八話. 黒糖好きになっちゃうよ
教室に入ったら彼の机に物が置いてあった。
彼はいつも来るのが遅いからクラスメイトの誰かが置いてるんだろう。
いつももっと時間ギリギリに登校してるし。
「美樹。おはよう」
「おはよう、京子」
「京子知ってる? 金子さんのおばあちゃんが行方不明なんだって」
「知ってる。ママから聞いた」
「なぁんだ。あ、そうだ。芝田くんが京子のこと呼んでた」
「えっ」
こんな早い時間に登校してたんだ、珍しい。
というか、なんで私のことを……
私と彼の接点は出席番号が近いのと、道がわからないからとなかば強引に一緒に帰るぐらいだ。
妄想ではその限りではないけど、、、
まさか私に告白するため?だからこんなに早く学校に来たの?
やっぱり私のことが好きなの?
前考えてた妄想が本当だったの?
「嘘じゃないよね」
「もちろん。愛しの彼に会ってきちゃいなよ、ファイト」
「えぇぇ、どっどどどどどこに行けばいいのかなぁ」
「フフ、動揺しすぎだって。もっとできる女を演じないと。場所は体育館裏だって」
「体育館裏かぁ」
まるで少女漫画みたいだ。まだ実感がわかない。
体育館裏は塀と壁に挟まれていて外からは見えず、昔は先輩が後輩とじゃれ合うときに使われていたらしい。
周辺は田畑で周辺住民も気づかない。田舎な群馬ならではの超危険地帯だ。
ただ、今はもうイジメでそんなとこは使われていない。もっと陰湿なものになっていったからだ。
「よし。気合い入れないと」
「頑張ってね」
「うん!」
*
体育館裏には彼がいた。なぜかシャベルが置いてあるけど昔の名残かなぁ。
「お、おはようございます」
「おはよう。京子さん」
名前を呼んでくれた! しかも下の名前。しあわせぇ
「今日は突然ゴメンね。 体育館裏なんかに呼び出しちゃって」
「イエ、ゼンゼンダイジョウブデス」
「ありがとう。そう言ってもらって良かったよ」
笑顔が眩しいぃ。というか、いつもと違う感じがする。
「実はさ、言いたいことがあったんだ」
「はい」
「俺さ」
近寄ってくる彼。これってやっぱり
「君のことが」
両手を広げて
「好きだったんだ」
抱きしめてくれた
「君のことを誤解していたよ。昨日の夜、君のことが忘れられなかった。どうすれば君と会って俺の思いを伝えられるかずっと考えてたんだ」
目と目があう。
彼の唇が近づいてくる。
上がる鼓動。火照る顔。
目をつぶってじっと待つ。
唇にザラザラした感触がした。
イイハナシダナー