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興味=殺意

「私は、お前に興味がある。」


俺を殴り飛ばしたくせにアリシアは淡々と話している。

異世界ってのはそんな簡単に人を殴っていい場所なのか。



「運命を持たぬ異端者……。

 お前が本当に"運命を持たない者"なのか、確かめさせてもらう。」


「……お断りします。」


「問答無用だ。」


その瞬間、離れた場所にいたはずのアリシアはすでに目の前にいた。



「がっ……!!?」


腹に強烈な衝撃が走る。

まるでバットでフルスイングされたかのような衝撃。

視界が揺れ、俺の体は弧を描くように吹っ飛んだ。


(は……!? 何が起こった!?)


床を滑りながら転がる。

身体の芯まで震えるほどの痛みが全身に広がる。


「くそっ……なんだ、今の……」


「まずは初撃。"未来視"を使うまでもなかったな。」


アリシアは剣の柄の部分で俺を殴ったらしい。


(ミライシ?なにか能力があるのか・・・そして使ってないのか。)


俺は無意識に、口元を引きつらせた。


(ってことはこの女の純粋な運動能力ってことか・・・速すぎるだろ!)


あの攻撃が"予知すらしていない"攻撃なら、予知を使われたらどうなる?

——絶対に勝てる気がしねぇ。


「……ノイア、俺の勝率。」


「0.8%です。」


「……0%ではないのか?」


「ギリギリ、です。」


「ギリギリの0.8って何だよ!!

勝てる可能性が1%あれば・・・とかいうても大体1%もないからな!!!」


(……マジでどうすんだよ、これ。)


アリシアが、一つも表情を変えることなく冷たい声で言った。


「今度は"未来視"を使わせてもらう。」


そして、微笑む。


「お前の未来——視させてもらうよ。」


俺の背筋が、ゾワリと総毛立った。

これは明らかに未来の終焉が見えている顔だ。


(こいつ、本当に俺を殺すつもりだ……!!)


アリシアが剣を振りかぶった瞬間。


「ハル、回避を!」


ノイアの指示通り、俺は転がるようにしてアリシアの剣を避ける。

だが、相手は未来視持ち。俺がどう避けるかなんて全部見えてるはずだ。


「無駄だ。」


明らかにアリシアはゆっくりと俺のほうを向いて剣を振った。


「がっ……!!」


再び避けようとしたものの背中に鋭い痛みが走る。

ギリギリでかわしたつもりだったが、浅く斬られたらしい。


この女・・・俺をいたぶってやがる。


逃げながら少しずつ切り刻まれ、流石に俺も諦めムードになってきた。


「……ノイア、もうダメかもしれない。」


「まだ策があります。」


「え!?ここから入れる保険があるんですか?!」


「保険・・・?」


「ごめんこんな時に言う冗談じゃないや!!」


「"殺意のない攻撃" なら、未来視に映らない可能性があります。」


「殺意のない攻撃・・・?マジで言ってんのか?」


「成功確率、58%。」


(さっきの0.8%よりマシだけど、58%って結構ギャンブルじゃねぇか!?)


とはいえ、このまま戦っても100%負ける。


(……やるしかねぇ!!)


俺は剣を振るうアリシアの攻撃をギリギリで避けながら、酒場の奥へと追い込まれるフリをした。

そこで、木製の大樽が視界に入る。


(……よし、あの樽だ!)


「ノイア、誘導するぞ!」


俺はわざと足をもつれさせ、"酒樽の前"に飛び込む。

アリシアの視線が俺の動きを捉え、鋭く剣を振りかぶった。


「終わりだ。」


その瞬間——

(……今だ!!)

ギリギリの隙間を縫って斬撃を避ける。

避けられなかったら間違いなく俺の頭は綺麗に二つに分かれていただろう。


だが彼女の剣は俺の後ろの酒樽を両断した。


一瞬すべての時が止まったかと思ったが、

重力に耐え切れない液体がとてつもない勢いで流れる。


大量の赤い酒がアリシアの頭に降り注いだ。


「……ッ!?」


金色の髪が、紅に染まる。

この匂い・・・異世界でもワインって飲むんだな。


「お・・・思ったよりたくさん入ってたな・・・。」

俺が思う以上にアリシアはワインまみれになってしまった。


アリシアの瞳が、大きく見開かれた。


「……何故だ。何故お前の攻撃が視えなかった?」


その瞬間、戦いは止まった——。


(……マジかよ。ワインぶっかけただけなのに、こいつがこんな顔するのか?)


俺は、わずかに息を飲んだ。


アリシアが、未来視に頼る者なら——

「未来が視えなかった」という事実こそ、

彼女にとって最大の"異常"だったのだろう。


「ノイア……これは?」


「成功確率、100%。作戦完了です。」


(——た・・・助かった・・・。)


アリシアは濡れた前髪をかき上げ、紅いワインを滴らせながら俺を見た。


「……ハル、もう一度聞くぞ?」


「なんだよ。ワインのおかわりか?」


「……お前、本当に"運命を持たぬ者"なのか?」


俺は、答えられなかった。


(そんなの、俺が知りたいっての・・・。)


戦いは、奇妙な形で終わりを迎えた——。


読んでいただきましてありがとうございます。

初めてのなろうデビューですので右も左もわかりませんが

とにかく楽しんでいただけるよう書いています。


身近な雰囲気の主人公がこの異世界でどのように変わっていくのか!?

次回から更に話は加速していきます!

「友情・努力・勝利」なストーリーをお楽しみください。

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