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先生を「お母さん」と呼んだ人の割合は全男子の74%です

「……で、俺はこれからどうすればいい?」


俺はぼんやりとした頭で、目の前の食事を眺めていた。

パンにスープ、何かよくわからないが鶏肉を焼いたようなもの。

異世界の食事も結構普通そうじゃないか・・・。


場所はアリシアの個室——いや、厳密には彼女が現在滞在している宿の一室だ。

どうやら彼女は、ある貴族の庇護の下に置かれており、比較的自由に動ける身らしい。

そこに"異端者"である俺が転がり込んだわけだ。


(……やっべ。冷静に考えて、超危ない状況じゃね?)


俺は異端者だ。街に出ればおたずね者。見つかればすぐに捕まるだろう。

かといって、このままずっとここにいるわけにもいかない。

しかも俺を匿ってるアリシアの立場も相当危険なはずだ。


「とりあえず、飯を食え。」


アリシアが短く言い放つ。


目の前の皿には、香ばしく焼かれたパンとスープと肉。

シンプルな料理だが、俺の胃袋はこれを求めていた。


「……いただきます。」


パンをちぎって口に運ぶ。

焼きたてではないが、ふんわりとした触感とほのかな甘みを感じる。


(……普通に美味い。)


しばらくまともな飯を食えてなかったせいか、じわじわと体に染み渡る。

スープや肉も思った以上に美味しい。

異世界の食べ物ってのはもっと味気ないものだと思っていたが、

なかなか現実世界の食事と変わらない食べ物だ。


・・・まあ冷静に考えたら現実世界で手料理らしいものなんてここ数年ほぼ食べていない。

いつもカップ麺を買い込むか、牛丼屋に行くかしかしていなかったからな。


そう思うと、人と一緒に食事をするなんていつぶりのことだろうか。

なんだか少しだけ嬉しくなった。



アリシアも黙々と食事をしていたが、

ふと俺の視線に気づいたのか、少し眉をひそめた。


「何だ?」


「いや……お前って、意外と普通に食事するんだな。」


「は?」


「ほら、お前ってこう……戦うために生まれてきた運命持ちみたいな感じじゃん?

 食事とか睡眠とか、そういうの全部後回しにしてそうな……」


「……バカか。」


アリシアは呆れたように息を吐いた。


「私は人間だ。食事もするし、寝るし、疲れもする。」


「運命持ちは特別な能力者なんだからそんなもの必要ないのかと思ってたよ。」


「そんなことができるなら、誰も苦労しない。」


彼女の声には、少しだけ苦笑が混じっていた。


(……意外と、こういう普通の会話もできるんだな。)


今までの彼女は、戦士としての冷徹な面しか見せていなかった。

でも、こうして向かい合って食事をしていると、どこか人間らしさを感じる。


「ところでハル・・・お前食べ方が汚いな・・・。パンくずをこぼしすぎだ。」

アリシアがさっきよりも更に眉をひそめて言う。


そう言われてよく見ると、テーブルと俺の服には夥しい量のパンくずが落ちていた。

人と食事をすることが久しぶりすぎたせいか・・・?

確かにあまり人目を気にした食べ方をしていなかったような気がして

突然恥ずかしくなる。


「う・・・うるせぇな!保護者までやってくれって頼んだ覚えはないぞ!!」

パンくずを慌てて払い落とす。


「ああ!床にパンくずが落ちたら掃除が面倒だろうが!」

アリシアが更に声を荒げる。

なんだ?この女意外と几帳面なのか?


だがため息をつきながら少しだけ笑っているアリシアを見ると

意外と人間味のあるやつなんだなとなぜか安心してしまった。


「それで、ハル。」


アリシアはスプーンを置き、じっと俺を見据えた。


「お前は、どうするつもりだ?」


「……どうって?」


「これからのことだ。私はお前に興味がある。

ただずっとここに置いておくわけにもいかない。」


(……そりゃ、そうだよな。)


アリシアは俺を預かるといってここに連れてきてくれたが、

このまま何もせずここにいたら、いつかは捕まることだろう。

いずれはまた逃げるか、別の場所に身を隠すか・・・。


(ノイア、俺の選択肢を教えてくれ。)


《現状、最適解は二つ》


ノイアの冷静な声が響く。


「今提案できるものはこちらです。」


①このままアリシアの下で情報を集め、異端者として生きる道を探す。

②街を離れ、誰の助けも借りずに独自の道を切り開く。


「どちらも現状の成功確率は15%程度です。」


(……どっちにしろ、ハードモードだな。)


(選択肢としては、それくらいか。)


「……それで、お前はどうする?」


(正直、決められねぇよ。)


この異世界のことも、俺が何者なのかも、まだ全然分かってない。

何をやっても死ぬ危険しかないじゃないか。

なのに、これからどうするかなんて、選べるわけが——


・・・いや。

よく考えたら現実世界の俺も死んだような存在だった。

今更死ぬも生きるも関係ないのかもしれないな。

俺は今まで生きてる実感なんてほぼなかった。

だが、この世界に来て、"今は死にたくない"と思った。

それだけでも、ここに来た意味があるのかもしれない。


「……まあ、少なくとも今すぐ死にたくはないな。」


「フッ、それは最低限の目標だな。」


アリシアが少しだけ笑った。


「よし、しばらくは私が面倒を見てやる。」


「……マジか?」


「お前はまだ何も知らなすぎる。

 そして、私もお前について知る必要がある。」


彼女は立ち上がり、剣を手に取った。


「今夜は休め。明日からは、少し鍛えてやる。」


「……え?」


「異端者である以上、自分を守る力は必要だろう?」


「いや、俺、戦士になるつもりとかは……」


「では今死ぬか?」


(ノイア、選択肢が現状ほぼないぞ?)


「そのようですね。」


俺は盛大にため息をついた。


「明日からはまずは基礎体力を付けていくぞ。

 素振りを1000本ほどから始めるか。」


「1000本!?それだけで俺の腕がもげるんじゃねぇか!?」

(ちょっ、ノイア、1000本の生存確率は!?)

「……5%です。」

(5%!?それもう明日死ぬ確率の話やんけ!!)


(まあけど・・・人に何か教わる機会・・・。悪くないのかもしれないな。)


こうして、俺の異世界生活は——

アリシアの“保護者付き”で始まることになった。


なんとか1週間続けて投稿することができました。

これからもせめて2日に1投稿はできるよう頑張ります。


タイトルの割合は適当なので気にしないでください。

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