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紹介に注意?

○大きな牛柄のバケツ(ウシノ)がいる部屋 壁は何かの機器が全て埋めている。


ウシノの顔の側には一点と一画。ウシノの上ではタコミとイカスが黒い粉をウシノに注いでいる。


佳苗(でかっ!?)


青香が声をかけ、全員が佳苗の前に集まってくる。右から耕造、一点とタコミ、一画とイカスが並ぶ。一点はさわやかに一画は無愛想に目を反らす。青香が佳苗に手を向け紹介する。


青香「こちらは木月佳苗さん。あんたらちゃんと挨拶し」


一点「佳苗ちゃんって言うんだね。よろしく!」


一画「……どーも」


無愛想な一画にまたも拳骨を落とした青香は、頭を押さえる一画を無視して話を進める。


青香「あたしゃの名前はさっき教えたからいいね。ちなみにこの店の店主はあたしゃだよ。ま、一番エライ人ってやつかな」


佳苗(うん。それは今までの言動でわかる)


青香「この[煤本堂]ってのは、古くからあるお店でね、特に習字道具の墨を扱うお店なんだ」


片隅に置かれた墨を手に取り見せる青香。


青香「この墨は特別製でね、我が家を古くから守ってくださってるつくも神、ススコさまから作っとるんだ」


部屋の中央にある掛け軸を指差す青香。掛け軸には墨で小さな女の子が描かれている。


佳苗「つくも神って、あの?」


青香「そうさね、ススコさまは長き年月でススに宿った神の力が集まった存在って感じかね。で、ススコさまから作ったこの墨は滑らかな書き心地で評判なのさ。でも、それだけじゃあない」


佳苗「?」


青香が耕造に近づき紹介をする。


青香「まず先に紹介しとこうかね。このじぃさんは煤本耕造。あたしゃの夫で、この文具屋[煤本堂]の発明家さ」


佳苗「発明家?」


耕造「そ、わしゃ、創ることが大好きでな。このウシノもタコミもイカスも、ここにある何もかんもが全部わしゃの発明もんじゃ」


大きく手を広げる耕造。


佳苗(バケツが発明品……?)


耕造「あ、今バケツが発明品と思ったじゃろ」


佳苗「……えへ」


佳苗(バレた!)


耕造「はは! ま、この形じゃ仕方ないわな。こやつらはな、感受形成体なんじゃ」


佳苗「感受形成体?」


首を傾げる佳苗。


耕造「そう、さっき我が家の墨は特別製だと言ったじゃろ? この墨にはススコさまの力が宿っておる。つまり細かい粒子が微量な神の力が宿しており、形を成しているということなんじゃ」


耕造はウシノに近づき、足元に置いてある小さなバケツを手に取る。


耕造「それに目を付けたわしゃは、この墨の特性を受け止める機能を持つ器を開発した。形がバケツなのはかわいいからじゃ。で、こいつに……」


耕造が小さなバケツにススコの墨で[ネコ]と書き、バケツの中に墨を入れる。バケツに猫耳と顔がつき動き出す。


佳苗「!?」


耕造「このように全体に墨の力を伝達し、書いた形を成すんじゃ。ただし!」


耕造が猫型のバケツから墨を取り出す。猫型のバケツがただのバケツに戻っていく。


佳苗「あ……」


耕造「このように墨を取ると元に戻ってしまうんじゃ。入れっぱじゃと墨が消費されるまで動き続ける。わしゃたちはこれを墨電池と呼んどる」


耕造がウシノを指差す。


耕造「で、このデカイバケツがウシノと言って、ススコさまの墨を作っとる子じゃ」


ウシノ『よろしくネー。佳苗サーン』


耕造「作り方は簡単じゃ。ススコさまのススを境貝で収集、ススをこのウシノに入れると、」


ウシノがもぐもぐと口を動かし、プッと吐き出す。


耕造「こうやってウシノが反芻し、墨を作ってくれる」


佳苗(吐き出すんだ……)


耕造「うむぅ。どうもこの最後出す時をもっと美しくしたいもんじゃが……」


佳苗(あ、やっぱ気になるんだ)


ウシノの前でウンウンと唸り出す耕造。


青香「やれやれ、あーなってしまうと長いから、耕造さんは置いとこうか。ここまでで質問あるかい?」


佳苗「あの、さっき境貝って……」


青香「さっきまでいた誰もいない世界のことさね。ここ現貝とあの世の冥貝の間にあるんだ。ススコさまは普段ここ[煤本堂]にいるのだけど、たまに境貝にイタズラ書きしに行くのさ」


佳苗「イタズラ書き……?」


青香「イタズラ好きのお茶目な方でな。そのイタズラ書きは上質なススで書いとる。それをあの子らが集めに行くと。さ、二人とも自己紹介をし」


一点と一画を指差す青香。手を振る一点が手に持ったタコミを見せながら紹介する。


一点「俺は煤本一点。で、こっちが相方のタコミちゃん。ススの収集ではハタキでの攻撃担当」


タコミ「よろしくネ」


佳苗「はい!」


先程の戦いを思い出す佳苗。


佳苗(確かにハタキ使ってた)


一点が一画を小突くが自己紹介しない。


一点「ほれ、一画!」


一画「……」


一点に小突かれるが、話さない一画に代わりイカスが紹介する。


イカス『ミーはイカス。こっちのブアイソが一画ネ。ミーたちは防御担当。イチゴウ、ニゴウ、サンゴウ共々、よろしくデース』


佳苗「はい!」


イカスが佳苗の近くに飛んできて取っ手を差し出す。取っ手を握る佳苗。


佳苗(握手、かな?)


和やかな空気の中、突然大きな声を上げる一画。


一画「そんなことより! 聞かなきゃいかんことがあるだろ!」


青香「そんなことよりってことがあるかい!!」


三度目の拳骨が一画に落ちる。

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