちとは違う誰かであればいいと思う。

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