ワぉタ村系のギルドにて
「えっ、やだー」
「近場なんでしょ、どうしよぉー」
「ニンゲン怖ーい」
「た、食べられちゃうぅー」
漏れ聞く内容ではニンゲン族主体の盗賊団が居座ってるらしい。
野太い声で姦しく談話しているのは、オークとオーガ混成パーティのオネェの裏声じゃなかった正真正銘のお姉様方の地声だ。発音が同じだからって決してちらっとでも頭に浮かべてはならない。続き聞く? 聞きたいの? 体にだよ。
「あらフランシーちゃん、お久ねぇー」
「ども」
説明が遅くなったけどここはサクラ家の寄親の領地にある冒険者ギルドのフロアー。今日はソロ活動でやってきた。
ソロじゃないときは寄親の侯爵家令息とその寄子の伯爵家令嬢との3人でパーティを組んでいる。他の2人とは『リリ』の名で歩調を合わせている。
まーソロと言っても前世で言うと幼稚園児の年頃に未だご存命の長命種なご先祖様に拉致されてギルド本部へ連れてかれて登録ののちご指導いただいた。奇しくも誕生日にだよ。いつになくフリフリに着飾った格好で照明を落としてケーキの蝋燭を息で吹き消して暗闇になったタイミングで・・・一口も食べてないのに。中の中位で「C」級冒険者になって二月後に帰ったら流石に残ってなかったさ。この後ご先祖様の出身氏族から『フランシーヌ』の名を贈られたんだよ。ちっきせぅー!
うん、私の容姿ってサクラ家の特徴であるピンク頭で目立つから近隣では活動してなかったのがあって幼馴染3人組が冒険者しようとなったとき、はたと悩んでギルドにサブ垢申請した。このギルド、ヲタ村を本部においたとこでメイン垢一つにサブ垢二つの計三つまで所持することが可能なのだ。
んでねメイン垢使うのにだよ、普段ここでサブ垢の『リリ』を変装無しで使ってたから逆に変装しなきゃいけなくなったんだよっ。だって「G」から始める2人と「B」じゃバランス悪くない?
『なんかアイデアない?』と家のメイド隊に尋ねたらあっさり『変装しましょう』に多数決が決まった。なんで?
前世で自力で衣装をこしらえる技能を持ったコスプレイヤーがいた。
カモ柄でフード付きのつなぎを身に着け頭部は薄いヘルメットにフェイスガードにゴーグルで目深にフードを被りシルエットが猫背のような背嚢を背負っている。
小柄な上に身をかがめた姿はゴブリン族に見える。