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冬の二面性  作者: ZetsubØ
~Chapter Two~
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夜空と火の粉

 もちろん、そうではない。三人はただそこに座り、いろいろな無関係な話をしているだけだ。まあ、話しているのは聡介と涼真だけだが。薫はというと、群衆を眺めているだけだ。


「詩織を見かけたよ。邪魔しに行ってもいいかな?何か面白いものを持って帰ってくるから、信じて。」涼真がどこかを指しながら、何か企んでいるようにニヤリと笑う。


 薫は手をゆるく振り、全く興味を示さない。同様に聡介も同じだ。「好きにしろよ涼真。でも彼女に嫌われるようなことはするなよ。」


「そんなことするわけないだろう~詩織は実は俺のこと好きなんだから、信じてくれ。」立ち上がりながらウィンクし、階段を軽快に下りて行き、学生たちの群れに消えていく。残されたのは薫と聡介だけだ。


 だが、祭り全体への明らかな興味のなさが薫の顔に表れているのを見て、聡介は少し困ったように頭をかく。ただ黙って彼と露店の間を見比べるだけだ。


「薫……お腹空いた…」


「じゃあ食べ物を買ってこいよ。」


「でもそうするとお前を一人にしちゃうだろう...無理やり連れてきたんだから、それは失礼だよ。」少し恥ずかしそうに、聡介は襟をいじる。


 軽く笑いながら、薫は彼の脇腹を小突く。「お前は本当に優しいな。いいから食べ物買ってこい。罪滅ぼしに俺の分も何か持ってきたらいい。」


 聡介は一瞬ためらうが、ついには小さな笑みを浮かべてうなずく。「わかった、わかった。美味しいものを見つけてくるよ。絶対どこにも行くなよ?」


 薫は手を振り払うようにして言う。「はいはい、どこにも行かないから。早く食べ物買ってこいよ。」


 聡介が立ち上がり、階段を降りて露店の方へ向かうと、予想通り薫は一人残される。彼はため息をついて手のひらを後ろについて寄りかかる。こうなることはわかっていた。祭りの音を聞きながら家に帰るのを待つだけだ。


 だが、空がすっかり暗くなり、祭りが進むにつれて人々が落ち着かなくなると、焚火に火が灯される。積み重ねられた薪が一気に燃え上がり、それを見守る人々の歓声に押されて炎がさらに高く舞い上がる。


 それは確かにいい景色だ。心地よい燃える木の音や香りも加わって、薫は思わず見とれる。だが、同時に胸の奥に消えない感情が湧き上がる。何かが変わることを願っているような気持ちだ。もっとも、これから同級生たちの痛々しい踊りを見る時間を耐えなければならないのだが。


 そんなことを考えると、自分がまるで偏屈な老人のように感じる。だが、仕方ないだろう?嫉妬しているわけではない…涼真みたいに詩織を追い回して、ダンスに誘うようなことはしたくない。それでも、彼らの楽しむ姿に少しだけ羨ましさを覚える部分もある。彼らのように今この瞬間に没頭できるその能力が。しかし、もう一方では距離を保とうとする自分もいる。それを手放すと、自分が「手に入れた」孤独が奪われてしまうような気がするのだ。


 炎の周りでくるくる回るカップルたちを見ていると、拍手する人々の声が次第に耐え難くなってくる。静かにため息をついて空を見上げる。雲の向こうにある、もっと興味深い何かを探すかのように。


 遠くの超新星の回転するガス。青い輝きがまるで花火のようにきらめいている。この小さな世界の上に根を張り、彼が生まれる遥か前から燃え続け、彼が去った後もずっと輝き続ける。それを見て、義郎叔父の言葉を思い出す。あれはいつもそこにある。空で大きく、重要な存在であるにも関わらず、人々はそれに気づこうとしない。おかしいけど、本当だ。今ここで人々は踊り、笑い、百年前なら驚嘆されていたものを気にも留めていない。


 でもそれは何に対しても同じことではないだろうか?たとえ人であっても、今の生活と関係がなければ、気づくことなどないのだ。話して友達になってから初めて気づく、涼真のような存在もたくさんいる。今まで気にしなかった多くのもの…当たり前だと思っていたもの。


 自分にため息をつく。こんなことを考えているのはどうしてだろう。たぶん、一人でいるせいだろう。いつもこうだ。一人になると考え込んでしまう。何か気をそらすものを探してあたりを見回す。ひらひら揺れる露店の旗...特にふわふわしたドレスでくるくる回る人たち…写真を撮る少女…


 …


「写真を撮る少女?」


 暗いが、彼女は炎のオレンジ色に照らされている。見覚えのあるカメラ。見覚えのあるカーディガン。見覚えのある眼鏡。偶然だろうか、それが彼女だろうか?海での出来事と同じように、またしても距離から彼女を観察するだけだ。だが今回は同じ階段の上、祭りを見下ろしている彼女を見つけた。


 まだ考えがまとまらないうちに、彼はただ機会を逃したくないという思いで立ち上がる。もう少し身なりを整えたい…そう思うが、そんな余裕はない気がする。


 コンクリートの階段をよろめきながら彼女の元へ向かい、何か言葉を考えようとする。自己紹介するべきか、それともただ挨拶だけでいいのか?


「えっと…」三年生の隣に到着し、咳払いを試みる。「すみません…」


 なぜだかわからないが、彼女は誰かが話しかけたことに驚いたようだ。カメラを下ろし、目を大きく見開いて横を向く。何も言わない。顔に髪がかかっているのに反応すらしない。


 薫は何か言おうとしてつまずき、周りを見回しながら、自分が馬鹿みたいに見えていることを悟る。それでも彼の運命は、ただ彼女の眼鏡越しにその目を見つめる沈黙に付き合うことだ。


 彼女が視線をそらす前に、小さな燃えさしが赤く輝きながら秋の葉のようにゆらゆらと舞い降りてくる。そして、それは彼女の鼻先にそっと着地する。


 当然のことながら、その熱さに彼女は悲鳴を上げ、両手で鼻の小さな火傷を抑える。カメラを落としそうになるくらいの勢いだ。一秒後には自分の反応に気づき、ゆっくりと薫の目を再び見つめる。だが今度は顔を真っ赤にしている。


「ぷっ…」その場面があまりにも完璧で、滑稽なくらいだった。薫は口を覆いながらクスクスと笑い、彼女のますます困惑した表情を見つめる。それは、彼女もまた人間であることを思い出させてくれる…なぜ今まで怖がっていたのだろう?ただ聞きたかっただけなのに。「お名前は?」




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