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孤独を走る

「うおおおお!!!」

迷う暇もなく窓に突っ込む。


巨大なステンドグラスが砕け散り、冷たい夜風が肌を刺す。

視界がブレる。耳鳴りがする。

気のせいか周りがスローモーションに見えるのは先ほどの最適化ではなく

ただの走馬灯の前兆なのだろうか・・・。


「落下時の衝撃に備えてください」

ノイアの声が響くが、もう遅い。


運よく木々にぶつかりながら落下したので

多少はクッションのような役割を果たしたのか、

直接の落下よりはスピードが落ちたのが幸いか。


地面に転がりながら着地。痛みで顔が歪む。

「……クソッ、骨折れたかと思った……」


「木々の箇所を狙って落下したので衝撃は最小限に抑えましたが、痛みは軽減できません」


「でしょうねぇ!ありがとね!!」


冗談を言ってる暇はない。

上を見上げれば、神殿の騎士たちが窓からこちらを覗き込んでいる。


「異端者が逃げたぞ!!追え!!」

「城門を封鎖しろ!!」


鐘の音が鳴り響く。


(マジかよ……!街ごと封鎖するつもりか!?)


ノイアの声が静かに響く。

「マスター、逃走成功確率を向上させるため、最適ルートを提案します。」


「……任せた!」


小さな森を一心不乱に走り続ける。

ノイアが案内してくれるものの、痛みに耐えながら移動するのは骨が折れる。

森を抜けるだけでもかなりの時間がかかってしまった。


なんとか街へ出て路地裏を駆ける。

辺りには街の住人たちが驚いた顔でこちらを見ている。


「待て!お前!」

通りかかった兵士が俺を捕まえようと手を伸ばす。


(まずい……!逃げ切れるか!?)


ノイアが淡々と答える。

「逃走成功率、41%。ルートを最適化します。」


「おい、41%って微妙すぎんか!?」

「現状、最も成功確率の高いルートです」


(41%は正直低いのよな・・・。)


選ぶ間もなくノイアの指示通りに細い路地を抜ける。

その瞬間、俺の目にあるものが飛び込んできた。

壁にはすでに異端者としての俺の顔が描かれた手配書が貼られていた。


「……手配書!?」


壁には、まるで"処刑対象"のように赤く囲まれた手配書が貼られていた。

俺の顔写真とともに、『異端者』という禍々しい烙印が押されている。

しかも、下には“見つけた者には報奨金1000ゴールド”と書かれていた。


いったいどれだけの手際の良さなのか。これは転生者が異端者だった場合、

逃走することも視野に入れてあるということなのかもしれない。


(けど1000ゴールドって安いの?高いの!?)


などとどうでもいいようなことを考えてしまう。



「異端者だ!!!」


周りの騎士たちが次々に声を挙げる。


周囲の人間たちが一斉にこちらを見てくる。


(終わった……!?)


「くそっ、もう逃げ場が……!」

兵士がすぐ後ろまで迫っている。

「逃走成功率、23%」


(確率下がってるじゃねぇか!!23%ってほぼ諦めるレベルだよ!)


「ノイア!他にルートは!?」


「……一つ、可能性があります。」


「どこだ!?」


「前方の酒場。裏口の非常通路を利用できれば、追跡を振り切れる確率71%。」


「まじか!?71%なら今までよりはましだな!ただ継続率で考えるとちょっとキツい!」


「継続率?」


「ごめんこっちの話!!」


「??・・・確率は71%まであがります。ただし・・・」


「ただし?」


「このルートを選択すると、あなたは“運命持ち”と最初の接触をすることになります。」


「……運命持ち?さっきの神託に選ばれた人間か。」


俺の脳裏に、一つの疑問が浮かぶ。


そもそも“運命を持つ者”とは、一体何なのか。


この世界での運命とは一体どういうことなんだ?

ただのスキルやチートというものは違う概念が存在するのだろうか。


酒場が近づく。

兵士たちも後ろから追ってきている。


——運命持ちは俺の味方なのか?それともやはり異端者を排除する敵になるのか?


ただ俺は“運命持ち”なんて奴らを信じちゃいない。

そもそも、こっちは異端者認定されたばかりなんだ。


現実世界でもいないも同然な存在の俺に、

まともに接する人間がいるはずねぇだろ……。


唯一信頼できるのは、

パソコンから俺の脳内にまでついてきてくれたAIのノイアだけだ。

こいつが言うんだから俺は信頼するしかない。


・・・しかし、もしこのノイアの存在も罠だったら・・・?


こんな訳のわからないことばかりが頭をぐるぐる回りやがる・・・

いっそすべて夢だったらいいのに・・・


そんなことを考えていると酒場の扉の前までたどり着いた。


(……クソッ、考えてる暇はねぇ!!)


「……行くぞ!!!」

俺は酒場へと飛び込んだ——。



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