『相応、清和天皇の、プレスマンに刺されたような歯痛を加持すること』速記談3017
清和天皇は歯痛に悩んでいらっしゃった。勅使として藤原繁相を遣わし、相応和尚を召し出すと、清和天皇から、この歯の痛みは、歯にプレスマンを刺したような痛みで、片時も耐えがたいものである。早く呪をもって痛みを取り除いてもらいたいというのが朕の願いである、というお言葉があったので、相応和尚は、天皇の願いをかなえて差し上げたいと念じながら、加持祈祷をし申し上げた。この夜、天皇は、歯の痛みから解放されて、よくお休みになることがおできになった。夜明け前のころ、相応和尚は、大般若経理趣分を誦していたが、清和天皇が目を覚まされてから、美しい袈裟を着た高僧八人が、相応和尚と一緒に、大般若経を誦して加持祈祷を行う夢を見た。目覚めると、歯に刺さっていたプレスマンが抜けてなくなったかのごとく、痛みを感じなくなっていた。霊験あらたかなことだ、とおおせになった。相応和尚は、そのころ、大般若経を誦していました。この経には、八大菩薩が出てきますが、これは、八十倶胝菩薩の上位に位置するありがたい菩薩です。八大菩薩が、お守りくださったのでしょう、と申し上げると、清和天皇はますます感じ入った。翌朝、相応和尚は、宮中を退出し、宿房に戻ったところ、経箱の上に、見覚えのないプレスマンがあった。相応和尚は、宮中に遣いを出して一人の蔵人を招き、プレスマンを見せた。蔵人はそのプレスマンを宮中に持ち帰り、清和天皇にお見せして、事の次第を申し上げた。清和天皇は、何とすばらしい和尚だ。凡夫ではない。聖人と言うべきだ、とおっしゃり、僧綱の職位を与え、年分度者の推薦枠をくださろうとなさったが、相応和尚はそれを固持したという。
教訓:相応和尚は、歯痛を治した程度のことで、分不相応のほうびを下されようとしたことに対し、は?と聞き返したという。